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大学・研究所にある論文を検索できる 「Cross-Sectional Examination of Homocysteine Levels with Sarcopenia and Its Components in Memory Clinic Outpatients」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Cross-Sectional Examination of Homocysteine Levels with Sarcopenia and Its Components in Memory Clinic Outpatients

山田, 洋介 名古屋大学

2022.07.01

概要

【緒言】
血清ホモシステイン(Hcy)濃度は加齢とともに増加する。Hcy濃度の上昇は動脈硬化を促進し、心血管イベントを増加させる。また、Hcy濃度の上昇は認知症の危険因子としても知られている。Hcy高値がサルコペニアや筋力・筋量の低下と関連するとの報告もあるが、動物実験や健康な地域住民を対象としたものに限られる。Hcyはサルコペニアと認知症の両方に関連している可能性があるが、認知症を含む集団で、認知機能を調整したうえで、Hcyとサルコペニアの関連を調べた報告は過去にない。そこで今回、もの忘れ外来の通院患者を対象に、血清Hcy濃度とサルコペニア及びその構成要素の関連を検討した。

【対象及び方法】
2010年10月から2017年7月までに国立長寿医療研究センターのもの忘れセンターを受診した外来患者を対象とした。登録基準は1)年齢が65歳以上、2)血清Hcy濃度が測定されている、3)握力と骨格筋量指数(Skeletal Muscle mass Index;SMI)を測定している、4)認知症、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment; MCI)、認知機能正常(Normal Cognition; NC)のいずれかに臨床的に診断されていること、とした。除外基準は、脳梗塞の既往とした。サルコペニアの定義はEuropeanWorkingGrouponSarcopeniainOlderPeople2(EWGSOP2)の定義に従った。

登録時に年齢、性別、教育歴、Body Mass Index(BMI)、Barthel Index、SMI、握力、Mini Mental State Examination (MMSE)、GDS-15、臨床診断(認知症、MCI、NC)、血清Hcy濃度を調査した。参加者の背景因子を、サルコペニアの有無、握力レベル、SMIレベルに応じて単変量解析にて比較した。単変量解析で有意であった項目を共変数とし、サルコペニアの有無を目的変数としてロジスティック分析を行った。SMIおよび握力についても同様の解析を行った。さらに、握力(連続変数)を目的変数とした線形重回帰分析を男女別に行った。認知機能については、MMSEと臨床診断(認知症、MCI、NC)で調整したモデルをそれぞれ作成した。血清Hcy濃度は正規分布に近づけるために対数変換して利用した。認知機能障害の影響を十分に調整できていない可能性を考慮し、感度分析として認知症の人を除いた集団で同様の分析を行った。

【結果】
1965人が登録された。参加者の背景をTable1に示す。参加者の平均年齢は77.5±6.2歳で、666名(37.5%)が男性、389名(21.9%)がサルコペニアだった。非サルコペニア群と比較して、サルコペニア群では有意に高齢で、教育年数が短く、BMIが低く、Barthel Indexが低く、SMIと握力が低く、MMSEが悪く、GDS-15スコアが高く、血清Hcy値が高かった。また、サルコペニア群は非サルコペニア群に比べて、認知症の割合が有意に高かった(いずれもP<0.001)。サルコペニアの構成要素である握力とSMIのレベルに応じて参加者を2群に分けて比較した場合も殆どの傾向は同様であった。しかしSMIのレベルに応じて比較した場合のみ、血清Hcy濃度に有意差は見られなかった。

Table2は、サルコペニア、低SMIおよび低握力を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果である。単変量解析で有意差のあった項目を共変数とした。低握力は血清Hcy濃度と有意に関連していた(OR:3.078、P=0.002)が、サルコペニア及び低SMIとHcyに有意な関連は認めなかった。次に、握力を連続変数として性別ごとに線形回帰分析を行った(Table3)。認知機能をMMSEで調整したモデル1と臨床診断(認知症、MCI、NC)で調整したモデル2を作成した。その結果、両者のモデルにおいて男女ともに血清Hcy濃度が高いほど握力が低いという結果となった(モデル1:β=−2.946、P<0.001、モデル2:β=−3.218、P<0.001)。また、認知症を除外した感度分析(Table4)でも、低握力のみが血清Hcy濃度と関連していた(OR:4.357、P=0.030)。

【考察】
本研究は血清Hcy濃度と握力に負の関係があることを示した。一方でサルコペニア、SMIとは関連は認めなかった。血清Hcy濃度は認知機能や認知症の臨床診断で調整した後も、男女ともに握力と有意に関連していた。

高齢者では握力と認知機能は強く関連する。また、認知症患者では握力が低く、血清Hcy濃度も高い傾向がある。しかし、過去の研究では認知機能による交絡が考慮されていなかった。本研究では参加者は詳細に認知機能が評価された上で調整されており、血清Hcy濃度が握力と関連することをより強固に示すことができた。50歳以上の健康な成人を対象とした過去の報告では血清Hcy濃度は女性においてのみ握力と関係していた。本研究の対象者は先行研究と比べて高齢かつ虚弱で、血清Hcy濃度も先行研究よりも高い集団であった。このようなリスクの高い集団では、Hcy、認知機能障害、握力が互いに強く影響しあっている可能性があり、本研究では男性でも関連を認めた可能性がある。

Hcyは炎症性サイトカインを誘導し筋組織の修復を阻害し、筋量低下の原因になると考えられている。末梢血管疾患患者423人を対象とした先行研究では、Hcyは腓腹筋量と関連していた。しかし、地域在住高齢者1301人を対象としたオランダの報告では、血清Hcy濃度は筋肉量と関連していなかった。本研究結果でもHcyと骨格筋量に関連は認めなかった。この結果は、血清Hcy濃度がSMIと関連するのは、血管疾患患者など特定の条件を持つ集団であって、一般の高齢者集団ではないことを示唆しているのかもしれない。

Hcyと筋力の関連のメカニズムはまだ完全には解明されていない。先行研究ではHcyはミトコンドリアの機能を低下させ、筋収縮力を低下させることが示唆されている。ミトコンドリア機能低下がHcyと筋力の関連のメカニズムの一つである可能性がある。別の研究では、Hcy濃度の高値が、脳室周囲の白質損傷を引き起こすと報告されている。また、白質病変の増加は、筋力低下と関連することも報告されている。したがって、脳内の白質病変は、筋力低下と高Hcyをつなぐミトコンドリアとは別の経路として関与している可能性がある。

本研究の限界は、認知機能は身体機能に大きな影響を与えるため、MMSEや臨床診断による調整では十分に認知機能の影響を排除できていない可能性を考えた。しかし本研究では感度分析により認知症を除外した集団でも同様の結果を示すことができたため、この疑念の大部分は払拭している。その他の限界としては、本研究は横断研究であるため因果関係を示すことができないこと、また日本で唯一の国立の認知症センターで実施されたため、結果を直ちに一般化できない可能性があることが挙げられる。

【結語】
本研究は、認知機能による調整後も外来患者の血清Hcy濃度と握力との間に有意な関連があることを示した。この結果は男女ともに同様であった。本研究結果は、Hcyと握力との間に負の関連があるという仮説をより強固にした。

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