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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on the structural modification of protein aggregate induced by freezing process」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on the structural modification of protein aggregate induced by freezing process

Fang, Bowen 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23520

2021.09.24

概要

タンパク質凝集体の形成機序や凝集体のもつ特性は、タンパク質分子がもつ化学的特性だけでなく、pH、イオン強度、界面物性などの物理化学的要因が強く影響することが知られている。食品中のタンパク質凝集体は、食感、風味、安定性など、食品のさまざまな特性とも関わっており、これらの制御のために凝集体の構造改変を試みる研究が広く取り組まれてきた。凍結はタンパク質の凝集体形成に強い影響を与えるプロセスであり、氷結晶界面における疎水性相互作用や、凍結濃縮相内部におけるpH、イオン強度の劇的な変化によって、凝集体の高次構造が変化することを示唆する報告があるものの、凍結下における凝集体の形成機序や支配因子は明確にされていない。

本論文は、卵および乳タンパク質の凍結過程で形成されるタンパク質凝集体の特性を分析し、異なる凍結条件のもとで誘起される凝集体形成や凝集体の構造変化に関わるメカニズムの解明を目指したものである。さらに、凍結によるタンパク質凝集体の形成を乳酸菌のカプセル化技術として応用する試みについても検証されている。

第1章では、抵抗パルスセンシング法によるタンパク質凝集体の評価法を報告している。抵抗パルスセンシング法は、検体である粒子の全数分析に基づく手法であり、懸濁液中の粒子個数濃度を計測できる新しい手法である。ここでは、凍結過程を経て形成されたカゼインナトリウム凝集体の粒子径、粒子個数濃度、表面特性を分析し た。NaCl濃度(0.1 Mおよび0.01 M)とpH(5.5および8.0)の異なる1.0% (w/w)カゼインナトリウム懸濁液を–35°Cで1時間、2日間または5日間という凍結条件を設定し、その変化傾向を調べた。まず、平均粒子径は0.1 M NaClを含む懸濁液の方が0.01 M NaClを含む懸濁液よりも大幅に大きくなった。サンプルの粒子径は凍結開始直後の1時間にて減少し、その後、2日目~5日目にかけて徐々に増加した。ほとんどのサンプルの粒子個数濃度は凍結直後に増加した後、減少に転ずる傾向を示した。凍結後の凝集体の特性は、pHやイオン強度、さらに凍結時の保持温度や凍結時間に影響を受けることを明らかにし、それらの影響を定量的に示した。

第2章では、卵白懸濁液を用いた凍結過程における凝集体形成の検討を報告している。複数のpHとイオン強度に調整した卵白懸濁液を数日間凍結し、前章と同様に抵抗パルスセンシング法によって凝集体微粒子を分析した。凍結過程を経た卵白懸濁液から形成される凝集体微粒子の平均粒子径はおよそ3.5~4.5 µmであり、イオン強度の増減に対応して凝集体微粒子の平均粒子径は増減した。しかし、凍結条件の変化に対する平均粒子径の変化は小さく、その代わり粒子個数濃度が5日間の凍結過程おいて減少することを見出した。X線小角散乱実験による分析を行った結果、凍結処理によって凝集体の表面特性は変化するものの、凝集体の内部構造の改変は起こっていないことが示唆された。凍結された卵白懸濁液は、気泡保持力が変化することを見出しており、気泡保持力を向上させる条件を適用することで、食品安定化剤としての卵白の特性制御に応用できる可能性を示唆した。

第3章では、全卵懸濁液を用いた凍結過程における凝集体形成の検討と、ショ糖の添加が与える影響について検討した結果を報告している。全卵懸濁液を一定条件下で冷解凍し、抵抗パルスセンシング法による分析と放射光X線を用いたX線小角散乱実験から得たデータに基づいて詳細な解析を行った。凍結過程を経た溶液から形成される凝集体微粒子はおよそ3.2~3.5 µmの平均粒子径をもつが、前章と同様に凍結処理の影響による平均粒子径の変化は小さく、顕著に変化するのが粒子個数濃度であることを見出した。凝集体の個数濃度は、–35°Cで5日間という凍結処理によりおよそ6倍まで増加することを明らかにし、この過程で凝集体微粒子の形成が経時的に進行し、同時に凝集体の表面特性も変化することを示した。これらの結果から、以下のようなメカニズムを提唱した。まず、凍結過程はタンパク質分子のアンフォールディングに関与しており、アンフォールディングによって溶解度が低下した画分が凝集体の前駆体となり凝集が進行する。さらに、表面特性が一定以上に変化した凝集体は分散性を失い沈殿へと移行し、凝集体の生成速度と沈殿への移行速度のバランスによって懸濁液中の粒子個数濃度の増減が決定される。このメカニズムは、凍結処理に伴って変化する可溶性タンパク質濃度の測定データ、沈殿量の測定データ、X線小角散乱実験による凝集体構造の分析データから総合的に判断して支持された。

ショ糖の添加は凍結処理に伴う凝集形成を抑制することが知られているが、これは主に、凝集体粒子数の増加抑制と表面特性の変化抑制の双方に寄与していることを示した。凍結処理は、凝集体の前駆体の形成量を増加させ、その後の凝集の進行を促進するが、ショ糖の添加はこの前駆体形成を抑制し、結果的に凍結過程における凝集の進行を抑制していると考察した。

第4章では、凍結処理によって形成されるタンパク質凝集体の形成を乳酸菌のカプセル化に応用する試みを報告している。冷凍や酸に対する耐性が低い乳酸菌群を使用し、これを卵黄懸濁液と共に凍結させることにより、乳酸菌を包埋させることが可能か、また、冷凍耐性や酸耐性を向上させることができるかについて検証している。まず、卵黄を加えて、適切な凍結条件のもとで凍結することによって乳酸菌の生存率を 2倍以上に向上させられることを見出した。凍結処理により卵黄の凝集体が増加し、その凝集体が凍結後の乳酸菌をコーティングする構造を形成していることを電子顕微鏡により観察した。また、乳酸菌をpH 2.5の塩酸溶液に10分間暴露する酸耐性試験を実施し、カプセル化によって乳酸菌の死滅割合を低減させられることも見出した。これらの結果は、凍結処理による卵黄の凝集を利用したカプセル化が、凍結や酸処理から乳酸菌を効果的に保護できることを示しており、プロバイオティクスを利用した食品の設計や保存に有用であることを証明している。

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