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大学・研究所にある論文を検索できる 「全天球カメラ映像を用いた3次元地図の作成手法」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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全天球カメラ映像を用いた3次元地図の作成手法

加藤 裕也 早稲田大学

2021.03.15

概要

1.1 研究背景
近年,自動運転に関する技術が注目を浴びている.特に自動車の自動運転は官民 ITS 構想・ロードマップ 2020[1]において 2025 年度を目途に高速道路でのレベル 4 の自動運転システムの実現が明記されるなど,官民を挙げて活発な研究開発が進められている.また,自動車だけでなくロボットの制御にも自動運転技術が活用されている.例えば,一度掃除した箇所を避けて掃除するインテリジェントな自動掃除ロボットや,アクセスするのが難しい橋梁などの点検に用いられるドローン,災害現場で作業にあたる支援ロボットなど,身近な環境での IoT 社会の実現や,活動が困難な場所での労働力の代替手段として自動車やロボットの自動運転技術の研究がますます盛んになっていくことが予想される.
自動運転において重要な技術は自己位置推定と環境地図の作成の二つである.自己位置推定とは距離センサや GPS といった計測機器を用いて周辺環境を計測し,ロボットが環境内においてどの位置に存在するかを推定する技術である.一方,環境地図の作成は計測した周辺環境のデータを計算機内に地図として落とし込み,ロボット周辺の実際の地図との整合性を取りながら既に取り込んでいる地図の拡大を行う技術である.これら二つの技術を同時に行う技術としてSimultaneous Localization and Mapping (SLAM)がある.SLAM は自己位置推定と環境地図の作成を繰り返すことで,既に取り込んだ地図だけでなく地図上にない新しい領域でも利用することが可能であり,周辺環境が変化しやすい道路や屋内空間における自動運転にとって重要な技術である.また,SLAM は計測に用いるセンサによって分類され,レーザーセンサを使用するLiDAR SLAM やカメラ映像を利用するVisual SLAM 等が代表的なものとして挙げられる.これらの中でも特に 1 台のカメラのみを用いて行う単眼カメラによるVisual SLAM が計測機器の重量や費用の観点から注目されている.
自動運転技術が注目される理由として,特にロボットに労働を代替させる際に必要不可欠な技術であることが挙げられる.計測機器がカメラである Visual SLAM を利用することで自動運転のための自己位置推定が可能なだけでなく,取得した映像を解析することでインフラ設備の点検作業に用いることも可能である.カメラを搭載したロボットを活用することで,作業員一人当たりが受け持つ点検個所を増加させることも可能である.特に近年の日本の抱える課題として点検作業の効率化が挙げられる.国土交通省のインフラ⾧寿命化とデータ利活用に向けた取組[2]によると建築後 50 年以上経過し点検が必要な設備の増加が続き,迅速な点検および修繕を行うことが社会インフラの維持や安全な交通網を安定化させるために強く求められている.一方,増加し続ける点検箇所とは対照的に点検作業員は減少している.点検作業には作業員の技術力が求められ容易に増員することが困難であるだけでなく,少子高齢化により労働人口が減少していく社会において作業員の確保がますます困難になっていくことが予想される.
点検作業を効率化する手段としてロボットによる点検作業の自動化が挙げられる.点検作業を自動化することで点検時間の短縮や点検箇所の増加,作業員の安全性の確保が可能になる.ドローンや自動車に取り付けたセンサから得られたデータを機械で解析することにより大量のデータを一度に処理することが可能となり点検時間の短縮と点検箇所の増加を実現することができる.また,点検個所は高圧電線の付近や高所といった危険な場所で行われることも多いが,作業をロボットに代替することにより作業員の安全を確保することもできる.一方,課題としてロボットに搭載できる計測装置の重量が限られることが挙げられる.そのため,一つのセンサで広範囲のデータを取得することが求められる.画像処理技術の発達によりカメラ映像を用いて解析を行うケースが増えているが,なかでも全天球カメラと呼ばれる一度に周囲 360 度の映像を撮影できるカメラを用いた点検装置の開発が期待されている.
そこで,本論文では全天球カメラ映像を画像変換することにより単眼 SLAM への適用を可能とする手法について検討する.まず,全天球カメラで撮影した映像にキューブマッピングを行い分割し,それぞれの映像を連結させることにより一つの映像から周囲 360 度を計測することを可能とする.さらに,マーカーを用いて LiDAR で計測した点群との比較実験により本手法の評価を行う.

1.2 研究目的
単眼 SLAM は代表的なものとして ORB-SLAM[3]や LSD-SLAM[4]が挙げられるが,これらは一般的なカメラ映像に対応したものである.画角の広い魚眼カメラに対応した SLAM として ORB-SLAM や DSO[5]があるが,これらも全天球カメラ映像に対して使用することはできない.全天球カメラ映像を使用することが可能な SLAM として OpenVSLAM[6]があるが, 360 度全体の映像を使用するため特定の位置に計測者が映り込んでしまうと計測に失敗する場合がある.屋内環境の計測や点検を行うにあたり,カメラをロボットに搭載する場合と人間が手にもって撮影する場合があり,周辺の環境に合わせて使い分けられることが望ましいと考えられる.そのため,本論文では全天球カメラ映像を分割して利用することにより特定の位置に計測者が映り込んでいる場合,その領域を使用せずに計測可能な手法を提案する.また,一度の計測で広範囲の点群をより多く取得することが可能でカメラの動きに対して頑健な手法の確立を目指す.
本研究の提案手法を実現することで様々な環境の3次元データを点群として取得することが可能となる.

1.3 本論文の構成
以下に本章以降の構成を示す.
第 1 章は本章であり,本論文の研究の背景および目的について述べている.全天球カメラ映像と Visual SLAM を組み合わせることで1本の映像から広範囲の点群を精度良く取得することを目的とする.
第 2 章では, 関連技術について述べる. 本研究で用いる技術として SLAM について説明し,使用する計測機器として全天球カメラと LiDAR について述べる.SLAM に関してはVisual SLAM の代表的な手法であるLSD-SLAM と ORB-SLAM について述べる.
第 3 章では, 予備実験について述べる.使用するSLAM の手法の決定や評価手法の決定のための予備実験を行った.使用する SLAM を決定するために ORB-SLAM と LSD-SLAM の比較実験について述べ,使用するカメラモデルの決定のためにカメラモデルの比較実験について述べる.また,ループ閉じ込みと特徴点に関する実験について述べる.最後に評価実験に用いるLiDAR の反射強度の実験について述べる.
第 4 章では, 本論文で提案する手法について述べる.提案手法では全天球カメラ映像にキューブマッピングを施し取得した映像を連結させ1本の映像に編集したうえで ORB-SLAMに入力し点群を取得する.また,提案手法の利点と課題について述べる.
第 5 章では, 評価実験について述べる.評価実験では提案手法とキューブマッピングにより取得した映像をそのまま入力した手法および全天球カメラ映像を魚眼モデルの ORB-SLAM に入力した手法の3種について比較実験を行った.
第 6 章では, 本論文の結論と考察および今後の課題について述べる.

この論文で使われている画像

参考文献

[1] 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・ 官民データ活用推進戦略会議,”官民 ITS 構 想 ・ ロ ー ド マ ッ プ 2020” ( 最 終 検 索 日 : 2 0 2 1 年 1 月 2 1 日 ) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20200715/2020_roadmap.pdf

[2] 国土交通省,”インフラ⾧寿命化とデータ利活用に向けた取組”(最終検索日:202 1年1月21日) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/sankankyougikai/infrastr ucture/dai1/siryou2.pdf

[3] R. Mur-Artal, J. M. M. Montiel, J. D. Tardos, "ORB-SLAM: A versatile and accurate monocular SLAM system", IEEE Trans. Robot., vol. 31, no. 5, pp. 1147-1163, Aug. 2015.

[4] J. Engel, T. Schöps, and D. Cremers, “LSD-SLAM: Large-Scale Direct Monocular SLAM,” European Conference on Computer Vision (ECCV), Zurich, Switzerland, pp. 834-849, Sep. 2014.

[5] D. Caruso, J. Engel, and D. Cremers, “Large-Scale Direct SLAM for Omnidirectional Cameras,”. International Conference on Intelligent Robot Systems (IROS), Hamburg, Germany, pp. 141-148, Oct. 2015.

[6] Shinya Sumikura, Mikiya Shibuya, and Ken Sakurada. “OpenVSLAM: a Versatile Visual SLAM Framework,” 2019.

[7] 株式会社RICOH,”RICOH THETA (型番:RICOH THETA m15)が YouTube に対応しました.” (最終検索日:2021年1月21日) https://topics.theta360.com/ja/news/2015-03-16-2/

[8] 株式会社RICOH,”RICOH THETA V”(最終検索日:2021年1月21日) https://theta360.com/ja/about/theta/v.html

[9] 加藤裕也: ” LSD-SLAM を用いた全天球カメラ映像からの 3 次元再構成 (3D Reconstruction from Omnidirectional Video Using LSD-SLAM )”, 卒業論文 Feb. 2019

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