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大学・研究所にある論文を検索できる 「Potential roles of gastroesophageal reflux in patients with superficial esophageal squamous cell carcinoma without major causative risk factors」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Potential roles of gastroesophageal reflux in patients with superficial esophageal squamous cell carcinoma without major causative risk factors

福地 剛英 横浜市立大学

2022.03.25

概要

【序論】
食道癌は世界で 8 番目に多い癌であり,癌関連死のうち 6 番目に多い原因である.
(Gupta et al., 2017)一般的に女性より約三倍程度男性に多いと言われている.食道癌はその組織型から食道腺癌(Esophageal adenocarcinoma)と食道扁平上皮癌 (Esophageal squamous cell carcinoma)とに大きく 2 分される.食道扁平上皮癌はアジア諸国では食道癌の主要な組織学的サブタイプであるのに対し,食道腺癌は西欧諸国で優勢である.胃食道逆流症と食道腺癌の間には強い因果関係がある一方,食道扁平上皮癌の主な原因は喫煙と飲酒でありこれらが組み合わさって相乗効果を示している.さらに食道扁平上皮癌の内視鏡的切除を受けた患者を対象とした最近の前向きコホート研究では,ルゴール色素内視鏡検査によってまだら不染帯の程度が 3 段階で評価され,異時性食道扁平上皮癌の累積発生率とまだら不染帯のグレードとの間に強い関連性があることが示され た.したがって,大酒家や喫煙者で複数のまだら不染帯を認めた患者においては,注意深いフォローアップが必要であるとされる.(Katada et al., 2016)しかし実臨床におい てはこれらの食道扁平上皮癌の主要なリスク因子をいずれも有さない患者に遭遇することがあり,そうした患者群の詳細な特徴は今までほとんど検討されてこなかった.本研究では当院で内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)をうけた早期扁平上皮癌患者の中で喫煙・飲酒歴もなく内視鏡的にルゴール不染帯を全く認めない患者群の臨床病理学的特徴と遺伝子変異を明らかにすることを目的とした.

【実験材料と方法】
2002 年 8 月から 2018 年 12 月までに横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センターで ESD が施行された表在性食道扁平上皮癌 512 症例 704 病変を対象に後ろ向き研究を行った.登録された患者は,上記 3 大リスク因子に基づいて,低リスク群とリスク群の 2 群に分けられた.これらの 2 群間での臨床的な背景の詳細と病変の部位やサイズや形態学的な内視鏡所見を比較検討した.またさらに低リスク群を円形タイプ(round-type)と線状タイプ(linear-type)に分けて病理学的所見をさらに解析しその特徴を検証し,最終的に低リスク群の病変を対象に ESD 標本から次世代シーケンサー(NGS)を用いて体細胞遺伝子変異解析を行った.

【結果】
患者背景として低リスク群は 21 人(4.1%)症例であり,全例が特に家族歴や頭頚部癌既往歴のない女性であった.特徴として低リスク群の患者の多くは逆流性食道炎(GERD)を示しており,その背景として食道裂孔ヘルニアや萎縮性胃炎のない背景胃粘膜を呈し,全員がヘリコバクターピロリ菌未感染状態であった.また低リスク群の内視鏡所見としては胸部中部食道の後壁にある線状病変もしくは円形病変であり,背景粘膜にはびらんや白色付着物といった所見を多くに認めた.さらに腫瘍と背景粘膜に対する病理組織学的検査では,多くの症例が食道炎の病理学的慢性炎症を示す背景粘膜に連続して基底層および傍基底層に限定された高分化の腫瘍性変化を示した.さらに NGS を使用した癌関連遺伝子変異の精査の結果,既報にあるリスク群同様に,低リスク群でも TP53 変異が比較的多く認められた.

【考察】
食道扁平上皮癌の発癌における主要なリスク因子に関しては既報にもあるように,飲酒と喫煙が挙げられているが,近年では内視鏡所見であるまだら不染も食道扁平上皮癌の発癌リスク因子として注目されている.これらの 3 因子を全く認めない患者群の臨床病理学的 特徴を検討した結果,逆流性食道炎が食道扁平上皮癌の発癌に関与している可能性があることが示唆された.これらは臨床所見と内視鏡検査所見のみならず,病理組織学的にもその関連を示すことができたことに関して新規性を認めた.一方で遺伝子変異解析に関しては低リスク群でもその多くが TP53 変異を有しており,通常型であるリスク群と同じ分子機構を持つ可能性が示唆された.
一般的には逆流性食道炎は背景にバレット食道を伴う食道腺癌の原因となることが知られており,日本を含むアジアでは増加傾向ではあるものの依然として少数派である.しかし本研究では食道腺癌ではなく食道扁平上皮癌にも逆流性食道炎が関与している可能性が示唆された.これらは新しい知見であるが,以前から報告されている基礎研究などからは,胆汁酸を含む十二指腸液などをはじめとした非酸性消化液の逆流が扁平上皮癌の発癌へ影響を及ぼしていると考察されている(Miwa et al., 1996; Miyashita et al., 2013; Mukaisho et al., 2014).これらはあくまで仮説に過ぎないが,さらに多くの低リスク患者群を集積し解析することで,逆流性食道炎関連の食道扁平上皮癌発癌のメカニズムを明らかにすることが可能となると考えた.

【結論】
まだら不染があり喫煙や飲酒の習慣歴のない患者でも,食道扁平上皮癌を発癌することがあり,特に女性で逆流性食道炎症状がある場合などは注意深くスクリーニング検査を行う必要があると考える.

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参考文献

Chen KH, Mukaisho K, Ling ZQ, et al. (2007), Association between duodenal contents reflux and squamous cell carcinoma–establishment of an esophageal cancer cell line derived from the metastatic tumor in a rat reflux model. Anticancer Res 2007;27:175–181.

Gupta B, Kumar N. (2017), Worldwide incidence, mortality and time trends for cancer of the oesophagus. Eur J Cancer Prev, 26:107–18.

Katada C, Yokoyama T, Yano T, et al. (2016), Alcohol consumption and multiple dysplastic lesions increase risk of squamous cell carcinoma in the esophagus, head, and neck. Gastroenterology, 151:860–7.

Miwa K, Sahara H, Segawa M, et al. (1996), Reflux of duodenal or gastro-duodenal contents induces esophageal carcinoma in rats. Int J Cancer, 67:269–74.

Miyashita T, Miwa K, Fujimura T, et al. (2013), The severity of duodeno-esophageal reflux influences the development of different histological types of esophageal cancer i 非酸逆流 at model. Int J Cancer, 132:1496–504.

Mukaisho K, Kanai S, Kushima R, et al. (2019), Barretts's carcinogenesis. Pathol Int, 69:319–30.

Mukaisho K, Nakayama T, Yamamoto H, et al. (2014), Duodenal contents reflux can induce esophageal squamous cell carcinoma as well as adenocarcinoma lessons from animal experiments. J Can Sci Clin Onc, 1:1–6.

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