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大学・研究所にある論文を検索できる 「マウス異常受精胚細胞質を利用した前核期大量細胞質移植法の開発と有効性に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マウス異常受精胚細胞質を利用した前核期大量細胞質移植法の開発と有効性に関する研究

藤峯 絢子 東北大学

2020.09.25

概要

近年、生殖年齢の上昇により加齢に伴う細胞質因子が着目され、細胞質の機能低下は減数分裂、受精および着床前胚発生に影響を及ぼすと報告されている。これまで、種々の細胞質置換や移植が細胞質因子の克服に有用であると報告され、その一部は実際に臨床応用された。しかしながら、いずれも他者からの高品質な卵子、または正常受精胚の提供を必要とし、倫理的に高いハードルを生じる。本研究は、より倫理的な細胞質ドナーとして通常廃棄される異常受精胚に着目した。

本研究では、①マウス前核期胚を用いた大量細胞質移植法(pronuclear stage cytoplasmic transfer ;PNCT)の確立、②PNCT の胚発育への影響、有効性、安全性の検証、③細胞質機能不全モデルとして卵管内加齢卵(aged)を用いた PNCT の有効性と細胞質機能改善効果の検証、異常受精の違いによる細胞質機能の評価、を目的とした。

最初に、使用するガラスピペットや細胞骨格阻害剤の組み合わせにより 2 段階操作法を確立し、大量の前核期細胞質をレシピエント胚へ効率的に移植可能となった。正常受精(2PN)を用いた PNCT 胚は、対照群の新鮮卵(fresh)によるIVF 胚と比較し、胚盤胞率は有意に高率で、胚移植により妊孕性のある産仔を獲得した。次に、レシピエントのaged 2PN に対して、同一個体からの aged IVF 異常受精胚(1PN)を移植した群を aPNCT(autologous PNCT)群、fresh IVF 異常受精胚(1PN/3PN)を用いた群を hPNCT(heterologous PNCT)群として検証した。Aged IVF では 3PN 頻度が低く、aPNCT は 1PN 胚のみ検証した。aged1PN 胚をドナーとした aPNCT では胚盤胞率の改善を認めず、fresh1PN 胚を用いたhPCNT でも同様であった。そこで異常受精IVF 胚の発生能に着目したところ、fresh/aged の IVF 共に 1PN 胚よりも 3PN 胚で胚盤胞率が高率であった。安定的に獲得できる fresh3PN 胚をドナーとした hPNCT を行ったところ、胚盤胞率、mtDNAコピー数、ATP 量、総細胞数、胚呼吸量は対照群と比較し有意に高値であった。また、異常受精胚の H3K4me3染色を行ったところ、2 細胞期においてaged1PN 由来の胚は 2PN や 3PN 由来胚と比較して脱メチル化の進行がわずかに遅れていた。

本研究はPNCT を確立し、実現可能性と有効性を示した初の報告となる。卵管内加齢胚を用いたPNCT の検証では、異常受精胚の細胞質機能は均一ではなく、マウスにおいては 3PN 胚の細胞質は正常受精胚と遜色がないことが明らかとなった。PNCT は、ミトコンドリアの増加により胚盤胞期胚における ATP 量や胚呼吸量の増加に寄与し、更に細胞数の増加などの質にも寄与していた。よって、今後、高齢難治性不妊への PNCTの応用が期待される。更に、最適な aPNCT ドナーを発見できれば、他者からの移植で生じるミトコンドリア遺伝子のヘテロプラスミーを生じない細胞質機能補完が可能となる。本研究では異常受精胚においては精子が寄与する 2PN と 3PN 胚に比較して 1PN 胚で脱メチル化の遅延が示唆され、これは 1PN が卵管内加齢による M 期からの自然脱出(単為発生)に起因し、更に精子由来活性化物質の欠如が関与していると推察されるが、今後の詳細な検討が待たれる。また、PNCT の応用においては、ヒト加齢胚における有効性やドナーとなるヒト異常受精胚細胞質の特性を検証する事が今後の課題である。

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