The practice of active patient involvement in rare disease research using ICT : Experiences and lessons from the RUDY JAPAN project
概要
〔目的(Purpose)〕
医学研究における患者の役割は近年大きく変化してきており、今後益々重要なものになると考えられている。医学研究のプロセスに患者が関与すること(患者参画)で、研究を患者のニーズに合致したより価値の高い研究を行うことが可能となる。また、惜報通信技術は、患者が研究に積極的に関与するための新たな機会を提供することで、この患者参画を促進することが期待されている。このような傾向および実践例は欧米では特に顕著であるが、日本ではほとんど見られておらず、日本で患者参画や患者と研究者のパートナーシップの構築が可能であるかは明らがではなかった。そこで我々は、デジタルプラットフォームを活用した日本における医学研究への患者参画の実践を行い、その結果を調査•分析することで、具体的にどのようなアプローチが有効なのかを明らかにすることを目的として研究を行った。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
方法:英国のRare and Undiagnosed Diseases Study(RUDY)システムをもとにして、稀少疾患を対象とした医学研究プラットフォームRUDY JAPANを開発した。2年間の準備期間を経て、2017年12月にRUDY JAPANが公開された。当初は骨格筋チャネル病のみを対象疾患としていたが、その後、遺伝性血管性浮腫が追加された。患者参画のための具体的なアプローチとして、①患者と研究者がプロジェクトの方向性や運営について定期的に話し合うための「運営ミーティング」、②遺伝性血管性浮腫の腫脹発作に関する探索的調査のための新たな質問票の作成、③ダイナミックコンセン卜の実装、④様々なコミュニケーションチャンネルの採用、等に取組んだ。各アプローチがプロジェクトにもたらし た効果を中心に、この実践と経験を分析した。
結果:最も初期のコンセプト化やシステム開発は研究者の主導で行われたが、プロジェクトが進むにつれ研究の様々なプロセスや側面における患者参画が徐々に実現した。運営ミーティングは2017年11月〜2020年4月に計13回が開催され、患者11名、研究者8名が1回以上の会議に参加し、参加した患者の意見が運営やプラットフォーム設計の変更に繋がった。新たな質問票の作成においては、患者と研究者が議論を重ねることで、患者の視点を反映した質問票が作成されるとともに、対話の中から新たな項目も作られた。これらのアプローチにおいて、患者は研究プロセスにおいて重要な役割を担うことができた。ダイナミックコンセントで示された希望に基づいた連絡手段を用い、様々なコミュ ニケーションチャンネルを採用することで、患者と研究者の対話が促進され、対話を通して研究プロセスが改善した。
〔総括(Conclusion)〕
本研究によって、日本においても患者参画が実践可能であることが示された。患者参画の実践を通して、実践のための課題や示唆を得ることができた。患者と研究者が協働することで、単独ではなし得ない両者の視点を取り込んだ新しい実践が実現できることが明らかとなった。情報通信技術によって継続的な対話の場を持っことが可能になり、パ ートナーシップや信頼関係の構築に寄与することが示唆された。