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真骨魚類の鰭骨格多様化とその発生制御機構の解析

田中, 祥貴 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文(要約)

真骨魚類の鰭骨格多様化とその発生制御機構の解析

令和4年度
東北大学大学院生命科学研究科
生態発生適応科学専攻

田中

祥貴

真骨魚類の鰭骨格多様化とその発生制御機構の解析
動物発生分野
田中祥貴
脊椎動物において体幹部から突出する付属肢(appendage)は生活史における様々な運動の駆動、およびそ
の補助を行なっている。脊椎動物全体に見られる付属器官としては有対付属肢(paired appendage)と呼ば
れる前後2対の構造が知られている。両生類、および羊膜類においてこの有対付属肢は四肢(limb)と呼ば
れ、前方の1対は前肢(forelimb)、後方の1対は後肢(hindlimb)と呼ばれる(以後、両生類と羊膜類を総
称して四足動物(tetrapod)と呼ぶ)。前肢はヒトやその他哺乳類において"手"として働き、歩行や物の運搬
など多岐にわたる運動を支える他、一部の哺乳類において水かきや鰭状の形態を伴って遊泳を支える、鳥類
においては翼へと変化し飛行を可能にするといった形態進化に由来する形態の多様性、多機能性を示す。後
肢は前肢と比較すると四足動物全体にわたって一貫した機能を果たしているものの、その機能は歩行や体幹
の支えなど生活史、特に陸上での活動において必要不可欠なものである。
四足動物における付属器官の重要性は先に挙げた通りであるが、魚類は四足動物が失った、あるいはその
前駆体となった付属器官である鰭(fin)を有し、それらが今なお重要な機能を果たしている。魚類は脊椎動
物における四肢に相同な2対の対鰭(paired fin)を有している他、脊椎動物では失われたとされる正中鰭
(medial fin)を残している。対鰭は四肢と同様に前後2対で存在し、前方に位置するものを胸鰭(pectoral
fin)、後方に位置するものを腹鰭(pelvic fin)と呼ぶ。正中鰭は体幹部の背側、腹側、尾側末端にそれぞ
れ存在し、背側に位置するものを背鰭(dorsal fin)、腹側に位置するものを尻鰭(anal fin)、尾側末端に
位置するものを尾鰭(caudal fin)と呼ぶ。正中鰭は四足動物への進化の過程で失われたが、対鰭はその形
態を変化させ四足動物の四肢となり、四足動物の陸上進出を支えた。
現存する脊椎動物において円口類(Cyclostome:ヤツメウナギ、ヌタウナギ)は対鰭を持たず、対鰭を持
つのは軟骨魚類(Chondrichthyes:ギンザメ、サメ、エイ)、肉鰭魚類(Sarcopterygii:シーラカンス、ハイ
ギョ)、そして条鰭類(Actinopterygii)である。その中でも条鰭類に含まれる真骨魚類(Teleostei)はおよ
そ 25,000 を超える種を含む大系統であり、各鰭の形態を他の系統では見られないほど大きく特殊化させた種
が多く存在する。例として、胸鰭後方の鰭条骨を遊離させて海底を歩くように移動するホウボウ、左右の腹
鰭を融合させた吸盤を持つダンゴウオ、第一背鰭を誘引突起に変化させたチョウチンアンコウなどが挙げら
れる。一部の種において見られるこれらの形態は、鰭の発生過程において制御を担う遺伝子の発現、もしく
は機能が変化することによってその形態を変化させる自由度が鰭にはあることを意味している。
先に挙げたような特殊な例以外にも真骨魚類内での鰭骨格の多様性は知られているものの、その形態進化
の過程については未だ不明な点が多い。また、魚類の鰭発生過程の発現・機能解析としては既に多数行われ
ており、近年の研究においては発生過程の制御を行なっている遺伝子の共通性が四肢と対鰭の間だけではな
く、正中鰭までにも及ぶことが示唆されている(Letelier et al, 2018)が、これらの研究における遺伝子の
機能解析では鰭そのものが欠失してしまう例がほとんどであり、鰭の形態、特にその骨格要素を変化させら
れるような鰭形態の多様性、およびその進化を説明する制御機構については不明なままであった。そこで本
研究では「真骨魚類の胸鰭骨格に焦点を当てた形態多様性の解明」、および「真骨魚類における鰭骨格の形態
進化の変遷とそれの原因として考えられる発生制御機構の解明」を行った。
「真骨魚類の胸鰭骨格に焦点を当
てた形態多様性の解明」では、過去の文献、および筆者が発表した論文(Tanaka et al, 2022)から得られる

真骨魚類における胸鰭骨格形態の進化的変遷を包括的にまとめ、真骨魚類の胸鰭骨格がどのような変遷を経
て多様化したか、また多様な形態の中で保存されている形質は何かについて明らかにした(図1)。真骨魚類
の胸鰭骨格観察の結果を受けて「真骨魚類における鰭骨格の形態進化の変遷とそれの原因として考えられる
発生制御機構の解明」では、真骨魚類における鰭の形態進化の変遷とそれの原因として考えられる発生制御
機構の解明を目指し、胸鰭をはじめとする全ての鰭の発生制御を担うとされる Shh 遺伝子群の発現・機能解
析を行った(図2)。
本博士論文では、以上の真骨魚類鰭骨格における形態の多様性観察、およびその発生制御機構の解析の結
果をもとに、魚類の鰭骨格の多様化が発生制御機構のどのような特性(軸性、細胞系譜、原基のサイズなど)
を変更して実現されたのかについて議論を行った。

図1:真骨魚類胸鰭骨格における形態進化。側棘鰭類(Paracanthopterygii)・棘鰭類
(Acanthopterygii)とそれ以外の真骨魚類の間で、3つの特徴的な形態進化が生じている。

図2:ゼブラフィッシュ胸鰭における Shh 発現パターン。真骨魚類にて2つ存在する Shh(shha, shhb)
にレポーター配列を挿入し、egfp の蛍光を介してその発現パターンを可視化した。 ...

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