Improved visualization of the chorda tympani nerve using ultra-high-resolution computed tomography
概要
〔目的(Purpose)〕
鼓索神経は顔面神経の分枝であり側頭骨内を走行する。したがって、中耳の手術や側頭骨の骨折などにより損傷をきたすことがあり、これらの予防や評価のため鼓索神経の解剖学的な走行を認識することが重要である。
しかしながら、鼓索神経は微細な構造ゆえ従来の高分解能CT(C-HRCT)においてはその描出は不十分と報告されている。近年、従来の高分解能CTよりもさらに高分解能である商精細CT(U-HRCT)が臨床的に利用可能となり、U-HRCTにおいては鼓索神経の描出能向上が期待される。本研究の目的は、C-HRCTとU-HRCTにおける鼓索神経の視覚化程度を比較することである。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
2018年1月から2019年12月の間に側頭骨CTをU-HRCTで撮影した450人を抽出。うち、5年以内にC-HRCTを撮影していた群を抽出し、画像の厚みが0. 625mmより大きいものや両側とも異常所見や術歴があるものは除外。最終的に54人の59の正常側頭骨のCT画像を取得した。
U-HRCTは0. 25mmの厚みで1024X1024のマトリックスサイズで左右別々に120mmのFOVで画像再構成。C-HRCTは0. 50もしくは0.625mmの厚みで512X512のマトリックスサイズで左右別々に120mmのFOVで画像再構成。
画像の評価は二人の神経放射線科医がそれぞれ個別に行った。まず鼓索神経をposterior canaliculus, tympanic segment, and anterior canaliculusの3つの部位に分割し、それぞれの部分の視覚化程度を4段階評価で行った。また、被爆量の比較のため、それぞれの撮影のCTDIvolを記録した。
統計解析は鼓索神経の視覚化スコアはウィルコクソンの符号順位検定、CTDIvolの比較は対応のあるt検定で行った。評価結果は、C-HRCTの視覚化スコアはposterior canaliculus, tympanic segment, and anterior canaliculusでそれぞれ、3,5 ± 0.7,1.6 ± 0.6,3.1 ± 0. 7 であったのに対して、U-HRCT では 3. 9 ± 0. 2, 2. 4 ± 0. 6, 3. 5 ± 0. 6 であり、いずれの部位でもU-HRCTのスコアが有意に高かった(P < 0. 01)。スコアの上昇はtympanic segmentで最も高かったが、anterior canaliculus や posterior canaliculusに比較してtympanic segmentのスコアはC-HRCTやU-HRCTいずれも最も低かった。 CTDIvolはC-HRCTで45. 7 ±11.8mGyであり、U-HRCTでは46. 3 ±2.0 mGyで有意差はなかった。
〔総括(Conclusion)〕
高精細CTは鼓索神経、特にtympanic segmentの描出能を向上する。