デジタル口内法X線画像における画像情報と観察者パフォーマンスの関係
概要
九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Relationship between image information content
and observer performance in digital intraoral
radiography
寳部, 真也
https://hdl.handle.net/2324/6787540
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(学術), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)
(様式3)
氏
名
論 文 名
:寳部
真也
:Relationship between image information content and observer performance in digital
intraoral radiography(デジタル口内法 X 線画像における画像情報と観察者パフォーマンスの関
係)
区
分
:甲
論
文
内
容
の
要
旨
目的:デジタル口内法 X 線画像システムの画質評価に receiver operating characteristic (ROC) 解析か
ら得られる are under curve (AUC) が広く利用されている。しかし、ROC 解析などの観察評価は十分
な数の観察者が必要であり、時間のかかる複雑な手法である。Weerawanich et al.は観察者不要の
cone-beam CT (CBCT) の画質評価法である cluster signal-to-noise (CSN) 解析を開発し、その結果は
観察者パフォーマンスと非常に高い相関を示した。しかし、CSN 解析から得られる CSN 曲線は横
軸に false positive rate (FPR)、縦軸に true positive rate (TPR) を示し、ROC 曲線と類似しているにも
関わらず、AUC を計算できなかった。その理由は、CNS 解析では、信号を含む陽性画像のみを使
用して TPR と FPR を計算するためである。そこで本研究では、CSN 解析で使用したソフトウェア
に信号を含む陽性画像と信号のない陰性画像を適用することで CSN 解析を改良し、観察者不要の
ROC 解析を行った。本研究の目的は、CSN 解析を改良し、デジタル口内法 X 線画像システムに応
用することで観察者不要の ROC 解析を実行し、その有用性を確認するために、ROC 解析から得ら
れた結果と観察者の信号検出パフォーマンスの関係を評価することである。
方法:ステップの厚さの間隔が 1.0 mm で合計 12 mm 厚の 2 つのアルミニウムステップファントム
を使用した。一方のファントムには各ステップに深さが増す直径 1 mm のホール (信号) (0.05 から
0.35 mm) が 7 つ (合計 84) あり、もう一方にはホールのないものを用いた。これらのファントムは
軟部組織の散乱をシミュレートするためにアクリル板で覆って使用した (図 1)。
Fig. 1 A depiction of the self-made step phantoms. (a) Front and
back of the aluminum step phantom with holes. (b) Front and back
of the aluminum step phantom with no holes. (c) Acrylic blocks
enclosing the aluminum step phantom. (d) Lateral view showing
an aluminum block placed in the acrylic box
口内法 X 線撮影装置、photostimulable phosphor プレート及びスキャナーシステムを使用して、さま
ざまな撮影線量 (0.43, 0.64, 0.86 mGy)と画質特性の異なる 3 種類の画像キャプチャモード (Hight
speed (HS), High resolution (HR), Super high resolution (SHR)) でファントム画像を取得した。これら
のファントム画像を ImageJ ソフトウェアの FindFoci プラグインを使用して、観察者を用いずに ROC
解析を行い、その結果と観察者の信号検出能の相関を調べた。まず、先行研究をもとに、取得画像
に FindFoci を適応させるための前処理を行なった。次に、前処理を行なったホールのあるファント
ム画像とホールのない画像に FindFoci を用いた信号検出を行い、TPR と FPR を計算した。さらに、
TPR を FPR に対してプロットすることで ROC 曲線を作成し、AUC を計算した。最後に、前処理を
行う前のホールのあるファントム画像を使用して、8 名の観察者が検出可能なホールの数を評価し
た。実際に存在するホール数に対して、検出されたホール数の割合を観察者の信号検出能 (TPRobs)
と定義し、AUC の間の相関を単回帰分析により評価した。
結果:AUC は、すべての画像キャプチャモードにおいて撮影線量の増加とともに増加した (図 2)。
HS モードと HR モードの両者において、0.43 と 0.86 mGy および 0.64 と 0.86 mGy の撮影線量の間
で AUC の統計的有意差が認められた。SHR モードでは、撮影線量の間に統計的有意差は認められ
なかった。各画像取得条件の AUC と TPRobs の相関係数は r = 0.76 であり、高い相関を示した (図
3)。
Fig. 2 Receiver operating characteristic (ROC) curves with different exposure dose and area under
curve (AUC) values. (a), (b), and (c) show ROC curves acquired within high -speed (HS),
high-resolution (HR), and super-high-resolution (SHR) imaging modes, respectively. Asterisks indicate
statistically significant differences in AUCs (p < 0.05)
Fig. 3 Relationship between the area under the curve (AUC) derived
from receiver operating characteristic (ROC) curves and true
positive rates from eight observers (TPRobss). The equations are
regression equations; the correlation coefficients were calculated
using simple regression analysis
結論:ROC 解析から得られた AUC 値はデジタル口内法 X 線画像の画質を示し、さらに観察者の信
号検出能を推定できる指標であった。CSN 解析を改良した ROC 解析から得られる AUC 値を用いる
ことで、観察者に代わってデジタル口内法 X 線画像の画質評価が可能であることが示唆された。