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Characteristics of primary and repeated recurrent retroperitoneal liposarcoma: outcomes after aggressive surgeries at a single institution

石井, 健太 名古屋大学

2021.07.16

概要

【緒言】
 後腹膜脂肪肉腫(Retroperitoneal liposarcoma: RLS)は症状が出現しにくい腫瘍であり、発見時には巨大腫瘍となっていることが多く、十分な外科的マージンを確保して切除することがしばしば困難である。そのため RLS の局所再発率は 50%以上と高く、また再発患者の主な死因は遠隔転移ではなく局所再発であると報告されている。
 局所再発を来たした RLS の基本的な治療法は外科的再切除であるが、再切除後の再発率も高い。その結果、局所再発と再発切除を繰り返すことがしばしば経験される。しかし、再発 RLS の臨床病理学的特徴、および繰り返し行われる再発切除の術後成績に関するデータは非常に限られている。本研究では原発および再発 RLS の臨床病理学的特徴を、特に繰り返される局所再発と再発切除に焦点を当てて調査した。

【対象及び方法】
 2005 年 1 月から 2018 年 12 月までに当院で診療された原発および再発 RLS の患者を対象とし、診療録を後方視的に検討した。年齢、性別、主訴、腫瘍の大きさ、行われた検査と治療の内容、病理学的診断、予後等の診療情報を収集した。病理学的診断においては WHO 分類に基づいたサブタイプ(高分化型、脱分化型、粘液型、多形型)と、切除断端の評価、合併切除臓器への病理学的浸潤の有無を評価した。再発 RLS においては前回手術から再発までの期間、再発時の腫瘍サイズをその期間で除したもの (growth rate)も加えて評価した。無再発生存期間(recurrence free survival: RFS)および全生存期間(overall survival: OS)について Kaplan-Meier 法あるいは Cox ハザードモデルを用いて解析した。群間の比較には Log-rank test を用い、P 値 0.05 未満を統計学的有意とした。

【結果】
 52 例が該当し、初診時の年齢中央値は 61 歳、男性が 29 例(56%)であった。観察期間中の死亡は 15 例で、生存例の観察期間中央値は 64 か月であった。46 例に対して手術治療が行われ、6 例が切除不能のため化学療法もしくは放射線療法が行われた。年齢、性別、主訴、腫瘍のサイズ、病理学的サブタイプについて、切除群と非切除群で有意な違いを認めなかった(Table 1)。
 初回手術が行われた 46 例中 36 例(78%)が周辺臓器の合併切除を要した。切除臓器の内訳は、腎・副腎が 24 例、消化管 9 例、筋骨格系 6 例、膵・脾 5 例、大血管 2 例であった。切除臓器への浸潤が病理学的に証明された症例は 36 例中 9 例(25%)であった。初回手術を受けた 46 例と、非切除 6 例の OS を比較すると、切除群が有意に良好であった(P=0.013)。
 初回手術を受けた 46 例中 30 例(65%)が再発し、10 例(22%)が現病死した。Cox ハザードモデルを用いた単変量解析で、初回手術における R0 切除は RFS 延長と、高分化型は RFS 延長、OS 延長と有意な関連が見られた(Table 2)。R0 切除と RFS 延長との関連は、高分化型と脱分化型に分けて解析すると、いずれにおいても有意ではなくなった。しかし、周辺臓器の合併切除は、脱分化型において RFS 延長と有意に関連していた(P=0.034)。
 初回再発を来たした 30 例中 24 例が再発切除を受け、うち 16 例(67%)が再再発を来たした。再再発を来たした 16 例中 11 例が再再発切除を受け、うち 8 例(73%)が 3 回目の再発を来たした。3 回目の再発を来たした 8 例中 4 例が 4 回目の切除を受け、うち 4 例(100%)が 4 回目の再発を来たした。再発を繰り返すにしたがい、手術から再発までの期間は短くなり、growth rate は大きくなり、脱分化型の占める割合が増えていった(Table 3)。初回手術時に高分化型と診断された 22 例中 6 例(27%)が、再発を繰り返す中で脱分化型の成分を含むようになった。
 初回手術から 4 回目手術までの特徴と術後成績について Table 4 に示す。3 回目以降の手術で R0 切除が達成できた症例はわずかであった。再発を繰り返すにしたがい、 RFS は短くなっていった(Figure 1)。初回再発に対して切除を受けた 24 例と、非切除 6 例の OS を比較すると、再発切除群が有意に良好であった(P=0.018)。再再発に対して切除を受けた 11 例と、非切除 5 例の OS を比較すると、再再発切除による OS の有意な延長は認められなかった(P=0.100)。

【考察】
 今回原発及び再発 RLS における臨床病理学的特徴を調査し、局所再発の繰り返しが非常によくみられる経過であること、再発を繰り返す中で腫瘍の悪性度が高まっていく傾向があること、初回手術時の R0 切除が RFS 延長と有意に関連していることを明らかとした。また、3 回目以降の手術においては R0 切除達成が困難であり、ほとんどの症例が短期間で再発していた。
 今回、初回手術における R0 切除と高分化型は良好な予後と有意に関連していたが、周辺臓器の合併切除と RFS、OS との関連は有意なものではなかった。これらの結果と一致する過去の報告もある一方で、周辺臓器の合併切除を含む積極的な初回手術が局所コントロールにつながるとする報告もみられる。本研究では、より浸潤傾向の強い脱分化型に限って解析すると、初回手術における周辺臓器の合併切除は RFS 延長と有意に関連していた。この結果から、脱分化型に対しては十分な切除マージンを確保するための周辺臓器の合併切除が推奨され得るものと考える。
 局所再発に対する外科的切除を何回まで行うべきであるのかは、本疾患を扱う医師にとって重要な問題である。本研究では、初回再発に対する切除(2 回目手術)までは根治に至ったと考えられる症例があり、また 2 回目手術は非切除と比較し OS の有意な延長が得られていた。続いて 3 回目以降の手術の意義を検討したが、3 回目手術後の RFS は短く、非切除と比較し有意な OS 延長も得られなかった。3 回目手術後の 5年生存率は 40%と許容できるものであったが、これは本疾患が再発しても、致死的となるまで時間を要するためと考えられる。以上のように 3 回目以降の手術による survival benefit は、本研究において示されなかった。
 局所再発を繰り返すにしたがって腫瘍の growth rate が増大していく傾向がみられたが、本疾患の再再発以降の growth rate を評価している報告は本研究が初であった。また、高分化型と診断されていた症例が、再発を繰り返す中でしばしば脱分化型成分を含むようになることが明らかとなった。以前の報告では、このような高分化型から脱分化型への変化は、初回の局所再発時に 7~17%、再再発時には 44%でみられるとされている。再発 RLS のこのような特徴が、3 回目以降の手術で良好な予後が得られ難い一因となっているのかもしれない。なお、このような変化を来たす病理学的メカニズムは解明されておらず、今後の研究課題である。
 本研究の限界としては、第一にサンプルサイズが大きくはないことが挙げられる。外科的切除の RFS、OS に与える影響を観察研究で評価するには、本来多変量解析によって背景因子の調整が行える十分なサンプルサイズが望ましい。その他には、後方視的研究のため、腫瘍のグレードなど重要な予後因子が一部収集不能であったこと、補助療法の適応や内容などに施設としての一貫した方針が決まっていなかったこと、3回目以降の手術において補助療法が行われていなかったことなどが挙げられる。

【結語】
 RLS において、積極的な手術療法後も局所再発の繰り返しがよくみられる。初回手術及び初回再発の切除は根治的となる可能性があり、初回手術時の R0 切除が重要であった。3 回目以降の手術は根治性に乏しく、非切除と比較して OS の延長効果も示せなかった。3 回目以降の手術の意義、再発 RLS に対する補助療法の効果を調査するさらなる研究が求められる。

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