TYCOONにおけるインターネット回線の歴史とコロナ禍における利用形態の変化について
概要
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が2019年12月に中国の武漢で検出された2ヶ月後のバレンタインデーの頃、もしかすると2020年度前期の授業は才ンラインで行うことになるかもしれないという嫌な予感が、情報教育研究センタ一内では沸々と湧き始めていた。その時、本学の情報ネットワークTYCOON(ToYaku Computer Open Network)はその非常事態に耐えられるだろうか?LMS(オンライン学習システム)や電子メールなどのサーバシステムについては、2019年夏に新規構築したTYCOON仮想化基盤Titania[l][2]があるので、それを既存サーバの強化やバックアップのためのリソースに廻すことができるだろうから、何とかなるだろう。オンデマンドな動画配信については、生命科学部の実習で反転授業のために構築した動画配信サーバが既に稼働していたので、教員の方々も手法的にはある程度の経験を積んでいるだろう。問題はZoomなどのテレビ会議システムを使ってリアルタイムのオンライン授業が実施できるかどうかであるが、LMSとの連携を含めてこれからいろいろと調べてなくては…等々、授業実施のためのシミュレーションが頭の中を駆け巡っていた。このように情報教育研究センターでは、TYCOONのコロナ対策に関する議論が2月下旬から既に始まっていた。
しかしTYCOONの根幹的な部分で1つの大きな心配があった。それはTYCOONとインターネットを結ぶ通信回線の帯域幅(伝送路容量)の上限問題である。すなわち学内外を問わず、本学における授業や仕事がICTを使ったものに切り替わっていけば、TYCOONとインターネットとの通信量は急激に増えるであろう。そうなった場合、現状の本学のインターネット回線であるWIDEインターネット(100Mbps)とSINET(lGbps)の組み合わせで、何とか対応できるであろうか?インターネッ卜回線を効率よく仕分けして送受信してくれるロードバランサーも、1台ではあるが新回線と共に2020年度内に導入することが決定していたが、果たして授業における回線利用のピーク到来に間に合うであろうか。
本稿では、組織のICTシステムの出入りロであり、かつ要であるインターネッ卜通信環境について、TYCOONはどのような変遷の歴史を辿ってきたか、そして2020年にはどのようにコロナ禍と対峙したかを、幾つかのデータを示しながら考察してみる。またこれからの通信状況について予測し、それらへの対応方法について提言したいと思う。