閉鎖空間内における金属酸化物結晶成長法に関する基礎的研究
概要
九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Fundamental Study on Crystal Growths of Metal
Oxides within Confined Spaces
亀井, 龍真
https://hdl.handle.net/2324/7157369
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(工学), 課程博士
バージョン:
権利関係:
(様式3)Form 3
氏
名 :亀井 龍真
Name
論 文 名 :小径長尺な密閉空間への単結晶酸化亜鉛ナノワイヤの成長と原子層堆積の開発
Title
区
分 :甲
Category
論 文 内 容 の 要 旨
Thesis Summary
閉鎖空間内に結晶成長することで内壁と分子の相互作用をコントロールすることができる技術は有機修飾、
MOF、およびマイクロ流路などに応用されており、盛んに研究されている。その中でも無機材料である金属酸化物
結晶成長は金属酸化物ナノ構造体が有する巨大な比表面積や機能物性に加えて熱堅牢性が高く、壊れにくい特性が
あることからマイクロ流路を中心に研究されてきた。しかし閉鎖空間であるチューブ状の空間内への金属酸化物結
晶成長には制限があることが過去の研究成果から分かった。
本論文では、閉鎖空間内である小径長尺なマイクロチューブ内において、金属酸化物結晶成長のメカニズム
を解明し、従来の結晶成長法での問題点を明確にし、改善することで今まで達成できなかった内径 100µm、長さ 1m、
アスペクト比 10000 の閉鎖空間内への均一な結晶成長を試みている。
論文で得られた主な成果は以下の通りである。
1. マイクロチューブのような閉鎖空間内での水熱合成法による ZnO ナノワイヤ結晶成長はアスペクト比が
大きくなると、閉じ込め効果が大きくなることにより困難になる傾向にある。この要因としては、従来の水熱合成
におけるシード層形成では酢酸亜鉛溶液を使用しており、閉鎖空間内では有害な残留 Zn 錯体化合物が形成される
ことにより結晶成長できなかった。この閉鎖空間内の問題を解決するためにフローアシストシード形成法でのシー
ド層形成を試みた。このフローアシストシード形成法により、アスペクト比が最大 10000 の 1m 長のマイクロチュ
ーブでも有害な残留化合物を除去することにより、均一な ZnO ナノワイヤを成長させることに成功した。
2. アスペクト比が最大 10000 の 1m 長のマイクロチューブのような閉鎖空間内へ均一に成長させた ZnO ナ
ノワイヤを使用し、液体クロマトグラフィーを介して、ZnO ナノワイヤの分離能力について調査する。クロマトグ
ラフィー評価により、ZnO ナノワイヤは他の一置換ベンゼンよりもフェニルリン酸との分子相互作用が強いことが
明らかになった。さらに、ZnO ナノワイヤは水系移動相でもヌクレオチドに存在するリン酸基を特異的に認識し、
分子間相互作用はリン酸基の数と共に増加することが明確となった。
3. 閉鎖空間内への内面特性を変化させる方法として、ALD は金属酸化物を均一に修飾することが可能である。
しかし従来の ALD 法では細くて長いチューブでの均一な修飾には限界があることが過去の文献と実験から分かっ
た。そこでこの限界領域での ALD を達成するために高圧ガスに対応できる ALD 装置を自作し、通常は使用しない
高圧を適用することでキャピラリーチューブ内に大きな差圧を発生させ、原料が流れるような ALD を開発した。こ
の ALD により従来の手法では達成できなかった最大アスペクト比 10000、内径 100μm のマイクロチューブ内で
の ALD 成長が達成された。この ALD 技術は閉鎖空間内部にナノ構造体が成長していても均一に修飾できることが
実証された。