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大学・研究所にある論文を検索できる 「Maintenance of intracellular redox homeostasis by an antioxidant enzyme glutaredoxin 1 (Grx1) in human cells」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Maintenance of intracellular redox homeostasis by an antioxidant enzyme glutaredoxin 1 (Grx1) in human cells

Zhao, Tingyi 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23043

2021.03.23

概要

活性酸素種(Reactive oxygen species;ROS)は、ミトコンドリアの酸化的代謝の際や、電離放射線、熱曝露、酸化剤などへの細胞応答の際に発生し、細胞の代謝に重要なシグナル分子として作用する。一方、細胞内に活性酸素が過剰に蓄積されると酸化ストレスが生じ、タンパク質、脂質、D NAに酸化的なダメージを与え、そのことが多くの疾患に関与していると知られている。特に、タンパク質チオール基の酸化修飾はタンパク質の触媒機能または構造に影響を与える可能性がある。細胞は、これらの酸化チオールを還元することができる特異的な酵素系を有している。グルタレドキシン1(Grx1)は、グルタレドキシンファミリーに属する抗酸化酵素であり、酸化したタンパク質チオール(タンパク質中のジスルフィドまたはタンパク質とグルタチオンとの混合ジスルフィド)の還元を触媒 する。Grx1がin vitroでのsulfhydryl homeostasisの制御に果たす役割については多くの研究が報告されている。しかし、酸化ストレス下で細胞の生理活性を調節するGrx1の役割はまだ十分に理解されていない。本研究では、酸化ストレスに対する細胞の生理的応答を制御するGrx1の役割を理解するために、Grx1欠損のヒトHeLaS3細胞株とGrx1過剰発現のT-REx HeLa細胞株を作製した。

Grx1欠損細胞を用いた生存率アッセイにより、Grx1欠損HeLaS3細胞はHeLaS3野生型細胞よりもγ線照射、ヒートショック、またはH2O2曝露に対して感受性が高いことを示していた。さらに、酸化ストレス曝露による実験を行い、Grx1欠損 HeLaS3細胞ではHeLaS3野生型細胞に比べて細胞内酸化物質の蓄積量が増加し、酸化タンパク質の総量やROS消去酵素ペルオキシレドキシン (Prx2)の蓄積量が増大することが明らかになった。これらの結果から、Grx1は細胞内の酸化還元恒常性やタンパク質の酸化還元状態の調節に関与していることが分かった。続いて、Grx1欠損のHeLaS3細胞では、酸化ストレス曝露によりHeLaS3野生型細胞よりもミトコンドリア中の活性酸素産生レベル、アポトーシス関連タンパク質であるcytochrome Cレベル及びアポトーシス率が高くなることを明らかにした。これらの結果から、Grx1の欠損は酸化ストレスによるミトコンドリア機能不全やミトコンドリア を介したアポトーシス細胞死に寄与していることが示唆される。ゲノム不安定性を微小核形成アッセイで調べたところ、Grx1欠損HeLaS3細胞とHeLaS3 野生型細胞の間では、酸化ストレス曝露後の微小核形成率に差は見られなかった。また、酸化ストレスに曝露したHeLaS3 Grx1欠損細胞とHeL aS3 野生型細胞の間では、p38、P-p38、p53、p21のレベルにも差は見られなかった。したがって、G rx1欠損はHeLaS3細胞におけるp38/p53/p21 DNA損傷応答シグナル伝達経路に影響を与えない可能性がある。一方、酸化ストレスへの曝露はGrx1欠損 HeLaS3細胞の増殖を有意に抑制することが分かった。さらに、Grx1欠損 HeLaS3細胞ではHeLaS3野生型細胞よりも高い多核細胞形成率が認められたことから、Grx1の欠損は酸化ストレス曝露時の細胞質分裂障害による増殖抑制と関連していることが示唆された。

Grx1過剰発現ヒトT-REx HeLa細胞において、γ線照射、ヒートショック、H2O2曝露により細胞の分裂が抑制されることが示された。次に、酸化ストレスに曝露すると、Grx1過剰発現細胞は野生型細胞よりも多くの細胞内酸化物質を蓄積することを発見した。さらに、Grx1過剰発現細胞では、酸化ストレス曝露下でγH2AX(DNAの二本鎖切断からH2AXがリン酸化されてγH2AXを形成する)が高レベルで発現しており、Grx1過剰発現細胞がより多くのDNAの二本鎖切断を産生することがわかった。還元酵素系で重要な調節役割を果たす抗酸化物質であるNADPHの量を測定した結果、 Grx1過剰発現細胞では、γ線照射によりNADPHの回復が遅れることがわかった。これらの結果か ら、Grx1の過剰発現は、還元酵素系の安定性を阻害して細胞内の酸化還元バランスを乱し、さらに酸化的DNA損傷を引き起こし、細胞増殖を抑制することが示唆された。

以上のことから、Grx1は細胞内の酸化還元恒常性の調節に重要な役割を果たしていることが分かった。Grx1は、ROS消去酵素の酸化還元状態を制御することで、細胞内の酸化還元恒常性を維持することがあきらかとなった。また、Grx1の欠損または過剰発現は、細胞内の酸化還元恒常性の乱れを引き起こし、細胞内の高分子にダメージを与え、細胞の正常な生理代謝や生理活性に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。

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