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大学・研究所にある論文を検索できる 「サイトゾルでのシキミ酸リサイクルの阻害によるリグニン生合成経路の改変に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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サイトゾルでのシキミ酸リサイクルの阻害によるリグニン生合成経路の改変に関する研究

胡, 石 東京農工大学

2022.07.18

概要

地球温暖化の進行や化石資源の枯渇への懸念を背景として、近年、再生可能なエネルギー、特に、植物由来のバイオ燃料やバイオ素材が注目されています。一般的な樹木においては、リグニンは重量比で約25~35%を占めています。木材の主体はリグノセルロースと呼ばれ、その構成成分であるセルロースやヘミセルロースからリグニンを分離させることで、これらの多糖は紙パルプや繊維など従来型の利用に加え、バイオ燃料やバイオ化成品の原料として用いることができます。しかしながら、工業的にリグノセルロースからリグニンを分離するには、高温のアルカリ処理や化学薬品やエネルギーを大量に投入する必要があるため、コストが膨大であり、また排水、排ガスの処理などにより環境への負荷が大きいことも事実です。

これまでに植物本来のモノリグノール合成酵素遺伝子の破壊株を作成することでリグニンの低減に成功し、その細胞壁は酵素糖化性が向上していることが確かめられています。しかし、モノリグノール合成酵素遺伝子破壊株の生育が著しく悪化しているのが多く、バイオマス収量という観点で実用的ではないものが多いです。最近では、特定のモノマーの存在比を増加させたり、モノリグノール側鎖を修飾するような酵素遺伝子を利用することで、モノマー比を多きく変化させたり、特殊な側鎖構造をもったモノマーをリグニン中に取り込まれることに成功しています。これらのアプローチによって作り出された植物の多くは生育には大きな悪影響がでておらず、リグニン改変の有効なツールになりうることが示唆されています。

本研究では芳香族アミノ酸の合成に関与するシキミ酸経路上で働くシキミ酸キナーゼ(SK)を植物中 で過剰発現することで、同経路の代謝を改変することを通じてリグニンの分子構造を改変します。これによりリグニンの分解性を高め、木質バイオマスからの燃料や各種素材の製造の省資源化や省エネルギー化に貢献することを最終的な目的とします。
植物のプラスチドでは、SK の働きによりシキミ酸からシキミ酸 3-リン酸が生成され、これが前駆体となって芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンを合成されます。合成されたフェニルアラニンは、細胞質基質に輸送され、モノリグノールの生合成に利用されます。一方、原核生物では、細胞質基質にシキミ酸経路が存在し、芳香族アミノ酸が生成します。本研究では、SK を植物の細胞質基質で発現させることでリグニン構造を改変させ、酵素糖化性を向上されることが期待されます。

アグロバクテリウム法を用いてHpSK 遺伝子をポプラに導入し、遺伝子組換え体を作製しました。野生型と比べて、一部分の組換え体が大きな生育阻害が見られました。各系統のSK 活性を測定するところで、組換え体#13 と#21 が野生型より高い活性を示しました。そして、リグニンの化学分析の結果について、リグニン含有量が野生型と全ての組替え体の間に差異がありませんでした。

一方、組換え体#13 と#21 のリグニン組成の変化が確認されました。具体的には、GC-MS において、リグニンのp-ヒドロキシフェニル単位(H モノマー)の増加、グアヤシル(G モノマー)およびシリンギル単位(S モノマー)の減少を示しました。この結果と一致して、NMR 分析および細胞壁結合フェノール類の定量分析の両方ともp-ヒドロキシフェニル単位由来するp-ヒドロキシ安息香酸(pB)の増加が確認されました。更に、メタボロームの結果にも、H ユニットを持つ3 つのオリゴリグノールの増加、そして、G およびS ユニットを持つ多数のオリゴリグノールの減少を示しました。

RNA シーケンスの結果では、多くの遺伝子の発現はトランスジェニック植物で変化しましたが、大部分のリグニン生合成関連遺伝子の発現に有意な影響を及ぼしませんでした。更に、野生型と比べて、バイオマスの酵素糖化実験で、組換え体#13 と#21 の糖化率が最大 61%増加しました。まとめると、本研究の結果は、細胞質ゾルのシキミ酸のリサイクルが、細胞壁のリグニン含有量ではなく、リグニンのモノマー組成に重要であることを示しています。

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