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大学・研究所にある論文を検索できる 「周術期における末梢静脈栄養輸液によるアミノ酸投与の有用性に関する基礎的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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周術期における末梢静脈栄養輸液によるアミノ酸投与の有用性に関する基礎的研究

和田, 晃 WADA, Akira ワダ, アキラ 九州大学

2022.03.23

概要

静脈栄養輸液は、経口摂取が不能または不十分な患者への栄養療法に用いられている。静脈栄養法は、その投与経路から末梢静脈栄養法 (peripheral parenteral nutrition : PPN) と中心静脈栄養法 (total parenteral nutrition : TPN) に大別される。静脈栄養の施行期間が 2 週間以上の場合は TPN、2 週間以内の場合は PPN の適応とされている。本邦における手術後短期間の輸液栄養管理として、糖・アミノ酸・電解質液から成る PPN 製剤が汎用されているが、輸液剤の明確な選択基準が存在しないことから、糖・電解質から成りアミノ酸が配合されていない維持液が投与されているケースも散見される。また、本邦における高齢化に伴い手術を要する患者も高齢化しており、65歳以上の高齢者は、手術患者の約 40%以上に達する。そのため、周術期高齢患者に頻発する低栄養状態及び筋量及び筋力の低下(術後サルコペニア)の改善や予防は喫緊の課題となっている。本研究は、周術期高齢者のこれらの症状に対する PPN 輸液によるアミノ酸投与の有用性検証を目的に、 2 種のラットモデル動物について栄養学及び分子生物学的指標による評価を行った。

まず、低タンパク質栄養モデルラットを用いた検討では、背部皮膚切創術後 5 日間の静脈内持続投与による輸液管理において、輸液アミノ酸投与群では非投与群に比し、栄養指標、骨格筋重量の改善及び背部切創部の創傷治癒促進が確認された。輸液アミノ酸投与群の皮膚切創部では、I 型コラーゲン (Col1a1) の遺伝子発現が上昇しており、コラーゲン産生促進を介した創傷治癒の促進が示唆された。

次に、開腹腸管擦過術後 5 日間の後肢懸垂により作製した術後サルコペニアモデルラットを用いた検討では、輸液アミノ酸投与及び運動との併用効果について評価した。まず栄養指標ならびに後肢筋力について、輸液アミノ酸投与群では非投与群に比較し、いずれも有意な改善が観察された。さらに輸液アミノ酸投与と運動の併用群では、骨格筋重量及び筋線維束断面積が増加しており、術後サルコペニア症状の軽減が顕著であった。また、アミノ酸非投与群の腓腹筋では、筋萎縮関連遺伝子である MuRF1 及び Atrogin-1 の発現上昇と、筋線維タイプの指標であるミオシン重鎖アイソフォームの遺伝子 Myh1 及び Myh4 の発現亢進が観察され、術後サルコペニアによる筋萎縮誘導と筋線維の速筋化が分子マーカーレベルで確認された。一方、輸液アミノ酸投与群及び輸液アミノ酸投与と運動の併用群では、MuRF1 及び Atrogin-1、ならびに Myh1 及び Myh4 の術後サルコペニアによる発現亢進が抑制されており、これらの遺伝子の発現正常化による筋萎縮や速筋化の抑制を介した筋力や筋重量の改善が示唆された。

以上の結果より、手術後短期間の PPN 輸液によるアミノ酸投与は、栄養指標の改善だけではなく、低タンパク質栄養状態における創傷治癒促進ならびに筋力低下及び筋量低下の抑制といった術後サルコペニア症状の改善にも有用であることが示され、輸液栄養管理によるアミノ酸投与が、周術期、特に術後の高齢患者の回復に寄与する可能性が示された。

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