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大学・研究所にある論文を検索できる 「斑晶化学組成からの安山岩成因の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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斑晶化学組成からの安山岩成因の解明

岡田 郁生 広島大学

2022.03.23

概要

沈み込み帯のマグマ活動の理解は,マグマや大陸地殻の発生・進化過程を解明する上で重要である.沈み込み帯では玄武岩質から流紋岩質の多様なマグマ活動が見られるが,その中でも安山岩マグマが卓越する.従って,安山岩マグマの成因を明らかにすることは沈み込み帯のマグマ活動を理解する上で必要不可欠である.しかしながら,安山岩マグマはマグマ混合や地殻物質の同化などの複雑なプロセスによって生成されると考えられており,これら複雑なプロセスによって,ある時点でのマグマの物理化学的特徴は次のマグマプロセスによって上書きされ変化する.この変化の蓄積が安山岩マグマの生成過程を詳細に観察することを困難にさせ,それ故安山岩マグマの成因は未だ不明な点が多い.本研究では,晶出したときのマグマ(正確には,マグマの液体部分であるメルト)の物理化学的特徴を保持している,火山噴出物中の斑晶鉱物の主要元素・微量元素組成を解析し,安山岩マグマの生成過程をより詳細に観察する方法を探ることを目的とする.本研究は,九州北東部に位置する第四紀由布火山の安山岩中の角閃石を対象とし,それらの主要元素組成を電子線マイクロアナライザーで,微量元素組成をレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量計(LA-ICP-MS)で分析した.

由布火山の安山岩中の角閃石は,主要元素組成からSiに乏しいものとSiに富むものの2つのグループに分けられた.近年,高温高圧実験の結果の多変量解析に基づいて,角閃石単相の主要元素組成から,晶出温度圧力条件および平衡共存メルトの主要元素組成,さらには,角閃石‐メルト間の微量元素の分配係数を推定する方法((Ridolfi and Renzulli 2012; Putirka 2016; Zhang et al., 2017; Shimizu et al., 2017; Humpherys et al., 2019)が提案されている.本研究はこれらの研究を統合し,由布火山の安山岩中の角閃石の晶出圧力温度条件,平衡共存メルトの主要元素組成,角閃石‐メルト間の微量元素の分配係数を推定した.さらに,推定した角閃石‐メルト間の分配係数を角閃石の微量元素組成の分析結果に適用することで,平衡共存メルトの微量元素組成も推定した.推定結果から,2つのグループはそれぞれ,異なる物理化学的特徴を持つメルトから晶出したことが明らかになった.さらに,推定した温度圧力条件およびメルト組成の解析や全岩組成などとの比較から,安山岩マグマは,Siに富む角閃石が晶出した珪長質マグマ(深度3–8km),Siに乏しい角閃石が晶出した苦鉄質マグマ(深度13–25km),玄武岩質マグマ(深度34km)の混合によって生成されたと考えられる.本研究では,角閃石の主要元素・微量元素組成を用いて,安山岩マグマの生成過程のある時点でのメルトの温度,圧力,主要元素組成,微量元素組成を系統的にかつ定量的に推定できることを示した.

マグマは,鉱物とメルトの混合物である.この視点に基づいて,推定したメルト組成と由布火山の安山岩の主要な造岩鉱物である斜長石および角閃石の化学組成を結ぶ混合線から,2つのグループの角閃石が晶出したマグマ(苦鉄質端成分と珪長質端成分)の取り得る組成を制約した.さらに,これらの結果と全岩組成の線形回帰線を組み合わせることで,マグマ混合の苦鉄質端成分(SiO2≈45wt.%)と珪長質端成分(SiO2≈69wt.%)の化学組成を演繹的に決定した.これまで,マグマ混合の端成分マグマは帰納的に決定されてきた.これに対して本研究では、マグマ混合の端成分マグマの化学組成を演繹的に決定することに初めて成功した.さらに,この手法が発展すれば,これまで困難であった,マグマ混合の端成分マグマの起源や進化過程とともに,安山岩マグマが生成していく過程を議論することが可能となり,沈み込み帯のマグマ活動の理解が大きく進むと期待される.

また,本研究では,斑晶鉱物の微量元素組成を分析するために,LA-ICP-MSによる局所微量元素組成分析法も確立した.レーザーの周波数,エネルギー強度,Heガスの流量,各微量元素の濃度の標準試料として用いる,米国国立標準技術研究所(NIST; National Institute of Standards and Technology)の標準ガラス試料NIST610の濃度を検討した.その結果,精度良く分析できるレーザー条件として,周波数を10Hz,標準ガラス試料NIST610とNSIT612に照射させるエネルギー強度をそれぞれ60%と64%に設定した.また,Heガスの流量および標準ガラス試料NIST610の濃度には,それぞれ,0.26L/minおよびJochum et al.(2011)の文献値を用いることにした.さらに,角閃石と単斜輝石について,再現性がより高くなるレーザー条件を決定した.

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