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Germline and somatic RUNX1 variants in a pediatric bone marrow failure cohort

山森, 彩子 名古屋大学

2023.08.02

概要

主論文の要旨

Germline and somatic RUNX1 variants
in a pediatric bone marrow failure cohort
小児骨髄不全コホートにおける
生殖細胞系列と体細胞系列のRUNX1バリアント

名古屋大学大学院医学系研究科

総合医学専攻

発育・加齢医学講座

小児科学分野

(指導:髙橋

義行

教授)

山森

彩子

【緒言】
ラント関連転写因子 1(RUNX1)は造血と骨髄の分化において重要な制御遺伝子であ
る。RUNX1 の生殖細胞変異体(機能喪失型、ドミナントネガティブ型)は、軽度から中
等度の血小板減少および血小板機能異常を特徴とする常染色体顕性遺伝疾患である骨
髄性悪性腫瘍傾向を伴った家族性血小板減少症(Familial platelet disorder with associated
myeloid malignancy; FPD-MM)の主要因であり、患者の約 40%が生涯を通じて、骨髄異
形 成 症 候 群 (Myelodysplastic syndrome; MDS) 、 急 性 骨 髄 性 白 血 病 (Acute myeloid
leukemia; AML)といった血液学的悪性腫瘍を発症するとされている。FPD-MM の診断
は、一般的に特徴的な身体症状や異常がないため、特に散発例では遺伝子解析なしで
の診断は難しい。
本研究では、当科の小児骨髄不全(Bone marrow failure; BMF)レジストリに登録され
た 324 人の患者コホートのうち、RUNX1 変異を有する 9 人の臨床情報、遺伝子解析結
果および血液形態学的評価について検討を行った結果を報告する。
【対象及び方法】
2013 年 12 月から 2019 年 5 月までの間に BMF と臨床診断された患者 324 人を対象
に、Targeted capture sequencing を実施した。病原性 RUNX1 変異が確認された患者を同
定し、臨床情報および遺伝子情報を後方視的に評価した。遺伝子解析は、末梢血から
ゲノム DNA を抽出し、Sanger sequencing、全エクソーム解析(whole exome sequence;
WES)を実施した。体細胞変異であった患者は、口腔粘膜および爪検体による Sanger
sequencing、WES も行った。
骨髄塗抹標本が入手できた患者については、小児血液形態学に精通した医師 3 人
(AH、MI、HI)によって末梢血および骨髄の血液形態学評価を行った。FPD-MM 患者
の白血病転化前の末梢血および骨髄血の血液形態学評価がされた論文について系統的
な文献検索を行った。
【結果】
連続した小児 BMF コホート 324 人のうち 9 人(2.8%)に RUNX1 変異を同定した。7
人(男児 4 人、女児 3 人)に生殖細胞変異、女児 2 人に体細胞変異を認めた。診断時年
齢中央値は 8 か月(範囲:0~10 歳)で、うち 4 人は生後すぐに登録された。臨床診断
は、血小板減少症(n=5)、遺伝性骨髄不全症候群(n=3)、無症状(n=1)であった。診断時
血小板数中央値は 36.0×10 9 /L(範囲: 5.0〜92.0×10 9 /L)であった。血小板減少症の家族歴
を持つ 4 家系から 5 人の患者(UPN-289、UPN-1013、UPN-1021a、UPN-1021b、UPN1507)が同定された。特に、UPN-1013 の祖父には血小板減少症および MDS の既往が
あり、MDS により原病死亡した。2 人に身体的特徴がみられ、UPN-934 と UPN-1128
に喉頭軟化症、UPN-934 に低身長があった。9 人中 3 人が悪性転化し、FPD-MM の 1
人(UPN-1507)が T 細胞リンパ芽球性リンパ腫、体細胞変異の 2 人(UPN-934 および
UPN-1334)が MDS に進行した。

-1-

9 人の患者の RUNX1 変異を図 1A に図示した。7 人は生殖細胞変異(欠失変異 2 例
[エクソン 4–7 領域]、フレームシフト変異 2 例[p.Pro357ArgfsTer129、
p.Leu381ArgfsTer105]、
ナンセンス変異 1 例[p.Glu422*]、スプライスサイト変異 1 例[c.351+1G>A]、ミスセ
ンス変異 1 例[p.Thr196Ala]、ナンセンス体細胞変異 2 例[p.Arg204*、p.Arg201*])が
確認された。
血液学的形態評価は、末梢血(n=6)または骨髄(n=5)の塗抹標本を入手できた合計
7 人を評価した(図 1B–F)。末梢血では、5 人に正常血小板、生殖細胞変異の 1 人(UPN1596)に大型血小板を認めた。骨髄は、4 人が正形成(生殖細胞変異[n=3]、体細胞変
異[n=1])、生殖細胞変異の 1 人が低形成(UPN-1021a)であった。巨核球数は、生殖
細胞変異 2 人が正常、3 人(生殖細胞変異[n=2]、体細胞変異[n=1])で減少してい
た。5 人全例に、小型で核の低分葉異常を伴う巨核球の異形成を認めた。ドミナント
ネガティブ型の 2 人(UPN-1596、UPN-1334)に3系統の異形成を認めた(図 1G)。
系統的な文献検索により 261 報の論文から末梢血及び骨髄の形態評価を行なってい
る論文 6 報が選出され、診断時悪性転化例を除外した FPD-MM 患者 13 人が抽出され
た。13 人の診断時年齢中央値は 34 歳(範囲:0~70 歳)、小児 5 人、成人 8 人であっ
た。血液形態学評価では、13 人全例で巨核球の異形成が共通し、2 人(G-I-1、H-II-3)
に 2 系統の血球の異形成が確認された(図 1G)。2 人が悪性転化し、MDS1 人、AML1
人であった。
【考察】
我々は、324 人の小児 BMF 患者の連続コホートにおいて、9 人の病原性 RUNX1 変
異を同定し、9 人中 7 人(78%)は FPD-MM、2 人(22%)は体細胞変異であると診断し
た。同定した RUNX1 変異について、臨床症状と家族歴だけで生殖細胞系列か体細胞
系列かを判別するのは困難であり、非血液組織由来の DNA を用いた遺伝子解析が必
要である。
本研究では、FPD-MM 患者 7 人中 3 人が新生児期に血小板減少症を呈していた。新
生児血小板減少症は、免疫原性、血小板の活性化・消費による血小板破壊の亢進が主
要因である。FPD-MM を含む遺伝性血小板減少症は、極めて稀であることから一般的
に新生児血小板減少症の鑑別疾患に含まれないが、新生児血小板減少症におい て、
RUNX1 変異を含む遺伝性血小板減少症を考慮することは重要であると考えられた。
FPD-MM の血球形態異常を詳細に評価した報告は少ない。本研究では、正常サイズ
の血小板と小型の巨核球を特徴的な所見として認めた。本研究結果は既報と一致し、
FPD-MM に共通する血液学的形態所見として、正常サイズの血小板と巨核球の異形成
を認めた。さらにドミナントネガティブ型の RUNX1 に 3 系統の血球の異形成を確認
し、RUNX1 と血球の異形成の関連が示唆された。FPD-MM 患者における普遍的な形態
所見であるか判断するには、より多くの症例の蓄積が必要である。
【結語】

-2-

小児 BMF コホート 324 人中 9 人(2.8%)に RUNX1 変異を同定し、7 人が生殖細胞変
異、2 人が体細胞変異であると同定した。生殖細胞系列および体細胞系列の RUNX1 変
異の遺伝子解析とその血液学的形態の評価は、小児 BMF 患者の鑑別診断において重
要である。特に、新生児期発症の血小板減少症では FPD-MM を含む遺伝性血液疾患が
過小診断される可能性があるため、血小板減少症を有する新生児では RUNX1 を含め
た遺伝子解析と長期予後を評価する必要がある。

-3-

図 1.
(A) Lollipop plot of single nucleotide variants and deletions of RUNX1. (B–F) The dysmorphic megakaryocytes found
in patients with somatic (UPN-1334) or germline (UPN-1021a, UPN-1596, UPN-1128, and UPN-1507) RUNX1
variants. Scale bar: 10 μm. (G) Summary of dysplasia in bone marrow morphology observed in patients with germline
variants of RUNX1. RHD, Runt homology domain; TAD, Transcriptional activation domain; BM, Bone marrow; PB,
Peripheral blood; MgK, Megakaryocyte.

-4-

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