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大学・研究所にある論文を検索できる 「マウス実験モデルを用いた新規チップセンサー型受精卵呼吸量測定装置による胚評価の有用性と安全性評価に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マウス実験モデルを用いた新規チップセンサー型受精卵呼吸量測定装置による胚評価の有用性と安全性評価に関する研究

久野 貴司 東北大学

2020.03.25

概要

近年増加の一途を辿っている ART (assisted reproductive technology) 治療の成否には、胚品質の正確な評価が重要である。近年、胚のミトコンドリア機能が注目され、ミトコンドリアは OXPHOS (Oxidative phosphorylation; 酸化的リン酸化) を介した ATP の合成に寄与する。我々は胚の酸化的リン酸化における呼吸代謝に着目し、先行研究で新規のチップセンサー型受精卵呼吸量測定装置である CERMs (Chip-sensing Embryo Respiration Monitoring system) を開発した。CERMs は簡便かつ高感度に 5 つまでの胚を同時測定することが可能であり、胚呼吸量はヒト胚の胚盤胞到達予測や胚の質を反映する可能性が示唆された。しかしながら、ヒト臨床試験前段階として、CERMs における胚呼吸量と分子生物学的パラメーターとの相関、着床率、胎児形成率との関連や、CERMs 使用による着床後の胎児発育や次世代の妊孕性に与える影響の検討が必要である。

本研究では、ヒト胚に合わせて設計された CERMs のチップセンサーに適合するため、集合キメラ法を用いた。この集合キメラ胚を用いて、胚呼吸量測定後の胚盤胞を、免疫染色による細胞数計測、ルシフェラーゼ発光法による ATP 定量、リアルタイム PCR によるmtDNA (Mitochondrial DNA; ミトコンドリア遺伝子) コピー数の半定量解析を行って、胚呼吸量との相関を検討した。胚呼吸量と着床や胎児形成との関連は、胚呼吸量 (もしくは胚のサイズ) 既知の胚移植実験によって検討した。胚呼吸量または大きさで 2 群に分けて胚移植し、子宮内の着床数と胎児数、胎児重量と胎盤重量を検討した。CERMs による胚呼吸量測定後の胚移植にて産仔の獲得と妊孕性を検証した。

集合胚胚盤胞において胚呼吸量と全細胞数、胚呼吸量と ATP 量に相関がみられたが、内細胞塊数や胚の大きさには相関が認められなかった。胚呼吸量と mtDNA コピー数には有意な相関はみられなかった。移植実験では、胚呼吸量、大きさ、いずれの項目で分けて行った実験でも、着床数、胎児数、胎盤重量、胎児重量に有意な差は認められなかった。CERMs で胚呼吸量測定後の単一胚由来の胚盤胞を移植した結果、健常な産仔が得られ、自然交配にて第 2 代を獲得した。

CERMs の測定に適合したマウス集合胚では、CERMs により測定した胚呼吸量は胚の Viability の指標として有用であると考えられた。一方、形態学的指標とは異なる独立したパラメーターとなりうる可能性が示唆された。mtDNA コピー数の検討では、胚呼吸量とミトコンドリア量の相関関係は認めなかったが、胚呼吸量は全細胞数や ATP 量と相関し、ミトコンドリアの OXPHOS を介した ATP 産生に寄与すると考えられた。胚呼吸量、大きさともに着床率や胎児形成率に寄与しなかったが、これは集合キメラ胚の元来高い着床能に起因している可能性も示唆された。CERMs による胚の着床後の発育や産仔の生殖能力への影響はなかったことから、安全にヒトの臨床試験へ移行可能と思われた。

本研究ではマウスモデルを確立し、CERMs を使用した胚呼吸量が分子生物学的パラメーターと相関することを証明した。胚呼吸量は胎児形成率や内細胞塊数と相関せず全細胞数と相関していたことから、胚の Viability の中でも着床にとって重要である栄養外胚葉の数や機能を反映し、着床との関連が示唆された。しかし集合胚の限界から胚呼吸量と着床についてはヒトの臨床試験による検討が望まれる。CERMs は現行の着床前診断やタイムラプスシステム等、胚の染色体正常性を規定する胚評価法との組み合わせにより現行の胚評価を補完しうる可能性が示唆された。

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