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大学・研究所にある論文を検索できる 「精子幹細胞の生存・自己複製における接着シグナルの分子メカニズムと機能的意義の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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精子幹細胞の生存・自己複製における接着シグナルの分子メカニズムと機能的意義の解明

高島, 誠司 信州大学

2021.03.01

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
令和

元 年

6 月 19 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(B)(一般)
研究期間: 2016 ∼ 2018
課題番号: 16H05046
研究課題名(和文)精子幹細胞の生存・自己複製における接着シグナルの分子メカニズムと機能的意義の解明

研究課題名(英文)Functional role and molecular mechanisms of adhesion signal in survival and
self-renewal of spermatogonial stem cells
研究代表者
高島 誠司(Takashima, Seiji)
信州大学・学術研究院繊維学系・准教授

研究者番号:40396891
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

13,500,000 円

研究成果の概要(和文): 本研究は、精子幹細胞の生存と自己複製を担保する『増殖因子』と『細胞接着』の
それぞれの役割とその相互作用を明らかにするために行った。結果、GS細胞の幹細胞性における接着分子ー細胞
外マトリクス(ECM)の組み合わせは厳密に決まっていないことが判明した。一方、ECMの物理特性の影響の検証
を行うべく、硬さ可変ECMの作出を行ったが、GS細胞の接着が可能な人工ECMの作製には至らなかった。
 一方この研究の過程で、2つの精子幹細胞自己複製因子のin vivoでの機能の違いを解析し、GDNFはより未分
化な、FGF2は分化誘導に感受性の高い未分化型精原細胞の細胞集団を増加させることを明らかにした。

研究成果の学術的意義や社会的意義
 精子幹細胞は、精細管最外側にある精子幹細胞ニッシェにおいて自己複製と分化を繰り返し、個体の生涯にわ
たり精子形成を続ける。この細胞は試験管内で培養し、精子を作り出すこと、遺伝子を改変することも可能なた
め、医療・畜産など様々な分野の技術発展に貢献する可能性がある。しかし、この細胞の試験管培養はマウス・
ラット・ハムスターでしか達成されていない。精子幹細胞が試験管内でどのように生存保証と増殖を勝ち取る
か、その原理を追求することは、経済家畜やヒトの精子幹細胞の試験管内培養を達成する上で重要な情報を提供
する。
研究成果の概要(英文):The present study was tried to unveil the role of crosstalk between
self-renewal factors and cell adhesion that ensure survival and self-renewal of spermatogonial stem
cells. As a result, it was found that the adhesion molecule-extracellular matrix (ECM) combination
in stemness of GS cells was not strictly determined. On the other hand, in order to examine the
influence of the physical properties of ECM, although the stiffness variable ECM was made, GS cells
did not attached onto the matrix.
Meanwhile, in the course of this study, we revealed that two self-renewal factors differences in in
vivo function of two sperm stem cell self-replication factors. GDNF was more undifferentiated, and
FGF2 was found to increase the cell population of undifferentiated spermatogonia that is sensitive
to differentiation induction.

研究分野: 生殖生物学・幹細胞生物学
キーワード: 精子幹細胞 生存 自己複製 接着

様 式 C-19、F-19-1、Z-19、CK-19(共通)
1.研究開始当初の背景
精子幹細胞は、精細管最外側にある精子幹細胞ニッシェにおいて自己複製と分化を繰り返し、
個体の生涯にわたり精子形成を続ける。研究代表者はこれまで、研究協力者の篠原らが樹立した
培養精子幹細胞 (Germline Stem Cell: GS 細胞)を用い、自己複製メカニズムの解明を進めてき
た。
研究代表者は GDNF 刺激による RAS-AKT-CCND2 経路の活性化が GS 細胞の自己複製を誘
導することを示した(Lee, Takashima et al., Cell Stem Cell, 2009)。続いて、細胞周期制御に
関わる CDKN1B は精子幹細胞の分化型分裂/自己複製分裂を制御していることを見いだした
(Kanatsu-Shinohara, Takashima et al., PNAS, 2010)。そして最近、GDNF 非存在下での精子
幹細胞自己複製という従来のドグマに反する現象を発見し、この特殊な自己複製が FGF2 によ
り保証されていることを示した(Takashima et al., Stem Cell Rep., 2015)。更にこの研究過程
で、精子幹細胞の生存と自己複製にはインテグリンを介した ECM との接着が不可欠なことを見
いだした。精子幹細胞の自己複製メカニズムを全て理解するには、未だ明らかでない『ECM と
の接着が果たす役割』を解明する必要がある。
2.研究の目的
研究代表者は本研究計画において、精子幹細胞自己複製メカニズムの全容を把握する上で未
解明となっている接着刺激の分子メカニズムを明らかにすると共に、自己複製因子刺激とのク
ロストークの有無とそのメカニズムを明らかにする。
3.研究の方法
GS 細胞の培養
LacZ 遺伝子を構成的に発現する DBA/2 マウスは、C57BL6/J 背景の ROSA26 マウス(構成的に LacZ
を発現する)を DBA/2 系統に5世代以上バッククロスしたものを使用した。このマウスを交配し
得られた生後 6-8 日目の LacZ 陽性オスマウスの精巣から精細管を取り出し、コラゲナーゼ・ト
リプシンによる段階的消化を行い、シングルセルを得た。この細胞を GS 細胞培地(後述)に懸
濁し、ゼラチンコート6穴ディッシュ上に播種した。翌日に浮遊細胞を回収し、6穴ティシュカ
ルチャーディッシュに再播種したのち、出現した GS 細胞の細胞塊をマウス胎児線維芽細胞フィ
ーダー上に再播種し、継代培養で維持した。この細胞は以後 ROSA GS 細胞とする。培地は、
StemPro34 培地をベースに、以下の因子群を添加して使用した。25 µg/ml インスリン(ナカラ
イテスク # 19251-24)、100µg/ml トランスフェリン(Sigma T1147)、60µM プトレシン(Sigma
P7505)、30nM 亜セレン酸ナトリウム(Sigma S1382)、6 mg/ml グルコース(Sigma G7021)、200
µg/ml ピルビン酸(Sigma P2256)、1µl/ml DL-乳酸(L4263)、5mg/ml 牛血清アルブミン(MP
Biomedicals 810661)、2 mM L-グルタミン(Sigma G7513)、50µM 2-メルカプトエタノール(Sigma
M3148)、1×MEM ビタミン溶液(Invitrogen 11120-052)、1×非必須アミノ酸溶液(Invitrogen
11140-050)、100 µM L-アスコルビン酸(Sigma A4544)、10 µg/ml d-ビオチン(Sigma B4501)、
30 ng/ml ß-エストラジオール(Sigma E2758)、60 ng.ml プロゲステロン(Sigma P8783)、10
ng/ml ヒト FGF2(ペプロテック 100-18)、10 ng/ml ヒト GDNF(ペプロテック 450-10)、1%牛胎
児血清(BioWest S1820-500)。

遺伝子導入
遺伝子導入は、レンチウイルスベクターを用いて行った。マウス Itga5 をクローニングした CSIIEF-MCS-IRES-Venus、pCAG-HIVgp、pCMV-VSV-G-RSV-Rev の三つのプラスミドベクターを 293T へ
トランスフェクトし、得られたウイルス溶液を 50,000×g、4℃、2 時間遠心して濃縮した。こ
のウイルスを ROSA GS 細胞に 2~10 Multiplicity of infection で感染させた。フローサイトメ
ーターで、一部の細胞で VENUS 発現が確認された。そこで、セルソーター(BD FACS Aria-IIIu)
を用いて、VENUS 陽性細胞のみを純化して実験に使用した。

フローサイトメトリー
GS 細胞をトリプシン処理にて培養皿より回収し、下記に示す各種抗体で染色し、フローサイト
メーター(BD FACS Calibur)で解析した。使用した抗体は以下の通り。Rat anti-mouse KIT
monoclonal antibody (Clone: 2B8, eBioscience 14-1171)、Rat anti-human ITGA6 monoclonal
antibody (Clone: GoH3, Biolegend 313602)、Biotin-conjugated hamster anti-rat ITGB1
monoclonal antibody (Clone: Ha2/5, BD Biosciences 555004)、Rat anti-EPCAM monoclonal
antibody (Clone: G8.8, BioLegend 118202)、Rat anti-CD9 monoclonal antibody (Clone: KMC8,
BD Biosciences 553758)、Allophycocyanin-conjugated goat anti-rat Ig (BD Biosciences
551019)、Allophycocyanin-conjugated streptavidin (BD Biosciences 554067)。

接着試験
12 穴培養皿にラミニンまたはフィブロネクチンをコートし、細胞を播種、1 時間後に浮遊細胞と
接着細胞をそれぞれ計数し、接着率を算出した。

遺伝子発現解析

細胞を回収し、TRIZOL 試薬(Invitrogen 15596-018)またはセパゾール RNA I Super G(ナカラ
イテスク 09379-55)を用いてトータル RNA を抽出した。逆転写反応は、Verso cDNA 合成キット
(Thermo AB-1453)及び ReverTra Ace® qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡 FSQ301)を用いて行った。定量的 PCR 試薬は FastStart Universal SYBR Green Master (Rox) (Roche
Applied Science 04913914001)、及び TB Green® Premix Ex Taq™ II (Tli RNaseH Plus) (タ
カラバイオ RR820A)、解析は Thermal Cycler Dice Real Time System TP-810 を用いて行った。
使用したプライマーは Masaki et al., Stem Cell Rep., 2018、Sakai et al., J. Reprod.
Dev., 2018、及び Takashima et al., Stem Cell Rep., 2015 を参照。


GS 細胞移植と X-gal 染色
精子幹細胞移植は過去の報告に従い実施した(Takashima et al., Stem Cell Rep., 2018)。具
体的には、成獣 WBB6F1-KitW/KitWv マウス精細管に、4µL に調整した細胞分散液を注入した。こ
の手法で、75〜85%の精細管が細胞分散液で満たされた。移植2ヶ月後に精巣を摘出し、コロニ
ー数をカウントした。移植された精子幹細胞は LacZ 遺伝子を発現するため、X-gal 試薬により
紫色に発色する。そこで、摘出した精巣を 4% PFA in PBS (-)で固定したのち、X-gal 染色によ
り移植精子幹細胞由来のコロニーを染色した。

硬さ可変の培養基板の作製
ゲルコーティングカバーガラスの作製は、以下に記した論文を参照にして行った (Kandow et
al. 2007, Tse et al. 2010, Aratyn-Schaus et al. 2010, Trappmann et al. 2012, Yip et
al. 2013, Higuchi et al. 2014)。直径 18 mm の丸カバーグラス (松波硝子工業株式会社、大
阪) を 5N NaOH (和光純薬) に一晩浸漬した。これを 60℃で乾燥し、100 µl のアミノプロピル
トリエトキシシラン (3-Aminopropyltriethoxysilane: APES; Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、
USA ) を滴下し、5~10 分間処理した。APES 処理後、純水で 5 分間の洗浄を 2 回行い、PBS[-]で
希釈した 0.5%グルタルアルデヒド (20%Glutaraldehyde Solution; 和光純薬) 溶液に 30 分間
浸漬した。親水化処理したカバーガラスは 60℃で乾燥した。カバーガラスにコーティングする
ゲルはポリアクリルアミドゲルを用いた。40%アクリルアミド溶液と 2%ビスアクリルアミド溶液
を用い、Engler ら (2006) と Tse JR ら (2010) と Shimizu ら (2012) の論文を参考に 4 種類
の硬さになるように混合溶液を作製し、混合溶液中の酸素を除くため 20 分間脱気を行った。脱
気後、ラジカル重合開始剤として純水で希釈した 10%過硫酸アンモニウム (ナカライテスク) を
混合溶液に対して 10%、ラジカル重合促進剤として N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン
(和光純薬) を 1%添加し、ボルテックス撹拌した。撹拌後の溶液 25 µl をジクロロジメチルシラ
ン (Sigma-Aldrich) で疎水化処理したガラス板に滴下し、親水化処理したカバーガラスを被せ
て 30 分間静置した。その後、疎水化処理したガラス板から剥がすことでポリアクリルアミドゲ
ルコートカバーガラス (以下、ゲルガラス) を作製した。ゲルガラスは純水に 0.1 M MES (ナカ
ライテスク) と 0.5 M NaCl (和光純薬) を溶解し、pH 6.1 に調整した MES buffer に 5 分間浸
漬することを 2 回繰り返し、未重合のアクリルアミド溶液を洗い落とした。ポリアクリルアミド
ゲルに細胞播種しても細胞は接着しないため、化学的な架橋反応によりゲルガラス上へ ECM の
ゼラチンをコーティングした。架橋剤として Sulfo-SANPAH を用いた。ゲルガラス上に 100 µl の
Sulfo-SANPAH 溶液を滴下し、波長 254 nm の UV を照射する UV クロスリンカー (フナコシ株式会
社、東京) で、UV の放電管から約 5cm の距離で 10 分間処理した。その後、50 mM pH8.5 HEPES
buffer を 100 µl 滴下し、さらに 10 分間 UV 処理した。この処理を行うことで、Sulfo-SANPAH の
アジド基が UV により活性化し、光分解によって生じたラジカルがポリアクリルアミドゲルとラ
ジカル重合を起こして Sulfo-SANPAH とポリアクリルアミドゲルが接着する (Tse et al. 2010,
Yip et al. 2013)。UV 処理後、50 mM pH8.5 HEPES buffer に 3 回浸漬し、余分な Sulfo-SANPAH
溶液を洗い落とした。その後ゼラチンを 0.2%添加した 50 mM pH8.5 HEPES buffer に一晩浸漬し
た。この処理を行うことで、Sulfo-SANPAH の NHS 基の持つ活性化エステルがゼラチンのアミノ
基と反応し、アミド結合を引き起こすことでゲルガラスにゼラチンを架橋できる。ゼラチン架橋
後 、 ゲ ル ガ ラ ス は 50 mM pH8.5 HEPES buffer で 希 釈 し た 0.5 M エ タ ノ ー ル ア ミ ン
(Ethanolamine; Sigma-Aldrich) 溶液に 30 分間浸漬した。この処理を行うことで、ゼラチンと
架橋していない NHS 基をエタノールアミンのアミノ基と反応させ、未反応の NHS 基を取り除い
た。その後 50 mM pH8.5 HEPES buffer に 30 分間浸漬、PBS で 2 回洗浄後 30 分間浸漬すること
で、エタノールアミンを洗い落した。エタノールアミン処理後のゲルガラスは 12 穴ディッシュ
に移し、クリーンベンチ内の UV に 15 分曝すことでゲルガラスの滅菌を行った。滅菌後、10%FBS
培地に一晩浸漬することで、ポリアクリルアミドゲルと培地を平衡化した (ゲルガラスの写真)。

ゼラチン微粒子による in vivo 未分化型精原細胞の刺激
京都大ウイルス・再生研の田畑泰彦教授より譲渡されたゼラチンマイクロスフェア 1mg に mouse
FGF2 及び mouse GDNF(ともに peprotech)を 10µg ずつ含浸させ、8 週齢の野生型 C57BL6/J(B6)
マウス(清水実験材料、もしくは日本 SLC)、及び抗がん剤ブスルファンを 44 mg/kg b.w.で投与
し生殖細胞を除去した B6 マウスに移植した。移植 1 日後/10日後に精巣を摘出し、解析に供
した。


免疫染色
摘出した精巣は、4% PFA in PBS (-) で4℃一晩固定したのち、30% ショ糖 in PBS (-)で置換
後、OCT コンバウンド(サクラファインテック)に包埋した。これをミクロトームで 10 µm 厚に
薄切し MAS コートスライドグラス(松浪)に貼り付け、蛍光免疫染色を行なった。薄切切片は
OCT コンパウンドを洗い流した後、氷冷の 0.1% TritonX-100 (SIGMA) in PBS(-)で処理したの
ち、10%ロバ血清・0.1% 牛血清アルブミン・0.1% Tween-20 in PBS(-)で、1時間室温でブロッ
キングしたのち、一次抗体反応を行なった。使用した抗体は以下のとおり。Goat anti-rat GFRA1
antibody (AF560 R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN)、Rabbit anti-BrdU antibody (NBP214890 Novus Biologicals, Littleton, CO)、Rabbit anti-PLZF antibody (sc-22839 Santa Cruz
Biotechnology, Dallas, TX)、Rabbit anti- RARG monoclonal antibody (#8965 Cell Signaling
Technology, Danvers, MA)、Alexa Fluor 488/555/647-conjugated donkey anti-rabbit IgG
(A-21206, A-21432, A-21447 Thermo Fischer Scientific, Waltham, MA).

4.研究成果
①接着におけるインテグリン依存性の検証
培養精子幹細胞(Germline Stem cell, GS 細胞)は基底膜成分であるラミニンに対し、イン
テグリン α6β1 を介し接着することで、生存と増殖が可能となる。しかし、インテグリン非依
存性に細胞接着を引き起こすポリ-L-リジンをコートしたディッシュ上に接着させた場合、GS 細
胞は増殖することができず、アポトーシスに陥った。この際、自己複製因子 GDNF はこのアポト
ーシスをある程度抑制したが、FGF2 は全く抑制しなかった。この現象は、接着により生じるシ
グナルがインテグリンを介しており、これが GDNF により入力される生存・増殖シグナルをコン
トロールしていることを示していた。

②接着におけるインテグリン α 鎖-細胞外マトリクスの選択性の検証
インテグリン α 鎖は接着するマトリクスの種類を規定する。GS 細胞はインテグリン α6β
1を介し基底膜成分であるラミニンと接着するが、ゼラチンやフィブロネクチンとは接着する
ことができない。これは、必要な α 鎖が発現していないことによる。GS 細胞の生存と増殖には
細胞外マトリクスへの接着が必要であるが、これが、インテグリン α6β1-ラミニン相互作用
に特異的なものかを検証した。GS 細胞にインテグリン α5を強制発現させたところ、フィブロ
ネクチンへの接着が可能となり、生存と増殖も示した。接着による GS 細胞の生存・自己複製の
担保は、インテグリン α6β1-ラミニン相互作用に特異的なものではなく、他の α 鎖-細胞外
マトリクスの組み合わせでも代償可能であることが示された。

③非生理的条件で生存した GS 細胞の機能解析
インテグリン α5強制発現 GS 細胞がフィブロネクチン・ラミニン双方に同程度の接着能力を
示す。そこでこの細胞を、フィブロネクチンまたはラミニンで培養した場合の増殖速度を比較し
たところ、双方ともに対数増殖を示し、有意差は見られなかった。これらのことから、細胞外マ
トリクスへの接着様式について、インテグリン α6β1ーラミニン相互作用は、インテグリン
α5β1ーフィブロネクチンで代用できることが示された。また一方、ポリ L リジンによる強制
接着では生存を保証できないこと、インテグリン β1ノックアウト GS 細胞はフィーダー細胞上
で生存できることも判明していることから、インテグリンを介した細胞外環境との相互作用は
必要だが、インテグリン β1、α5、α6に限らず、より幅広い接着様式でこのシグナルを賄
えることが示唆された。次に、細胞増殖と遺伝子発現が細胞外マトリクスにより変化するかを検
証した。 ...

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