リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「The Distribution of Neuroligin4, an Autism-Related Postsynaptic Molecule, in the Human Brain」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

The Distribution of Neuroligin4, an Autism-Related Postsynaptic Molecule, in the Human Brain

戸谷, 明恵 名古屋大学

2023.07.28

概要

主論文の要旨

The Distribution of Neuroligin4, an Autism-Related
Postsynaptic Molecule, in the Human Brain
ヒト脳内における自閉症関連ポストシナプス分子
ニューロリギン4の分布

名古屋大学大学院医学系研究科
神経生化学講座

総合医学専攻

神経生化学分野

(指導:中山 敦雄
戸谷 明恵

教授)

【緒言】
自閉スペクトラム症 ( ASD) は、コミュニケーションや社会活動の障害、反復行動や強
迫行動を特徴とする広汎性行動障害である。ASD には数百の遺伝子が関与しており、
単一または複数の遺伝子変異と、親の年齢や胎児期のウイルス感染などの環境要因が
複合的に ASD の発症に関与すると考えられている 。その中で、シナプスの接着分子
であるニューロリギンファミリーの NLGN4X は、NLGN3 とともに、単一遺伝子の変異
で他の疾患を伴わない非症候性の ASD および/または知的障害 ( ID) の発症に関与する
ことが 2003 年に初めて報告された。げっ歯類のゲノムには NLGN4X の遺伝子が存在し
ないことから、ノックアウトマウス等を用いた解析実験ができず、ニューロリギン4
の詳しい機能や役割は十分に解明されていない。近年、ウエスタンブロット解析によ
りニューロリギン4はヒトの大脳皮質、特に頭頂葉で発現が多いことが報告されてい
る。また、ヒト胚性幹細胞 ( ES 細胞 ) を用いて、ニューロリギン4が興奮性シナプスに
局在することが示されている。しかし、これまでにヒトの組織を用いた免疫染色の研
究報告はない。そこで、本研究は、ニューロリギン4のヒト脳内における組織学的分布
を詳細に調べ、ニューロリギン4と自閉症の表現型との関連を明らかにすることを目
指す。
【対象及び方法】
本研究では、ヒト脳内におけるニューロリギン4の局在を明らかにするため、新生
児、幼児および成人のヒト脳剖検サンプルを用いた。免疫組織染色に使用できる抗ニ
ューロリギン4抗体が存在しないため、異なるエピトープを認識するウサギポリクロ
ーナル抗体とマウスモノクローナル抗体を新たに作製した。
まず、作製した2つの抗ニューロリギン4抗体の特異性についてウエスタンブロッ
ト、および蛍光免疫細胞染色により検討した。ニューロリギンファミリーの4分子は
過剰発現系培養細胞を使用し、陰性コントロールはゲノム編集で作製した NLGN4X ノ
ックアウト人工多能性幹細胞 ( iPS 細胞 ) を使用した。作製した抗体でヒト脳剖検サンプ
ルの免疫組織染色を行い、ニューロリギン4の発現分布を解析した。さらに、視床下
部の 室傍 核 ( PVN ) およ び視 索上 核 ( SON ) にお ける ニュ ー ロリ ギン 4 陽性 細胞 に つい
て 、ミラー切片法を用いてオキシトシン ( OXT ) 、バゾプレシン ( AVP) 産生の有無を検討
した。
【結果】
作製した二種類の抗体が、ニューロリギン4を特異的に認識することを確認した。
また、これらの抗体による免疫組織染色の結果、ニューロリギン4陽性細胞がヒト脳
内における様々な種類の神経細胞において確認された。細胞内局在については、膜タ
ンパク質であるにも関わらず、細胞膜ではなく、細胞質中に染色像が見られた。ニュー
ロリギン4陽性細胞は、部位や種類により染色強度に差があり、大脳皮質や海馬の錐
体細胞のほか、視床下部の PVN および SON、視床、網様体および青斑核の神経細胞で

-1-

強い染色像を示し、対照的に、小脳のプルキンエ細胞や被殻、淡蒼球のシグナルは非
常に弱いか、検出されなかった。PVN と SON の神経細胞は社会性ホルモンである OXT
または AVP を産生するため、これらのホルモン産生細胞でのニューロリギン4発現を
検討した結果、その多くがニューロリギン4陽性であることが確認された。
【考察】
知能に関わる大脳皮質および海馬、社会性に関わる視床下部の PVN および SON、感
覚処理に関わる視床、睡眠や意識に関わる青斑核や網様体で様々なニューロリギン4
陽性神経細胞が確認された。一方で、運動制御に関わる被殻、淡蒼球、小脳、黒質、
赤核では、特に成人の脳でニューロリギン4の発現がとても弱いか、ほとんど検出さ
れなかった。これらの分布は、ニューロリギン4が特に知能、社会性、感覚、および意
識における機能に関与している一方で、運動機能にはあまり関与していないことを示
唆している。免疫染色の結果から関与が示唆されたこれらの機能は、ASD/ID で障害さ
れる脳機能である。
ASD の主要な症状の一つである社会的機能障害との関連から、OXT/AVP 産生神経細
胞におけるニューロリギン4の強いシグナルは興味深い。ニューロリギン4が OXT/AVP
産生神経細胞において細胞質に顆粒状に染色されることについては、先行研究の他の
ニューロリギンファミリー分子の染色像と一致しており、シナプスの接着分子として
報告された分子にも関わらず、ニューロリギンの共通の特徴であると考えられる。
OXT/AVP の放出は2つの制御機構があり、脱分極により下垂体後葉の軸索終末から血
漿に放出する機構と、樹状突起から脳内に放出する機構があり、特に後者は脳内の離
れたターゲットまで作用することで、長期にわたる行動変化を誘発すると考えられて
いる。膜タンパク質であるニューロリギン4が OXT/AVP 産生神経細胞の細胞質で顆粒
状に分布することについては、神経ペプチドの樹状突起分泌に関わる小胞への局在が
示唆された。ニューロリギン4の非シナプス機能に関するさらなる研究が、脳におけ
るこの膜貫通タンパク質の役割全体を理解するのに大変重要である。
【結語】
本研究は、ヒト脳におけるニューロリギン4の発現分布を免疫組織染色により初め
て明らかにし、自閉症患者の症状との関連を見出すことができた。特に、社会性行動を
制御する視床下部の OXT/AVP 産生神経細胞でニューロリギン4が強く発現している
こと、膜貫通タンパク質であるにも関わらず、細胞質に広く分布していることが確認
できた。このことから、ニューロリギン4はシナプスにおける接着のみならず、社会性
に関わる神経ペプチドの分泌制御に関与する可能性が示唆された。

-2-

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る