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大学・研究所にある論文を検索できる 「Tenascin-C expression in renal biopsies from patients with tubulointerstitial nephritis and its relation to disease activity and prognosis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Tenascin-C expression in renal biopsies from patients with tubulointerstitial nephritis and its relation to disease activity and prognosis

泉, 久美子 岐阜大学

2021.02.17

概要

尿細管間質性腎炎(TIN)は,炎症細胞が免疫介在性に腎臓の間質へ浸潤することにより急性腎障害を発症し,しばしば慢性腎臓病(CKD)に移行する疾患である。
 Tenascin-C(TNC)は,脊椎動物の胚の発生過程や,癌浸潤,創傷治癒や組織再生などの組織リモデリングの過程で一過性に発現する,細胞外マトリックス糖タンパクのひとつである。近年TNCは,前述の機能だけではなく,疾患の重症度を反映するマーカーとしての可能性が示唆されており,実際,間質性肺炎や心筋炎の予後予測マーカーとしての有用性が報告されている。一方TNCは,多くの糸球体腎炎で発現がみられることが報告されているものの,TINにおけるTNC発現の機序などについては未だ明らかとなってはいない。
 そこで本研究では,様々なステージのTIN患者から得た腎生検組織内のTNCの分布を調査し,組織学的所見と臨床所見を比較することで,TINにおけるTNCの疾患活動性,あるいは予後予測因子としての有用性を検討した。

【対象と方法】
 2011年6月から2017年12月に,岐阜大学医学部附属病院および朝日大学病院で腎生検を受け,TINと診断された25症例(男性11例,女性14例)を後方視的に検討した。臨床的パラメーターとして,TIN発症から腎生検までの期間(罹病期間),腎生検時のCRP,尿蛋白量,尿中β2ミクログロブリン(β2-MG),血清クレアチニン値(Cr),発症時から腎生検時までのeGFRの低下量(ΔeGFR-a),腎生検後のeGFRの回復量(ΔeGFR-r)を用いた。コントロール群として,良性疾患である菲薄基底膜病(TBM)8症例の標本を使用した。
 腎生検によって得られた標本について,HE染色,PAS染色,マッソントリクローム染色,PAM染色,シリウスレッド染色,および抗TNC抗体による免疫染色を行った.PAS染色および抗TNC抗体染色により,TNC発現の有無を2群間で評価し,さらにTIN群におけるTNCの発現様式についても検討を行った.また,マッソントリクローム染色により間質の面積,シリウスレッド染色により間質の線維化面積を測定した。さらに抗TNC抗体染色標本の色識別により間質内のTNC陽性面積率を算出し,シリウスレッド染色を行った標本を偏光顕微鏡下に観察し,抗TNC抗体染色標本を比較することで,コラーゲン線維が形成され瘢痕化した部位におけるTNC発現の有無についても評価した。またこれらの結果と,前述の臨床的パラメーターとの相関を比較検討した。

【結果】
 患者の平均年齢は56歳,腎生検後の平均観察期間は23ヶ月であった.
 TIN群全例で,間質にTNCの発現がみられた。TNC陽性面積率はTIN群では42±29%であり,コントロール群(0.9±1.1%)に比べ有意に高い結果であった。TIN群において,急性期,亜急性期で間質にTNCの発現がみられたが,慢性期,すなわち間質がコラーゲン線維に置き換わり瘢痕組織が形成された部位では,TNCは検出されなかった。
 臨床的パラメーターとの比較では,間質内のTNC陽性面積率と罹病期間に,統計学的に負の相関を認めた。一方,間質内のTNC陽性面積率と年齢,性別,尿蛋白量,尿中β2-MG,Cr,腎生検時のeGFRの間に,有意な相関は認めなかった。また,間質内TNC陽性面積率とCRP,ΔeGFR-aとの間に,有意な正の相関が認められたが,ΔeGFR-rや間質内の炎症細胞数,間質面積,間質の線維化面積の間に有意差は認めなかった。また経過観察期間中,多くの症例で腎機能が回復したものの,TNC陽性面積率とΔeGFR-rの間に統計学的な相関は認めなかった。

【考察】
 今回の研究では,コラーゲン繊維の形成に先行してTNCの発現が観察されたことから,TNCはTINの活動期に発現し,治癒過程になると消失する可能性が示唆された。TNC陽性面積率と罹病期間との間に負の相関が認められ,TNC陽性面積率とCRPとeGFR低下量に正の相関が認められたことから,TNCの発現はTINの疾患活動性を反映している可能性が高い。
 一方TNC陽性面積率とΔeGFR-rの間に有意な相関が認められなかったことから,腎生検標本におけるTNCは,TINの予後予測因子として有用ではないと思われた。
 本研究では症例数が少ないため,更なる症例の蓄積が必要と思われる.さらにTINにおける病因毎の腎病変の進行とTNC発現の関連性を検討することにより,TNCの予後予測因子としての有用性が明らかとなる可能性が示唆された。

【結論】
 TIN患者の腎生検標本でにおいて,TNCが存在することが示された。TNCが炎症の急性期に検出され修復に伴い消失したことから,TNCの発現は疾患の活動性を示す可能性が示唆された。

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