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大学・研究所にある論文を検索できる 「Bordetella Dermonecrotic Toxin Is a Neurotropic Virulence Factor That Uses CaV3.1 as the Cell Surface Receptor」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Bordetella Dermonecrotic Toxin Is a Neurotropic Virulence Factor That Uses CaV3.1 as the Cell Surface Receptor

照屋, 志帆乃 大阪大学

2020.04.30

概要

〔目的(Purpose)〕
 百日咳はボルデテラ属細菌の百日咳菌によって起こり、特徴的なけいれん性の咳発作に加えて肺炎や脳症を併発する場合もある急性呼吸器感染症である。本菌の主要病原因子である壊死毒素(dermonecrotic toxin:DNT)は宿主細胞の低分子量GTP結合タンパク質Rhoを活性化するが、病態との関連は不明である。DNTに感受性を示す培養細胞は極めて限られており、DNT受容体は宿主内で特定の組織に遍在し特異的な機能を担う分子であることが予想された。そこで本研究ではDNT受容体同定を通じてDNTの潜在的な標的組織を明らかにし、その知見から百日咳病態におけるDNTの役割を解明することを目指した。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
1. DNT-DTAとCRISPR/Cas9システムを用いたDNT受容体遺伝子スクリーニング
 受容体遺伝子スクリーニングのために、DNTの受容体結合ドメインとジフテリア毒素の活性ドメイン(DTA)を融合させ、DNT受容体を発現する細胞を選択的に死滅させるタンパク質DNT-DTAを作製した。CRISPR/Cas9システムを利川してDNT感受性細胞に網羅的な変異を導入し、その中からDNT-DTA耐性となった細胞に導入されたsgRNA配列を解析し受容体候補遺伝子を選んだ。候補遺伝子のうち、Cacna1g:欠損させるとDNT感受性が失われた。
2. 受容体候補遺伝子Cacnalgの解析
 Cacnalgは電位依存T型カルシウムチャネル(Cav3.1)をコードする遺伝子である。Cacnalg欠失DNT感受性細胞もしくはDNT非感受性細胞にCacnalgを導入したところDNT感受性が現れたため、CacnalgはDNTの毒素作用に必須の遺伝子であることが明らかになった。また、Cacnalg過剰発現細胞とDNTを反応させて免疫沈降を行ったところ、抗DNT抗体の存在下でDNTとCav3.1は共沈した。加えてCav3.1のリガンドであるProTx-IによってDNT-DTAによる細胞死が競合阻害を受けることもわかった。これらの結果からCav3.1とDNTは少なくとも細胞表面上で相互作用していることが示され、Cav3.1がDNT受容体だと結論づけた。
3. 神経系の細胞におけるDNT感受性
 Cacnalgは特に脳で強く発現していることが報告されている。そこで、神経系への分化能を持つ細胞のDNT感受性を検討したところ、分化/未分化を問わず感受性を示した。神経系の細胞がDNTに対して感受性を示すことが明らかになったことで、百日咳においてDNTがこれらの細胞を標的に神経性の病態を形成する可能性が示された。
4. DNTと百日咳脳症
 百日咳における神経性病態の1つに脳症が挙げられる。百日咳脳症とDNTの関連を明らかにするため、DNTをマウスの脳室内に接種したところ、尾の脱力や後脚の麻痺が観察された。このような神経症状は百日咳菌の他主要病原因子である百日咳毒素とアデニル酸シクラーゼ毒素、DNTのRho活性能を持たない変異体DNTC1305Aの接種では惹起されなかったため、DNT特異的かつ毒素作用であるRho活性化を介するものであることが示された。また、DNT接種マウスにおいて百日咳脳症の臨床報告と同様に、脱髄や炎症の指標となる脳脊髄液中のミエリン塩基性タンパク質とIL-6の濃度上昇がみられた。一方でDNTは菌体外への排出機構がないことから、これまで病態への関与が疑問視されてきた。しかし、百日咳脳症臨床報告6例中4例で使用されていたβラクタム系抗生剤の存在下で百日咳菌を培養すると、培養上清中に活性を保ったDNTが検出された。百日咳治療の第一選択薬であるマクロライド系抗生剤ではDNT放出は観察されなかった。

〔総括(Conclusion)〕
 DNT受容体同定のために、DNT感受性細胞を高効率に検出できる系を作製し、CRISPR/Cas9システムを用いて受容体遺伝子のスクリーニングを行った。その結果電位依存T型カルシウムチャネルCav3.1をコードする遺伝子Cacnalgを受容体遺伝子だと結論づけた。また、Cacnalgが特に脳で強く発現していることに着目し、DNTが神経系の細胞に作用すること、加えて、マウスの脳室内にDNTを接種することによって百日咳脳症に近い症状を誘導できることを見出した。百日咳脳症の詳細なメカニズムを明らかにするには今後も検討が必要であるものの、本研究により、DNTがCav3.1を受容体として神経系の細胞を標的にし、脳症の原因因子となり得ることが示された。

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