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Immunohistological evaluation of mismatch repair deficiency in pancreatic ductal adenocarcinoma treated with surgical resection

大塚 裕之 広島大学

2021.03.23

概要













Immunohistological evaluation of mismatch repair
deficiency in pancreatic ductal adenocarcinoma
treated with surgical resection

主指導教員:高橋

信也教授

(医系科学研究科

外科学)

副指導教員:檜山

英三教授

(自然科学研究支援開発センター

生命科学)

副指導教員:上村 健一郎准教授
(医系科学研究科 外科学)

大塚

裕之

(医歯薬保健学研究科

医歯薬学専攻)

概要
背景:膵癌切除患者のミスマッチ修復機能欠損(deficient mismatch repair:
dMMR)の頻度と予後は未だ明らかとなっていない。本研究は、外科的切除で
治療された日本人膵癌患者における dMMR の頻度とその臨床病理学的関連性
を評価するために計画された。
方法:広島大学で外科的切除を受けた合計 400 人の連続した膵癌患者を対象と
した。 MLH1、MSH2、MSH6、および PMS2 を含む 4 つの抗体による免疫組
織化学的染色を使用して、膵癌検体中の dMMR の存在を判定した。これらの患
者の頻度と臨床転帰を評価するために統計分析を適用した。
結果:400 人のうち、5 人(1.3%)に dMMR を認めた(MLH1 欠損 2 人、PMS2
欠損 2 人、MSH2 欠損 1 人)。 dMMR の患者とミスマッチ修復が保たれている
(proficient mismatch repair: pMMR)患者の間で組織学的に pMMR で有意に
分化度が高い傾向にあった(P = .03)。単変量生存解析では、無再発生存期間(P
= .268)や全生存期間(P = .173)において dMMR と pMMR の間に有意差は
認めなかった。
結語:日本人膵癌切除例における dMMR の頻度は低く、白人と比較した場合、
人種特有の違いは見られなかった。本研究では、dMMR と pMMR の患者間で
無再発生存率と全生存率に有意差は認めなかった。
1.背景
膵癌患者の予後は厳しく、外科的切除が唯一の根治的治療法であり続けている。
進行した膵癌でも、FOLFIRINOX などの新しいレジメンで治療された後の外科的
切除は予後を改善する可能性がある。しかし、根治切除後でも 5 年生存率は 6
~24%にすぎない。切除可能な膵癌が予後不良な理由の 1 つは、術後早期再発
の頻度が高いことである。より効果的な術前化学療法および術後補助化学療法
を開発するための努力にもかかわらず、それらの予後への影響は依然として不
十分であり、新しい効果的な治療が必要である。
近年、免疫チェックポイント阻害剤の有効性が、ミスマッチ修復 機能欠損
(deficient mismatch repair: dMMR)したいくつかの進行性固形腫瘍で証明さ
れた。転移性および局所進行性膵癌の dMMR 患者はまれであると思われるが、い
くつかの研究では、切除不能膵癌に対する免疫チェックポイント阻害剤の有用
性が高いことを示唆している。しかし、外科的切除で治療された多数の日本人
患者を含む膵癌における dMMR の頻度および予後に関するエビデンスは不足して
いる。さらに、日本人と白人の人種差が膵癌の dMMR の割合に影響を与えるかど
うかは不明である。
本研究は外科的切除で治療された日本人膵癌患者における dMMR の頻度と予後を

検索することを目的とした。
2.方法
2.1 研究デザイン
本研究は、広島大学病院の外科で 2002 年 5 月から 2019 年 3 月まで外科的切除
を受けた膵癌患者の施設データベースに基づく後ろ向きコホート研究である。
すべての患者は R0 または R1 切除をされ、病理学的診断で膵癌と診断した。腫
瘍の病期は、UICC 分類第 8 版に従って評価された。切除可能性分類は、NCCN ガ
イドライン 2019 第 3 版に従って評価された。膵癌および膵管内乳頭粘液性腫瘍
(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)併存癌の患者は含めたが、
IPMN 由来浸潤癌は除外した。我々はヘルシンキ宣言の倫理原則に従って研究を
実施し、広島大学の倫理委員会から承認を得た(E-1804)。
2.2 免疫組織化学的染色
膵癌の免疫組織化学的染色は streptavidin-biotin-peroxidase テクニックと
DakoEnVision FLEX システム(Dako、Carpinteria、CA、USA)を用いて行った。
dMMR 免疫組織化学用の抗体には、MutL Protein Homolog 1(MLH1)
(Dako、clone
ES05)、MutS Protein Homolog 2(MSH2)
(Dako、clone FE11)、MutS Protein Homolog
6(MSH6)
(Dako、clone EP49)、および Postmeiotic Segregation Increased 2 (PMS2)
(Dako, clone EP51)が用いられた。簡単に説明すると、ホルマリン固定された
パラフィン包埋組織ブロックから切り出された厚さ 4μm の組織切片を脱パラフ
ィンし再水和した。オートクレーブ(121℃、Tris / EDTA バッファーpH9.0 で
15 分)による抗原賦活化処理後、ペルオキシダーゼブロッキング試薬で切片を
インキュベーションすることによりタンパク質をブロックした。次に、切片を
各 MMR タンパク質(一次抗体)とともに室温で 30 分間インキュベーションした。
次に、切片をポリマー試薬とともに室温で 20 分間インキュベーションした。
3,3'-diaminobenzidine(DAB)で染色を視覚化し、マイヤーのヘマトキシリン
溶液で切片を対比染色した。そして切片を脱水して包埋した。同じサンプルで
一次抗体を省略して、ネガティブコントロールを設定した。臨床転帰を知らさ
れていない 2 人の独立した観察者により、dMMR 発現を免疫組織化学的に評価し
た。 dMMR 発現の診断に関しては、内部陽性対照として膵臓腺房細胞を使用した。
染色強度は以下のようにスコア化された:0(染色なし)、グレード 1(弱い染色)、
グレード 2(中程度の染色)、グレード 3(強い染色)。腫瘍細胞の 50%以上でグ
レード 2 以上の染色が観察された場合、サンプルは陽性であると見なした。 4
種類すべてのタンパク質を発現している患者のサンプルは pMMR と診断し、4 つ
のタンパク質のいずれかで発現を欠いている患者は dMMR であると診断した。

2.3 統計分析
すべての患者は、
3〜6 か月ごとに血液検査と CT によるフォローアップを受けた。
治療開始からの再発状況と生存期間を記録し、死亡した患者は死因を記録した。
Kaplan-Meier 法に基づいて生存曲線を作成し、単変量 log-rank 分析により無再
発生存期間(recurrence free survival: RFS)と全生存期間(overall survival:
OS)を比較した。RFS の障害イベントを疾患の再発と定義し、画像所見に基づい
て診断しました。OS の障害イベントは、何らかの原因による死亡として定義し
た。膵癌の治療開始日から各イベントの発生日または最後のフォローアップ
(2019 年 12 月 1 日)までの生存期間を測定した。術後 90 日以内に死亡した患
者は生存分析から除外した。 P <.05 を統計的に有意であると見なした。 JMP
統計ソフトウェアバージョン 14(SAS Institute)を使用してすべての統計分析
を実行した。
3 結果
3.1 患者背景および病理学的要因
この研究では、外科的切除を受けた連続した 400 人の膵癌患者を対象とした。表
1 に、検討された患者背景と臨床病理学的要因をまとめた。 5 人(1.3%)の dMMR
膵癌患者を特定し(表 2)、そのうちの 1 人はリンチ症候群であった。 MLH1 欠
損 2 人、PMS2 欠損 2 人、MSH2 欠損 1 人を特定した(図 1)。 NCCN ガイドライン
2019 第 3 版の切除可能性分類によると、3 人の患者が Resectable 膵癌、1 人は
動脈接触を伴う境界切除可能(BR-A)膵癌、1 人は局所進行切除不能膵癌(UR-LA)
であった。5 例のいずれも IPMN に関連していなかった。
3.2 dMMR と pMMR の関係性
dMMR および pMMR 膵癌患者による臨床病理学的要因を表 1 にまとめた。 dMMR と
比較し組織学的に pMMR で有意に分化度が高い傾向にあった(P = .03)。
3.3 dMMR 膵癌の生存分析
MMR を評価した 400 人の患者のうち、術後合併症のために術後 90 日以内に死亡
した 9 人を除外した。残りの 391 人の RFS 中央値は 33.1 か月(1.2〜139.1 か月)
であり、OS 中央値は 46.1 か月(3.1〜140.7 か月)であった。打ち切られた患
者を除いた追跡期間の中央値は 39.0 か月(8.9〜140.7 か月)であった。RFS の
比較では、dMMR 膵癌と pMMR 膵癌患者間に有意差は認めなかった(P = .268)
(図
2A)。dMMR 患者の生存期間中央値(MST)と 5 年 RFS は、それぞれ未到達と 60.0%
であったが、pMMR 患者はそれぞれ 32.9 か月と 41.3%であった。OS においても、

dMMR 膵癌と pMMR 膵癌患者間に有意差は認めなかった(P = .173)
(図 2B)。 dMMR
患者の OS の MST および 5 年生存率はそれぞれ未到達と 40%であったが、pMMR
患者はそれぞれ 44.9 か月および 40.7%であった。
4 考察
本研究は外科的切除で治療された日本人膵癌患者における dMMR の頻度と予後を
検索することを目的とした。我々の結果は、免疫組織化学的染色によって dMMR
を有する患者は 5 人(1.3%)のみであることを証明した。また、dMMR の患者の
予後は、pMMR の患者よりも RFS と OS が比較的良好であったにもかかわらず、有
意差がなかったことを示した。
免疫チェックポイント阻害剤は、さまざまな固形がんの dMMR 患者に良好な結果
をもたらした。Le DT らは、12 種類の dMMR がん患者における PD-1 阻害剤の有
効性を報告した。彼らの研究では、画像上 PR と CR がそれぞれ 53%と 21%であ
ったと報告した。いくつかの種類の癌に対する PD-1 阻害剤の有効性を考えると、
膵癌へのその適用への関心が高まっており、研究が進んでいる。しかし、検出
方法や患者数は異なるものの膵癌における dMMR の割合は 0.3%~22%であった。
さらに、外科的切除をされた膵癌患者(特に日本人患者)における dMMR の存在
を評価した報告はほとんどない。外科的切除で治療された膵癌患者の大多数は
治癒的切除後に癌の再発に苦しんでおり、PD-1 阻害剤をテストすることは重要
である。本研究は、外科的切除を受けた日本人膵癌患者 400 人の dMMR に関する
貴重なデータを提供する。
我々の結果は、日本人の膵癌患者の dMMR の頻度が 1.3%であり、白人の膵癌患
者で報告された頻度と類似していることを明らかにした。一方、過去の 2 つの
報告では、日本人の膵癌患者における dMMR の頻度が 15.5%と 17.4%であるこ
とが示されているが、これらの割合は我々の報告よりもはるかに高く、検出方
法やサンプルサイズの違いが原因である可能性が考えられた。
我々の研究は、dMMR 膵癌の予後と pMMR 膵癌の予後に有意差は認めなかったが、
dMMR 膵癌は pMMR 膵癌よりも比較的良好な予後を示したことを明らかにした。い
くつかの研究では、dMMR の膵癌患者は pMMR の膵癌患者よりも予後が良好である
と報告されている。CloydJM らは、dMMR 膵癌患者の 5 年生存率が 100%であると
報告した(観察期間中央値 93.1 か月)。また Hu ZI らは、dMMR 膵癌の平均生存
期間が 96.6 ヶ月であったことを報告した。本研究では、dMMR の患者の長期生存
は認めていないが、dMMR の 5 人のうち 4 人は予後が良好である可能性がある。
実際、現在の研究における dMMR の患者の 5 人に 3 人はまだ生きていて、亡くな
った 1 人も 75 ヶ月の生存を得ていた。また残りの 1 人は URLA 膵癌であったが
治療開始後 11.2 か月生存した。これらの結果から、dMMR 膵癌の患者は pMMR 膵

癌の患者よりも予後が良好である可能性があるかもしれない。さらに、dMMR 膵
癌は、pMMR 膵癌とは異なった背景をもった可能性がある。この研究では、dMMR
膵癌の組織学的分化は pMMR よりも有意に低かった(P = .03)。いくつかの報告
はまた、dMMR 膵癌は pMMR 膵癌より高分化型であるか、組織学的に大部分が区別
可能であることを示してる。また Lupinacci RM らは、IPMN 関連膵癌の dMMR の
頻度(4 / 58、6.9%)が、非 IPMN 関連膵癌(5 / 385、1.3%)よりも高いこ
とを報告した(P = .02)。我々の研究では、dMMR の患者は IPMN 関連膵癌ではな
かったが、これは我々の研究における dMMR の患者数が少ないことが原因である
可能性が考えられた。膵癌の dMMR と IPMN との関連についてはさらに調査する
必要がある。
我々は本研究の限界を認識している。第一に、本研究は本質的に後方視的であ
り、単一施設からの少数の dMMR 患者によるものである。第二に、116 人の患者
が術前化学療法を受けており、これが dMMR の頻度に影響を及ぼした可能性があ
る。いくつかの報告は、化学療法が dMMR の発生率に影響を与えることを明らか
にしている。これらの制限を克服するには、より多くの dMMR 患者に関するさら
なる前向き研究が必要である。
結論として、外科的切除で治療された膵癌患者における dMMR の割合はまれであ
り、日本人患者と白人患者の間でその頻度に差は認めなかった。膵癌における
dMMR の予後は比較的良好であったが、pMMR と比較して有意差はみとめなかった。
謝辞
この研究のためにホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックを提供いただ
きました、広島大学病理診断科のスタッフに感謝します。
利益相反
なし

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