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大学・研究所にある論文を検索できる 「Chemical and elastic properties of Al-bearing anhydrous bridgmanites」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Chemical and elastic properties of Al-bearing anhydrous bridgmanites

野田 昌道 広島大学

2022.03.23

概要

本論文は、実験的手法を用いて明らかにしたA1を含む無水ブリッジマナイトの化学的及び弾性的特性についての研究成果を取りまとめたものであり、5章からなっている。各章の概要は次のとおりである。

 1章では、序論として研究背景および目的について述べた。現在、地球深部についてまだ多くの疑問が残されている。例えば、地球を構成する岩石の詳細な比率、バルク組成や鉱物構成比ついて岩石学的、地球化学的及び地球物理学的見解に共通の理解は得られていない。それは地球内部の岩石を任意の深さから採取することができず、限られた条件の局所的な試料の分析結果しか得ることができないことに起因する。このような状況の中で、地震波や電気伝導度などの観測結果と室内実験結果を比較し、未解明問題について制約する方法は地球の内部構造や進化過程を明らかにする上で重要な研究手法の1つだと考えられる。研究対象であるブリッジマナイトは、全地球の約55vol.%を占める下部マントル領域(深さ660km-2900km)の主要構成鉱物であり、地球上で最も豊富な鉱物だと考えられている。したがって、ブリッジマナイトの化学的特性や弾性的特性を解明することは地球科学的分野の最優先課題の1つだと考えられる。地球を構成する主要元素のうち5番目に多いA1は下部マントル領域においてほとんどブリッジマナイトに置換し、その結果、弾性率の減少や含水化させる可能性が報告されている。ブリッジマナイト中へのA1置換様式は異なる3種類が考えられ複雑である。本研究では、その中で無水条件下での置換様式の解明に焦点をあて、A1の置換様式による化学的及び弾性的特性の相違の解明を目指し、研究課題を挙げた。

 2章では、A1を含む無水ブリッジマナイトの化学的特性について得られた成果をまとめた。現在、A1を含む無水ブリッジマナイトはチヱルマック置換型と酸素欠損置換型の2種類の置換様式が報告されている。先行研究で報告されているチヱルマック置換型ブリッジマナイトの化学組成を注意深く観察すると、純粋なチヱルマック置換型ブリッジマナイトはほとんど報告されておらず、A10.05pfu未満(0=3,以下省略)の領域で純粋なチェルマック置換型ブリッジマナイトが存在可能か不明であった。一方、先行研究で単一な酸素欠損置換型ブリッジマナイトの報告はなく、A1量と酸素欠損成分の関係について矛盾する研究報告があり詳細は不明であった。特に前者について、単一な酸素欠損型ブリッジマナイトはA10.05pfu未満の領域で存在する可能性が指摘されており、その領域でチェルマック置換と酸素欠損置換のどちらが好まれるのか不明であった。そのため、下部マントル最上部条件(28GPa,1700°C)において限りなく無水条件で A10.05pfu未満の領域において純粋なチヱルマック置換型及び酸素欠損置換型ブリッジマナイトが存在可能か、A1量と酸素欠損成分の関係を明らかにするため高温高圧急冷回収実験を行い、回収試料の化学組成を調べた。その結果、A1を含む無水ブリッジマナイトの存在可能領域が明らかとなり、下部マントル最上部でのブリッジマナイトの化学組成について考察を行った。

 3章では、採用した弾性波速度測定法に固有な補正項について検討し、得られた成果をまとめた。A1を含む無水ブリッジマナイトの弾性的特性を調べるため、その場X線観察技術と超音波干渉法、川井型マルチアンビル高圧発生装置と組み合わせた弾性波速度測定法を採用した。同方法は、圧力・温度条件ごとにX線ラジオグラフィーを用いて試料長を求め、超音波干渉法を用いて超音波が試料内を往復するtravel timeを測定し、(長さ)-(時間)の関係から対象試料の弾性波速度を算出する。対象試料がケイ酸塩鉱物の場合、試料の片側もしくは両端にAuなどのボンド材を挟み境界を明瞭にする必要があるが、ボンド材はtravel timeを測定する際に悪影響を及ぼすことが分かっている。特に、試料が短いほどその影響が大きくなり補正は必須となるが、従来の補正法には2つの問題点があった。1つ目は、試料の片側にボンド材を挟む補正式しかなく、試料の両側にボンド材を使用していても片側タイプの補正式を流用していた点。2つ目は、補正量の計算に用いる各材料の音響インピーダンスが高温高圧下であっても常温データを使用していた点。そのため、新たな補正式を構築し、出版されたデータと高温高圧条件下のAuの新たな弾性定数を用いてボンド補正量の圧力及び温度依存性、試料長とボンド補正量の関係を調べた。その結果、試料長が1mm以下ではボンド補正が必須であることを示し、圧力及び温度条件ごとの音響インピーダンスを適用する重要性を明らかにした。

 4章では、A1を含む無水ブリッジマナイトの弾性的特性について得られた成果をまとめた。先行研究で報告されているA1を含むブリッジマナイトの弾性波速度測定結果は、ブリュアン散乱法を用いた結果のみで、高温高圧条件下ではs波速度しか報告されていなかった。しかしながら、ブリッジマナイトにAl0.lpfu置換することで10%以上体積弾性率が減少するという研究報告があり、高温高圧条件におけるP波速度の測定が待ち望まれていた。一方、2章の研究を進める過程で、直径及び高さがそれぞれ2mm程度の大型でかつクラックのない純粋なチヱルマック置換型及び酸素欠損置換型ブリッジマナイトを合成することが可能となった。同試料は透光性が高く、透過型電子顕微鏡観察により300nm程度のナノ多結晶体であることが分かった。この大型試料を用いることで高温高圧条件下においてP波及びS波速度同時測定が可能な弾性波速度測定法を適用することが可能となった。よって、A1を含む無水ブリッジマナイトの高温高圧条件において弾性波速度を測定し、A1の置換様式と弾性波速度の関係、A1量と弾性波速度の関係を調べた。その結果、Alfreeタイプ、チェルマック置換型、酸素欠損置換型ブリッジマナイトの順で弾性波速度が遅くなり、またA1量が多いほど弾性波速度が遅くなることを定量的に明らかにし、弾性率の変化及び地球科学的な観点から考察を行った。

 5章では、結論として本論文で得られた知見を簡潔にまとめ、展望についても言及した。

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