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大学・研究所にある論文を検索できる 「カイコにおけるムチン型O結合型糖鎖形成機構の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

カイコにおけるムチン型O結合型糖鎖形成機構の解明

森尾, 明大 MORIO, Akihiro モリオ, アキヒロ 九州大学

2023.09.25

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Study on the mucin-type O-glycosylation pathway
in the silkworm Bombyx Mori
森尾, 明大

https://hdl.handle.net/2324/7157388
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(農学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)





論文題名

:森尾

明大

:Study on the mucin-type O-glycosylation pathway in the silkworm Bombyx

Mori(カイコにおけるムチン型 O 結合型糖鎖形成機構の解明)





:甲















カイコは鱗翅目におけるモデル生物として研究で利用されていると共に、近年ではバキュロウイ
ルスを用いた有用タンパク質生産の宿主として産業面でも用いられている。カイコ-バキュロウイル
ス発現系(以下、silkworm-BEVS と表記)においては、広く産業利用されている大腸菌を用いた
発現系とは異なり、比較的ヒトに近しい翻訳後修飾が起こることが確認されている。種々存在する
タンパク質の翻訳後修飾の中でも糖鎖修飾はタンパク質の安定性や分泌機構に大きく寄与すること
が報告されており、付加される糖鎖はタンパク質への結合様式の違いにより主に N 結合型と O 結
合型に大別される。silkworm-BEVS をタンパク質発現系として産業利用してゆくに当たり、生産
されるタンパク質の品質をコントロールするために、付加される糖鎖構造や修飾メカニズムの解明
は必須であるが、カイコにおいては N 結合型糖鎖についてのみ知見が蓄積されているのが現状であ
る。よって、本研究では、silkworm-BEVS によって生産されるタンパク質に付加されている O 結
合型糖鎖の構造を液体クロマトグラフィー質量分析法(以下、LC-MS と表記)を用いてプロファ
イリングすると共に、O 結合型糖鎖を形成する糖転移酵素の機能解析を実施することにより主要な
O 結合型糖鎖形成メカニズムを解明した。
始めに、内在性タンパク質すべてに付加されている O 結合型糖鎖の挙動を追うのは困難であるた
め、糖鎖構造解析に用いるためのモデルタンパク質の作成を目的として、複数の糖タンパク質のス
クリーニングを実施した。培養細胞における発現量および糖鎖付加の有無の確認を実施し、
proteoglycan 4(以下、PRG4 と表記)が発現量に優れると共に多数の O 結合型糖鎖が付加されて
いることが確認され、モデルタンパク質として選定された。また、silkworm-BEVS を用いて作製
された O 結合型糖鎖切断酵素の活性評価においても PRG4 はモデルタンパク質として十分に機能し
ており、O 結合型糖鎖のレポーターとして申し分ないことが確認された。
次に、LC-MS を用いた O 結合型糖鎖構造のプロファイリングおよびムチン型 O 結合型糖鎖の形
成起点となる構造(GalNAcα1-Ser/Thr)を形成する糖転移酵素 N-acetylgalactosaminyltransferase
(以下、PGANT と表記)の機能解析を実施した。LC-MS を用いた解析においては、単糖(GalNAc or
GlcNAcα1-Ser/Thr)および二糖(Galβ1-3GalNAcα1-Ser/Thr)が主要な構造として検出され、ヒトと
比べ比較的短い糖鎖構造が付加されていることが確認された。また、糖転移酵素 PGANT に関して
は、ヒトやショウジョウバエが持つ PGANT と類似の機能を持つと推定される遺伝子が 9 つ
(PGANT 1-9)確認された。培養細胞において各遺伝子をノックダウンし機能を確認したところ、
カイコにおいては PGANT2 のみが糖転移酵素としての機能を示した。また、培養細胞を用いた局
在解析においても、PGANT2 はゴルジ体に存在していることが確認された。
加えて、もう一つの主要構造である二糖(Galβ1-3GalNAcα1-Ser/Thr)を形成する糖転移酵素 core
1 β1-3galactosyltransferase (以下、T-synthase と表記)の機能解析を実施した。カイコにおいては、
スプライシングバリアントとして 5 つの遺伝子が存在しており、左記から 4 つのアイソフォーム(以
下、isoform 1-4)が確認された。培養細胞を用いて各 isoform の局在および糖転移活性を確認した

ところ、isoform 1/2 がゴルジ体に局在し、糖転移活性を示した。更に、in vivo での各 isoform の
挙動を確認するために T-synthase ノックアウトカイコを作製すると共に、タンパク質中の各ドメ
インの糖転移活性への寄与を確認するために一部のドメインを欠失した変異体を用意した。ノック
アウトカイコにおいても isoform 1/2 は活性を示すと共に、stem と呼ばれるドメインが糖転移活性
に重要な働きを持っていることが確認された。
以上の結果より、silkworm-BEVS で生産されるタンパク質に付加される O 結合型糖鎖の構造お
よび主要な構造である単糖/二糖を形成する糖転移酵素の機能が明らかとなった。これらの成果は、
silkworm-BEVS を用いて作製されるタンパク質の品質コントロールという面に大きく寄与し、医
薬品や診断薬などに用いられるタンパク質の有用な発現系としての利用が進むであろう
silkworm-BEVS の産業的価値を高めるものであると考えられる。

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