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大学・研究所にある論文を検索できる 「Stepwise Structural Design of Hierarchically Porous Materials Constructed by Inorganic Compounds and Metal-Organic Frameworks」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Stepwise Structural Design of Hierarchically Porous Materials Constructed by Inorganic Compounds and Metal-Organic Frameworks

Hara, Yosuke 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23732

2022.03.23

概要

多孔体の中でも離散したサイズスケールにわたって複数の細孔をもつ物質・材料のことを階層的多孔体と呼ぶ。階層的多孔体の研究は、主にセラミックス分野で発展して来ており、主に金属酸化物・水酸化物などの比較的単純な組成をベースとした物質系について多くの報告がなされている。一方で、金属酸化物の塊状(モノリス状)体に焦点を当てると、有機物などの異物質をほとんど含まず、かつ制御された多孔構造や材料形状をもった階層的多孔体の報告は未だ少なく、また、分子レベルの多孔構造については設計指針や制御法は確立されていない。

 申請者はこれらの課題を踏まえて、階層的多孔体において以下の2つの方針のもと研究を行った。まず、異物質をほとんど含まないモノリス状金属酸化物系について階層的な構造設計ルートの開拓を試み、得られた多孔体を効率的な色素吸着カラムやリチウム・空気電池などにおけるモデル電極として適用することを目指した。次に、金属有機構造体(MOF)の階層的な集合構造を制御することによって、階層的多孔体における分子レベルの構造から材料形状にいたるまでの幅広いサイズスケールにわたって、独立的な階層構造制御手法の確立を目指した。

 多孔体に関する総説的な導入部(第1章)に続き、第2章では酸化水酸化鉄(III)の階層的多孔構造制御とその応用について述べている。重合反応の進行に伴う相分離における過渡的構造をゾル-ゲル転移により凍結した結果、連続貫通孔としてマクロ多孔構造(50 nm以上、特にマイクロメートル領域の細孔)を得ている。これに加え
て、マクロ孔骨格内にはコロイド粒子の間隙としてメソ孔(2−50 nmの細孔)と粒子内部にマイクロ孔(2 nm未満の細孔)が存在することを明らかにした。得られた試料は、その高い比表面積および階層的な多孔構造に由来した高い吸着性能を有してお り、色素水溶液を用いた吸着実験において、マクロ孔構造および材料形状が通液特性に与える影響を明らかにした。さらに、空気中での焼成によりα-酸化鉄(III)への結晶化を確認し、それに伴いマイクロ孔の減少とメソ孔の拡大が進行することを明らかにしている。

 第3章では、第2章に述べた合成法を水酸化ニッケル系へと拡張し、階層的多孔体を用いたリチウム−酸素(Li-O2)電池電極を設計するための新しい合成戦略について検討を行なった結果について述べている。申請者は、得られた水酸化ニッケル多孔体を還元雰囲気下で焼成することにより、階層的多孔構造をもつ金属ニッケル多孔体を得
た。これを導電助剤およびバインダーフリーのモデル電極として適用し、Li-O2電極プロセスにおける階層的多孔構造の影響を調べている。その結果、電極の多孔構造は酸素分子の拡散効率に影響を与え、また放電生成物を収容する空間として働くことを確認した。また、階層的多孔構造が酸化還元メディエーターの反応効率、放電時の過電圧、サイクル寿命などの主要な電気化学特性に大きな影響を与えることを明らかにしている。

 第4章ではさらにアンチモンドープ酸化スズ(ATO)系へと拡張し、得られたATO多孔体にナノサイズの酸化ルテニウム(RuO2)を均一に担持するプロセスを新たに考案したことを報告している。これにより、多孔構造とRuO2/ATOヘテロ接合構造の独立した制御を実現し、全酸化物型の多孔質モデル電極を得ている。検討の結果、RuO2/ATOヘテロ接合を有する階層的多孔構造は単純なRuO2粉末を用いた電極に比べて高い比容量を示し、さらにRuO2/ATOヘテロ接合を強固にすることによって、高レート領域における比容量およびサイクル寿命の向上をもたらすことを明らかにしている。

 第5章では、金属・金属酸化物系における階層的多孔構造制御法をMOF系に展開すること、すなわちMOFの結晶構造に由来するマイクロ孔を組み込んだ、新しい階層的多孔体の設計指針について検討を行なった結果について述べている。申請者はまず、ジルコニウムテレフタル酸塩をベースにしたMOFであるUiO-66-NH2系において、溶液中におけるMOFの短距離秩序形成によりゾル−ゲル転移を引き起こし、その過程においてマクロ多孔構造の自発的形成を促すことによりマクロ孔を付与することに成功してい る。さらに、得られた試料を酸性溶液中において処理することによって、分子レベルでの再組織化とそれに伴う長距離秩序の付与に成功し、モノリス状多孔体中にマイクロ・メソ・マクロ孔の三峰性多孔構造を独立に制御することを実現している。

 第6章では、第5章で述べた手法を異なる種類のMOF系へ拡張し、MOFゲルのマクロ孔構造や材料形状を制御する手法を確立することを試みた結果について述べている。1, 3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)塩ベースのMOFであるCr-BTCおよびZr-BTCについて検討を行なった。これらの系においても同様の合成戦略を適用することによって三峰性多孔構造制御を実現した。

 第7章では再びUiO-66-NH2系に着目し、マイクロ・メソ孔および欠陥についての詳細な構造解析および制御を試みた結果について報告している。再組織化プロセスに基づく結晶性UiO-66-NH2の形成は、従来の均一溶液からの結晶化プロセスと異なり、クラスター欠如型の欠陥(missing-cluster defect)が形成されにくい傾向が確認している。さらに、再組織化プロセスに影響を与える要素を明らかにすることによってマイクロ・メソ孔の精密な制御が可能になった。得られた試料にはリンカー欠如型の欠陥
(missing-linker defect)の存在が示唆されたが、リンカー溶液を用いた処理によってその修復が可能であった。さらに、得られた階層的多孔体は高い力学強度を有しており破砕・分級による粒子形状への加工が可能であった。

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