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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on Highly Ion-conductive Metal-Organic Frameworks by Postsynthetic Modification Methods」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on Highly Ion-conductive Metal-Organic Frameworks by Postsynthetic Modification Methods

Sarango Ramírez, Marvin Kevin 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23458

2021.09.24

概要

金属-有機構造体(MOF)は、金属イオンと有機架橋配位子からなる配位高分子(CP)の一種で、多孔性を有する無限のネットワーク構造を形成する。MOFは、その規則的な構造と高い設計性により、ガスの貯蔵・分離、触媒、イオン伝導など、さまざまな用途のための研究対象として広く研究されている。本論文では、合成後の化学修飾によってプロトン伝導性MOFを作製し、プロトンダイナミクスを調べている。第1章では、一般的な背景紹介を行い、第2章では、配位不飽和な金属イオン部位(OMS)に尿素を挿入することで、プロトン伝導性MOFを作製するための新しい戦略を示している。第3章では、MOFの細孔空間と細孔表面の官能化がMOFのプロトン伝導性に与える影響について議論している。第4章では、2次元積層MOFへのLi塩の挿入によるプロトン伝導性の向上について述べ、第5章では本論文のまとめを行っている。各章について以下に説明する。

第2章:無溶媒下における尿素配位子挿入による金属有機構造体の超プロトン伝導性 MOF-74(M)[M2(dobdc),M= Ni2+,Mg2+, dobdc=2,5-dioxido-1,4-benzenedicarboxylate]では、合成後にOMSに尿素配位子を挿入することで、超プロトン伝導性(σ> ∼10-2 S cm-1 at 298 K, 95%RH)が発現している。尿素配位子の挿入に成功したことは、赤外分光法(IR)とX線光電子分光法(XPS)で確認している。また、粉末X線回折法により、試料の構造を調べている。N2ガス収着とH2O蒸気収着の測定では、尿素分子が細孔を占有することによる細孔率の低下を明らかにしている。加えて、H2Oの吸着等温線の挙動から、相対湿度70%以上で水素結合ネットワークの形成が示唆されている。さらに、交流インピーダンス法を用いてプロトン伝導性を評価したところ、70%RHにおいて、MOF-74(M=Ni、Mg)-Ureaのプロトン伝導性が向上し、伝導機構がVehicle-typeからGrotthuss-typeに変化することを明らかにしている。さらに固体2H核磁気共鳴(2H-N MR)法により、尿素分子がGrotthuss型プロトン伝導機構に関与していることを明らかにしている。その結果、尿素がゲスト水分子の空隙を制限し、ゲスト水分子間の水素結合を強化することで、プロトン伝導を促進していることを明らかにしている。

第 3 章:金属有機構造体のプロトン伝導における細孔空間の役割と表面修飾
多孔性と表面機能性は MOF の代表的な特性である。それにもかかわらず、プロトン伝導性と MOF 固有のこれら性質との相関についての研究は少ない。特に、閉じ込められた水の挙動は、バルクの水とは異なることが知られている。本章では、プロトン伝導度に及ぼす細孔空間と細孔表面の官能基化の影響を評価した。具体的には、MOF-74 (M)[M2(dobdc):M=Ni2+,Mg2+,dobdc=2,5-dioxido-1,4-benzenedicarboxylate;M2 (dobpd c), M= Ni2+, dobpdc=4,4’-dihydroxy-(1,1'-byphenyl]-3,3'-dicarboxylate] という、同じ幾何学的特徴を有する拡張配位子を尿素で官能基化している。得られたサンプルは、IR、XPS、PXRD、およびガス吸着測定によって同定されている。プロトン伝導度測定の結果、細孔空間体積の増加はプロトン伝導度に負の影響を与え、Vehicle型の伝導の方が有利であることを明らかにしている。さらに、密度汎関数理論(DFT)による平均水素結合エネルギーの計算では、小さな孔に閉じ込められた水素結合がプロトン伝導性を高めることを明らかにしている。一方、大きな細孔内の水分子は、水素結合エネルギーもプロトン伝導性もバルク水と同様になっている。

第4章:2次元層状Ti-MOFにおけるLiX導入のイオン伝導性促進効果
本章では、2次元積層Ti-dobdc[Ti2(C8O6H3)3(CH3CN)1.15(C4H10O)0.3(H2O)2.5]におけるイオン伝導性を、LiX (X = Cl、Br、I)のインターカレーションによって調べている。MO F:LiXの異なるモル比(1:1、1:3、1:5)で機械的に混合することにより、Ti-dob dcにLiXを取り込ませている。モル比(1:1)の導入ではPXRDパターンにLiX塩の回折線が見られず、骨格内にイオンレベルで導入されていることを明らかにしている。水蒸気収着量の測定では、LiXの組み込みにより、超低湿度(P/P0 < 0.08)および高湿度(P/P0 > 0.6)において、水の収着量が導入前のMOFよりも増加することを明らかにしている。これは、親水性を示すLiXが潮解したためと考察している。イオン伝導性については、交流インピーダンス法で調べている。Ti-dobdc-LiX試料のイオン伝導度は、導入前のTi-dobdcよりも2桁高い値を示し、これは水の取り込み量が増加したためと考察している。さらに、温度依存性測定では、すべてのサンプルにおいて、水の沸点よりも高い温度でイオン伝導度が低下しており、水分子のプロトンがイオン伝導の主要な電荷キャリアである可能性を示唆している。以上のように、水和したLiXを2次元Ti-dobdc骨格内の細孔空間にイオンレベルでインターカレーションすることで、超イオン伝導性を達成している。

結論として、本論文では、プロトンおよびイオン伝導性MOFの新しい設計戦略と様々な特性を提示している。さらに、導電性MOFを設計する際に考慮すべき要因を明らかにしている。その結果、プロトン伝導性MOFの包括的な理解が得られ、新たなプロトン伝導体の開発に向けた将来的な取り組みにつながるものとして期待される。