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大学・研究所にある論文を検索できる 「暑熱ストレス下における反芻動物の乳腺自然免疫機能に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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暑熱ストレス下における反芻動物の乳腺自然免疫機能に関する研究

鈴木 直樹 広島大学

2021.03.23

概要

ウシの乳房炎は夏に多いと言われているが,この原因の一つに暑熱ストレスが乳腺の自然免疫機能を低下させ,感染しやすくなっている可能性がある。そこで,本研究は,暑熱ストレスが反芻動物乳腺の自然免疫機能に及ぼす影響を調べることを目的とした。まず,季節がウシの乳腺自然免疫機能に及ぼす影響を調べるために,bulk milk somatic cell count(BMSCC)の月変化を調べるとともに,乳汁中抗菌因子濃度および暑熱ストレス指標を季節間で比較した。次に,ヤギを用いて暑熱ストレスにより起こるとされる甲状腺機能低下および高cortisol状態を再現し,乳房内にlipopolysaccharide(LPS)を注入した後の自然免疫機能の変化を調べた。

1. ウシ乳汁中抗菌因子濃度の季節変化
 広島県の気温,相対湿度からtemperature humidity index(THI)を計算し,BMSCCも毎月調べた。また,冬(1および2月),春(4および5月),夏(7および8月),秋(10および11月)に,分娩後5-8日のホルスタイン種乳牛から乳汁および血液を採取した。乳中somatic cell count(SCC)が300,000cells/ml以下の健康な乳汁を選択し,乳中抗菌因子としてlactoferrin,lingual antimicrobial peptide(LAP),S100A7およびIgA濃度,暑熱ストレス指標として直腸温,血中diacron – reactive oxygen metabolites(d-ROMs), cortisol, thyroxine(T4)濃度を測定した。THIは夏に上昇し,8月に最高値を示した。BMSCCは8および9月が4および5月に比べて有意に高かった。SCCは季節によって違いが認められなかったが,SCCを300,000cells/ml以下,300,000~1,000,000cells/ml,1,000,000cells/ml以上に分類し,それぞれの割合を計算すると,300,000cells/ml以下となる乳汁の割合は,夏において秋のそれよりも有意に低かった。LactoferrinおよびLAP濃度は夏においてそれぞれ冬および春のそれらと比べて有意に低かった。暑熱ストレス指標である直腸温度は夏がその他の季節に比べ有意に高かったが,血中d-ROMs, cortisolおよびT4濃度は季節による有意な変化はなかった。
 以上の結果から,供試牛は夏にある程度の暑熱ストレスを受けていると考えられた。また,夏に一部の抗菌因子濃度が低下することが明らかとなった。

2. Propylthiouracilおよびdexamethasone処理したヤギにおけるLPS投与後の乳腺自然免疫機能の変化
 ウシの血中T4およびcorotisol濃度が季節間で変化せず,暑熱ストレス下で変化する内分泌機能と乳腺自然免疫機能の関係は明らかにされなかった。そこで,実験的に甲状腺機能を低下およびcortisol濃度を上昇させた時の乳腺自然免疫機能を調べるととともに,その時に乳房内へLPSを投与した時の自然免疫機能の変化を調べた。トカラ種メスヤギに,甲状腺機能低下を再現する目的で3週間毎日propylthiouracilを投与したPTU区(甲状腺機能低下処理,n=6),高cortisol状態を再現する目的で5日間毎日dexamathasoneを投与したDEX区(高cortisol処理,n=6)およびいずれも処理しない無処理区(n=6)を用意し,その左乳房にLPS50μg/5ml滅菌生理食塩水を注入し,右側乳房に滅菌生理食塩水のみを注入した。LPS注入後0,2,4,6,8,12h後および7日後まで血液および乳汁を毎日採取した。PTU区では血中T4濃度を測定した。乳汁はSCCを測定し,乳汁中抗菌因子としてlactoferrin,S100A7,IgA濃度を,chemokineとしてIL-8濃度を測定した。PTU区における血中T4濃度は3週間の投与で有意に減少した。PTU区およびDEX区において,それぞれの前処理期間前後で乳中SCC,lactoferrin,S100A7,IgAおよびIL-8濃度に有意な変化はみられなかった。LPS注入後のSCCはPTU区およびDEX区において無処理区と比べて有意に低かった。また,LPS注入後の乳中lactoferrin濃度は,PTU区が無処理区と比べて有意に低かった。S100A7濃度はPTU区が無処理区に比べて有意に高かった。IgA濃度およびIL-8濃度は区間に有意な差はなかった。
 以上の結果から,甲状腺機能低下状態で乳房内にLPSを投与すると,SCCおよび一部の抗菌因子濃度の上昇が抑制されると考えられた。

3. 結論
 暑熱ストレス下では,健康な状態の乳房で一部の抗菌因子濃度が低下し,さらに,暑熱ストレス下で起こるとされる甲状腺機能低下および高cortisol状態下では,LPS注入後にSCCおよび一部の抗菌因子濃度上昇が抑制されたことから,夏の暑熱期に乳房炎が多いのは,乳腺自然免疫機能の低下が原因の一つと考えられた。

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