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Analysis on physiological function of glucuronoyl esterase in plant biomass utilization of Neurospora crassa

王, 瑞杰 東京大学 DOI:10.15083/0002006386

2023.03.24

概要























瑞杰

植物バイオマスは地球上で最も豊富に存在する有機物であり、再生可能なエネルギー源
や化成品の原材料として期待されている。しかし、その主成分である植物細胞壁はセルロ
ース・ヘミセルロース・リグニンが複雑に絡み合った構造を持つため、容易には分解・利
用することができない。特にヘミセルロースとリグニンは、ヘミセルロース中のキシラン
に結合した 4-O-メチル-D-グルクロン酸とリグニン中の芳香環の水酸基との間のエステル結
合によって結合しており、植物細胞壁を強固なものにしている。この結合を切断する酵素
が糸状菌や細菌から見つかっており、グルクロン酸エステラーゼ(glucuronoyl esterase; GE)
と呼ばれている。これまでの GE に関する研究は酵素学的側面からの解析が主であり、その
生理機能については殆ど知見がない。本研究は GE がバイオマス分解に果たす役割について
アカパンカビをモデルに解析を加えたものであり、背景と目的を述べた序章、結果を述べ
た第 1 章から第 3 章、および結論と展望を述べた第 4 章からなる。
第 1 章ではアカパンカビが持つ唯一の GE である NcGE の in vitro および in vivo での働き
が述べられている。Pichia pastoris で異種生産した NcGE と市販のセルラーゼ、キシラナー
ゼがそれぞれ単独および混合ののち天然基質であるクワ科木材粉(Mulberry wood powder;
MWP)と反応され、遊離還元糖が測定された。その結果、NcGE がセルラーゼ、キシラナ
ーゼによる還元糖の遊離を促進することが示された。続いて NcGE を高発現するアカパンカ
ビ NcGEOEX 株が作製され、その効果が検討された。その結果、NcGEOEX 株ではコントロー
ル株に比べ培養上清のキシラナーゼ活性が有意に高いことが示された。転写レベルでは、
NcGEOEX 株ではセロビオヒドロラーゼ CBH-1、キシラナーゼ GH10-1、GH10-2、セルラーゼ、
キシラナーゼの転写に関わる転写因子 CLR-2 等をコードする遺伝子の発現が上昇していた。
これらの結果から、NcGEOEX 株では NcGE とセルラーゼ・キシラナーゼの相乗作用によって
MWP の分解が促進され、その結果生産された何らかの誘導因子が CLR-2 を介して cbh-1、
gh10-1、gh10-2 等の発現を促進するとの仮説が提唱された。
第 2 章では第 1 章の結果を受け、NcGE によるキシラナーゼ類の発現上昇にどのような転
写因子が関わるかが解析されている。転写因子 CLR-1 はセルロース存在下で活性化し、clr-2
や-グルコシダーゼ遺伝子の転写を促進する。CLR-2 はセルラーゼ類の転写を活性化し、セ
ルロースの分解が促進される。一方、ヘミセルロースは転写因子 XLR-1 を活性化し、これ

がキシラナーゼ類の転写を促進する。NcGEOEX 株において clr-1 を破壊したところ、clr-2 の
転写が減少するとともに、cbh-1 や gh10-1 などの転写も同様に低下した。clr-2 株では clr-1
の発現には変化は見られなかったが、cbh-1 や gh10-1 などの転写は低下した。一方、xlr-1
株ではキシラナーゼ、キシロシダーゼ遺伝子の発現がほぼ消失した。さらに、転写因子遺
伝子破壊株では NcGE 高発現に伴うキシラナーゼ活性の上昇がほとんど見られなくなった。
これらの結果から、NcGE は CLR-1、CLR-2、XLR-1 を介してセルラーゼ・キシラナーゼ類
の発現を促進することが明らかにされたと述べている。本章では最後に、NcGE および市販
キシラナーゼで処理した MWP の抽出物を培地に添加すると様々な遺伝子の転写が活性化
することが示されている。この結果は第 1 章において示唆された未知誘導因子の存在を支
持するものであり、今後この因子の同定を行うべきであると述べている。
第 3 章では第 2 章で述べられたキシラナーゼ、キシロシダーゼ類について解析されてい
る。
ゲノムデータベースから 6 個のキシラナーゼ、
4 個のキシロシダーゼ遺伝子が同定され、
それらの発現がキシランや MWP 培地で誘導されることが示されたのち、すでに報告のある
3 つのキシロシダーゼを除く 7 遺伝子について大腸菌での異種発現が行われた。その結果、
4 つのキシラナーゼについて活性型タンパク質の発現に成功し、おのおのの性質が調べられ
た。また、上記 10 遺伝子の破壊株のキシランおよび MWP 培地での生育が調べられ、細胞
内キシロシダーゼ GH43-1 が特に重要な役割を果たすことが示された。
以上、本研究はアカパンカビによるバイオマス分解における GE の生理機能を in vitro、in
vivo の両面から解析を加えたものであり、その成果は学術上応用上寄与するところが少なく
ない。よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認
めた。

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