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大学・研究所にある論文を検索できる 「HIF Prolyl Hydroxylase Inhibitor's Effects on Skeletal Muscles」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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HIF Prolyl Hydroxylase Inhibitor's Effects on Skeletal Muscles

竹村, 浩至 東京大学 DOI:10.15083/0002005038

2022.06.22

概要

近年、慢性腎臓病(CKD)は増加の一途を辿っている。腎性貧血はCKDの重大な合併症であり、またCKD患者の生命予後やqualtily of life(QOL)に強く相関すると考えられている。CKD患者では腎臓におけるエリスロポエチン(EPO)の産生が低下することで腎性貧血をきたすが、その治療はEPO製剤および鉄の補充が主体であり、輸血を除く唯一の方法であると言っても過言ではない。しかしながら近年Hypoxia inducible factor (HIF) prolyl hydroxylase (PHD) systemを利用したPHD阻害薬と呼ばれる新規治療薬が開発されている。その1つであるroxadustatは透析の有無に関わらずCKD患者の腎性貧血治療において有効であることが示され、また日本でもすでに承認を受けている。

HIFはαサブユニットおよびβサブユニットからなるヘテロダイマーであり、そのαサブユニットの型に応じてHIF1-3の3種類のアイソフォームを有する。HIFは通常酸素分圧下ではPHDによる水酸化により速やかに分解されるが、低酸素条件下ではPHD活性が低下することで安定化し、その結果下流遺伝子の発現が促進される。Epo遺伝子の発現は主にHIF-2αによって制御されており、PHDの阻害によってHIF-2下流のEpo遺伝子発現が亢進する結果、エリスロポエチン産生の増加そして腎性貧血の改善に至る。

PHD阻害薬はその造血作用から世界アンチドーピング機構にエリスロポエチンなどと並び禁止薬物に指定されている。roxadustatは上市される前の2015年にすでにアスリートの尿検体から検出されておりドーピング薬剤としてすでに使用されているが、一方でPHD阻害薬が骨格筋や運動能力に与える影響については十分に明らかにはなっていない。

筋肉における酸素分圧は安静時PO2が27mmHg程度であるが、軽微な運動でも5mmHg以下まで低下すると言われ、HIF-PHDsystemはその低酸素応答に関与することが知られている。過去に、骨格筋局所でのPhd1ノックダウンマウスにおいて持久力が低下する、Phd2コンディショナルノックアウトマウスでは血中Hb値の上昇とともにランニングトレーニングによる持久力向上効果の上昇が見られる、また速筋から遅筋へのタイプシフトが見られるなど様々な報告がされている。

我々の研究は、PHD阻害薬が実際に骨格筋や運動能力に対していかなる影響を与えるかについて、in vitroおよびin vivo両方で検討を行った。

まずマウス骨格筋筋芽細胞であるC2C12細胞を用いて実験を行った。C2C12は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含む増殖培地において増殖させた後に2%horseserumを含む分化培地に培地変更することで、筋芽細胞(myoblast)から筋管細胞(myotube)へと分化する。成熟した筋管細胞に対して10μMのroxadustatを24時間投与した際の変化を検討したところ、HIF下流遺伝子の発現上昇を認めた。分化に関する指標に有意な変化を認めなかったが、エネルギー代謝において有意な変化を認めた。roxadustat投与によりGlut1遺伝子発現増加を伴う糖取り込みの亢進を認め、また培地中の乳酸濃度の上昇を認めた。あわせて細胞外フラックスアナライザーによる代謝解析を行ったところ、解糖系の亢進およびミトコンドリア呼吸の抑制を認めたが、レンチウィルス粒子を用いたshRNA導入によりHIF-1αをノックダウンしたところそれらの変化が消失したことから、それらがHIF-1依存的な変化であることが示唆された。同時にミトコンドリアDNAコピー数の減少やミトコンドリア分裂の促進を認めた。

続いて8週齢メスのC57BL6/Jマウスに対してroxadustatを胃管から経口投与する実験を行った。単回投与後(30mg/kg)には、血漿中EPO濃度はコントロール群に比して高値を示し、また肝臓・腎臓でHIF下流遺伝子の発現が増加したのに加え、骨格筋においてもHIF-1蛋白の安定化およびHIF下流遺伝子の発現亢進の結果が得られた。roxadustat単回投与では血中Hb値の上昇は見られず、またトレッドミルによる持久力測定にも変化を認めなかったが、週3回・5週間の長期投与では、血中Hb値の上昇を伴ったトレッドミル走行による持久力測定結果の改善を認めた。また筋重量の変化は認めなかったものの腓腹筋における遅筋割合の増加を認めた。一方で、瀉血および同量の細胞外液補充による血液希釈を行ったところ、持久力の上昇効果は消失した。この結果から、roxadustat長期投与による持久力上昇効果は主に造血作用に起因していると判断された。またroxadustat投与による代謝変化を観察したところ、単回投与の空腹時血糖の推移は投与3時間後に投与群でコントロール群に比して血糖低値を示した。長期投与マウスにおいては随時血糖および乳酸値を測定したが、有意差は認めなかった。

本実験によって、腎性貧血に対する新規治療薬であるPHD阻害薬の1つであるroxadustatは、骨格筋細胞において酸化的リン酸化から解糖系へのシフトを誘導し、またその造血作用によりマウスのトレッドミル走行の持久力を改善させることが示された。

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