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An X-ray Survey of the Most Energetic Stellar Flares

佐々木 亮 中央大学

2021.10.28

概要

研究背景
太陽フレアは、太陽表⾯で発⽣する突発的な爆発現象である。これは蓄えられた磁場のエネルギーが解放される、磁気リコネクションによって発⽣すると考えられている。太陽以外の恒星のフレアの発⽣機構も、同様と考えられている[1]。磁気リコネクションによって加速粒⼦が⽣成され、それらが星表⾯の彩層に衝突することで運動エネルギーが彩層に渡され、熱化される。これによって彩層のガス圧が増幅されることで、彩層蒸発と呼ばれる数億度を超える⾼温⾼密のプラズマの上昇流を作り出す。これらが磁⼒線内を満たすことで、熱的制動放射による X 線放射が観測される。

他恒星でもフレアが検出されている。太陽及び恒星のフレアは、規模が⼤きければ⼤きいほど、発⽣頻度が冪乗で低くなるため、検出が難しい。また、超巨⼤フレアでは、それを発⽣させる星と同じ体積程度のプラズマが瞬時に作られることが知られ、その温度は 1 億度以上にものぼる。このような超⾼温⼤規模フレアがどのような機構で発⽣するか、またそのプラズマの形状はどのようになっているかという点は、観測において空間分解ができない恒星フレアでは未解明である。

様々な規模のエネルギーの恒星フレアが発⾒される中、全天 X 線監視装置 MAXI が検出するフレア群は、エネルギーが 1034 - 1039 erg と、最⼤級の太陽フレアエネルギー (1032 erg)を最⼤で 1,000 万倍上回る。MAXI は国際宇宙ステーションに(ISS)に搭載され、その地球周回(92 分)に合わせて全天を X 線でスキャンする。そのため、発⽣頻度が低く通常の望遠鏡では検出が困難であった⼤規模な恒星フレアの検出に⻑けている。過去に MAXI が検出してきたフレアは、X 線光度、継続時間、温度、エミッションメジャー(EM)でフレア観測史上最⼤規模を⽰す[2]。坪井⽒らの MAXI の初期 2 年のデータを使⽤した恒星フレアの研究によって、以前から柴⽥⽒らなどによって指摘されていた太陽から恒星フレアまで成り⽴つ EM vs. kT[1] が MAXI の巨⼤フレア群まで成り⽴つことが明らかになった[2]。更に坪井⽒らによって、フレア光度と継続時間の間にも太陽から MAXI フレアまで成り⽴つ正の相関が新たに発⾒され、フレアの発⽣から減衰までのメカニズムに普遍的な機構があることが⽰唆されている[2]。巨⼤フレアの発⽣頻度の低さから MAXI 以外でのそれらの検出は困難であるが、MAXI の X 線感度では詳細な時間発展スペクトルが得られないため、詳細な冷却機構の解明には⾄っていない。そこで、MAXI で検出したフレアを他観測機でフォローアップ観測することによって、冷却機構及びその形状に⾔及できるのではないかと考えた。他⽅で、急激に明るくなり、緩やかに減衰していく恒星フレアの X 線光度の時間変動において、 MAXI 以外の観測装置では、限られた観測時間とその発⽣予測の困難さ、変動のタイムスケール の⻑さから、フレア光度曲線を⽴ち上がりから減衰しきるまでの光度変動の全容をえることが難しい。この時間変化は、フレアプラズマの時間発展を⽰していると考えられることから、MAXI を⽤いることで未解明の巨⼤恒星フレアの形状を明らかにできるのではないかと考えた。

本研究では、フレアの光度変動に注⽬し、恒星フレアの幾何を明らかにすることを⽬的とする。さらに、MAXI 以外で観測することが難しい観測史上最⼤規模のフレアを狙ったフォローアップ観測を⾏い、未解明の詳細なプラズマの冷却過程を明らかにすることを⽬的とする。

研究⼿法と結果
MAXI の過去 10 年間(2009 年 8 ⽉ 15 ⽇-2019 年 8 ⽉ 14 ⽇)のデータからフレア調査を⾏なった。フレア調査には 2 ⼿法を採⽤した。1 つは宇宙全天から⾃動で突発現象を検出する”nova-alert system”[3]である。本システムは⽇本⼤学の根來⽒らによって開発され、全天画像を ISS の 1 軌道から 4 ⽇の 8 タイプで積分し、カウント数をバックグラウンドとその天体の過去の明るさと⽐較して突発現象を抽出するものである。これによって抽出された恒星フレアの候補現象に対して、私が画像を作成して、その検出の有意性を検証した。本検証では、バックグラウンドのカウントのゆらぎ(σ)に対して 5σ以上増光しているものを本物のフレアと認めることとした。これにより 28 天体から 100 発を超えるフレアが検出された。加えて、これら 28 天体から更にフレアを発⾒するために、天体毎に ISS の 1 周期 bin の 10 年間の光度曲線を私が作成し、そこから⽬視で突発的に増光するデータをフレア候補として⾃ら抽出した。その後、前述の画像を⽤いた有意度の判定を⾏った。この追加調査の結果、nova-alert system と合計で 28 天体から 200 発以上のフレアを発⾒した。

これらのフレア全ての光度曲線とピークスペクトルの解析を私が⾏った。光度曲線は基本的には線形増加の後指数関数的に減少するバーストモデルでフィッティングをした。フレアピーク前のデータが⽋損しているものは指数関数のみでフィッティングを⾏った。以上の光度曲線による解析から、⽴ち上がり時間(線形 fitting の始まりから終わりまで)と減衰時間( e-folding time)を私が⾒積もった。他⽅で、ピークスペクトルの解析では光学的に薄いプラズマの熱的制動放射モデル(apec)を⽤いて、ピークの温度(kT)とエミッションメジャー(EM : 放射量度)、X 線光度(LX )を私が⾒積もった。得られたパラメータ群は、坪井⽒らによって確認された EM vs. kT、 LX vs. e-folding time の間にある太陽フレアから続く普遍的な相関[2]とよく⼀致した。これにより、過去最⼤規模のフレア群であることを確認した。

MAXI と同様に ISS に搭載されている X 線望遠鏡 NICER を⽤いた、MAXI 巨⼤フレアのフォローアップ観測とそのデータ解析を私が主導して⾏なった。本連携観測を含めた研究結果は、査読論⽂として The Astrophysical Journal に受理されている[4]。MAXI は宇宙全体から突発現象を捉えることに⻑けた観測機であり、それらの詳細な変動を追うことができない。そこで 2017 年 7 ⽉に ISS に搭載された NICER による即時フォローアップ観測を⾏うことで、それらの詳細な変動を捉える試みを⽇本の MAXI チーム、アメリカの NICER チームで推進してきた。ここで、NICER は 2017 年に稼働を開始した X 線検出器で、観測帯域(0.2‒12 keV)は MAXI のそれ(2-20 keV)とよく⼀致し、過去最⾼の X 線の検出感度をもつ [5]。2017 年 7 ⽉ 18 ⽇に MAXI が近接連星系 GT Mus からの観測史上最⼤規模のフレアを検出した。MAXI の検出の 1.5 ⽇後から、フォローアップ観測を、私が主導でその観測提案から⾏い、実施することに成功した。このフレアの放射エネルギーは~1039 erg であり、過去最⼤規模のフレアであった。このような巨⼤フレアにおいて、時間分解スペクトルが得られたのは初めてである。その時間分解スペクトルを解析し、星間吸収を含む 2 つの apec モデルでよく再現されることを我々は明らかにした。その時間変化は、⾼温成分の kT と EM がフレアの減衰に伴って減衰しており、それ以外はフレア中に時間変動を⾒せないことを我々は明らかにした。

考察
① フレアの⽴ち上がり時間と減衰時間の相関
MAXI の光度曲線の解析によって得られたフレアの⽴ち上がり時間と減衰時間を私が⽐較したところ、それらの間に正の相関を発⾒した。更に、2000 年から 2016 年までの太陽観測衛星 GOES によって観測された太陽フレアが、MAXI で得られた相関の同⼀直線上に位置することを初めて明らかにした。

本研究で私は、太陽フレアからの類推をもとに、⾼温プラズマの形状を求める⼿法を独⾃の観点から確⽴した。太陽フレアにおいては、フレアの空間分解が可能であるため、フレアによって発⽣した⾼温プラズマがどのように広がっていくかを追うことができる。その描像を恒星フレアにも適応することで、空間分解できない恒星フレアにおいても、その形状が太陽フレアと相似である⽰唆を得ることに成功した。この形状の議論から、私は MAXIで検出される巨⼤フレア群は、その星で発⽣しうる最⼤規模のフレアである⽰唆を得た。本研究結果は、ある星で発⽣しうる最⼤規模のフレアを制限する物理量を⽰唆した点で新しい。

② 観測史上最⼤規模のフレアに対する詳細観測
NICER で観測した GT Mus のフレアスペクトルの中で、時間変動を⽰した⾼温成分の kT の EM から、フレアの冷却過程を検証した(quasi-static cooling model [6)。その結果我々は、このフレアの冷却過程が、放射冷却と伝導冷却の時定数の⽐が⼀定な準静的過程であることを明らかにした。これは太陽フレアのそれと同様である。太陽と同様の冷却過程であることから、超巨⼤フレアの形状も太陽のそれと同様と仮定して、冷却過程モデルからフレアループの⻑さを⾒積もった。その結果、太陽半径の 65 倍にも及ぶフレアループを形成していることを明らかにした。そこから我々は、フレアの底⾯積、つまり⿊点の半径は太陽半径の 4 倍であることも⾒積もった。ここから、星表⾯の 20%程度の巨⼤な⿊点が形成されていた⽰唆を得た。

まとめと展望
本研究での調査で、28 天体から 200 発を超えるフレアを MAXI を⽤いて発⾒した。それらの解析により、フレアの⽴ち上がり時間と減衰時間の間に正の相関があることを明らかにした。また、MAXI で検出した巨⼤恒星フレアに対して、検出から 1.5 ⽇後から NICER による追観測が成功し、1039 erg 規模のフレアで初めて減衰過程の時間分解スペクトルを獲得した。今後は MAXI と NICER の ISS 軌道上連携が計画されており、これにより類を⾒ない速さでのフォローアップ観測が実施されることが期待される。ここからフレアの⽴ち上がり中の時間分解スペクトルが得られる可能性が⾒込まれ、磁気リコネクションによって加速された粒⼦によって放射される⾮熱的放射の時間変化までが明らかになれば、フレアの⽴ち上がりフェーズへの理解が深まることが期待される。

参考文献

1. K. Shibata & T. Yokoyama 1999 “Origin of the Universal Correlation between the Flare Temperature and the Emission Measure for Solar and Stellar Flares” Astrophysical Journal Letter, Vol. 526, 49

2. Y. Tsuboi, K. Yamazaki, Y. Sugawara et al. 2016 “Large X-ray flares on stars detected with MAXI/GSC: A universal correlation between the duration of a flare and its X-ray luminosity” Publications of the Astronomical Society of Japan, Vol. 68, 90

3. H. Negoro, M. Kohama, M. Serino et al. 2016 “The MAXI/GSC Nova-Alert System and results of its first 68 months”, Publications of the Astronomical Society of Japan, Vol. 68, S1

4. R. Sasaki, Y. Tsuboi, W. Iwakiri et al. “The RS CVn type star GT Mus shows most energetic X-ray flares throughout the 2010s” The Astrophysical Journal (accepted)

5. K. C. Gendreau, Z. Arzoumanian, P. W. Adkins, et al. 2016 “The Neutron star Interior Composition Explorer (NICER): design and development” Proceedings of the SPIE, Vol. 9905, id. 99051H 16 pp.

6. van den Oord, G. H. J.; Mewe, R. 1989 “The X-ray flare and the quiescent emission from Algol as detected by EXOSAT.” Astronomy and Astrophysics, Vol. 213, p. 245

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