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大学・研究所にある論文を検索できる 「無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症のモデルマウス作製と病態解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症のモデルマウス作製と病態解析

永井 康貴 東北大学

2021.03.25

概要

無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症(radioulnar synostosis with amegakaryocytic thrombocytopenia, RUSAT)は先天性骨髄不全症候群に分類される疾患で、骨髄不全と橈尺骨癒合症を主症状とする常染色体優性遺伝性疾患である。原因遺伝子の1つであるMECOMは選択的スプライシングにより複数の蛋白質をコードする。代表的な蛋白質であるEVI1は転写調節因子として機能し、個体発生と造血に関与していることが知られている。Mecom変異を導入したマウスの作製と表現型解析についての報告はあるが、導入された変異はRUSATで報告された変異ではない。本研究では患者に同定された変異であるMECOM(NM_001105078.4) c.2252A>G(p.H751R)変異に相当するマウスMecom(XM_006535394.4) c.2255A>G(p.H752R)変異を導入したノックインマウスを作製して解析した。作製したマウスの解析は一般的に行われる外表・体重・生存曲線に加え、RUSATとの関連から四肢の骨格と血液学的所見を対象とした。

 まずマウスEVI1H752R変異がヒトEVI1H751R変異と同様の作用を持つかを検討するため、マウスおよびヒトの野生型および変異型EVI1発現ベクターと、アクチベーター蛋白質1(AP-1)の結合配列またはトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)応答性エレメントをルシフェラーゼ上流に持つレポーターベクターを共に培養細胞に導入し、転写活性を測定した。そしてノックインマウスはES細胞を用いた相同組み換えによって作製した。作製したマウスは一般的な評価として体重、生存曲線、胎仔および仔の遺伝子型の比に加えて、RUSATに関連した所見を想定し、骨格染色、末梢血の血球算定、および骨髄細胞のフローサイトメトリーによる解析を行った。

 ルシフェラーゼアッセイでは、AP-1およびTGF-βのいずれのシグナル伝達でも野生型と変異型はマウスではヒトと同様の傾向を示した。Evi1H752R/+マウスは外表上の異常を認めず、オスで野生型マウスと比較して低体重傾向がみられた。Evi1H752R/+マウスはメンデル比に則して出生し、1年の飼育で死亡個体が出なかった。一方で、Evi1H752R/H752Rマウスは胎生致死でありE10.5からE12.5の間での死亡が示唆された。よって以降はEvi1+/+マウスとEvi1H752R/+マウスを比較した。骨格については、Evi1H752R/+マウスに明らかな橈尺骨癒合はなく摂食や運動などの行動に明らかな異常を認めなかった。四肢長管骨で骨化を評価したところ、E18.5ではEvi1H752R/+マウスでは骨化の遅延傾向がみられたが、P0の時点ではその差を認めなかった。血液学的所見は、末梢血では、白血球数、ヘモグロビン、血小板数を生後4週から50週まで定期的に測定したが、いずれも有意差はなく増減の傾向も同様であった。骨髄細胞を8から12週齢でフローサイトメトリーで解析した結果、Evi1H752R/+マウスでは造血幹細胞および造血前駆細胞の減少を認めた一方で、骨髄前駆細胞は維持されていた。これまでに報告されているEVI1のヘテロ接合性ノックアウトマウスにおいて造血幹細胞および造血前駆細胞の減少が知られており、本研究で作製したミスセンス変異を持つマウスも同等の血液学的所見を示した。

 本研究において、RUSATで同定されたMECOM変異に相当する変異を持つホモ接合性マウスは胎生致死であり、本MECOM変異はE12.5以前の個体発生に重要な関与があることが明らかになった。また、ヘテロ接合性ノックインマウスは骨化の遅延傾向があり、造血幹細胞および造血前駆細胞が減少することが明らかになった。