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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dynamics of dense non-Brownian suspensions under impact」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Dynamics of dense non-Brownian suspensions under impact

PRADIPTO 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24167

2022.09.26

概要

溶媒中に固体微粒子を混ぜてみよう。粒子が非常に小さいと溶媒に溶けて溶液として振る舞う。一方、微粒子のサイズが1nmを超えると、粒子は溶けずに浮遊して懸濁液として振る舞う。粒径が1nmから1μm程度の粒子の運動は熱揺動の影響を強く受け、ブラニアン懸濁液(コロイド)と呼ばれる。粒径が1μmを超えて1mmまでの粒子の運動は、熱揺動の影響は概ね無視でき、非熱的な振る舞いをする。このクラスの懸濁液を非ブラウン系懸濁液と呼び、本論文での研究対象となっている。

懸濁液の研究はアインシュタインに遡ることができる。特に彼が稀薄懸濁液の粘性率が懸濁液の体積分率に比例して増える事を示した論文がレオロジー研究の嚆矢になっている。その後、低剪断極限での高密度の粘性率の研究等を経て、近年の非ブラウン系懸濁液に関する研究の中心課題は高密度懸濁液の非線形レオロジーである。特に、2013年に不連続シアシックニング(DST)と呼ばれる一次相転移に似た粘性率の不連続な跳びが数値的に再現されて以来、この分野の研究が物理学、化学工学等の学際的研究対象として盛んに行われるようになってきた。

一方で、動画投稿サイトでは、典型的な非ブラウン系懸濁液であるコーンスターチ溶液を使って、人が液体の上を走る事が可能で、防弾チョッキとしても使用可能である事が紹介され、液体でありながら固体的な応答を示す非ブラウン系懸濁液に魅了される人は多い。これまでの解説等では、衝撃に伴う懸濁液の固化をDSTの一種だと紹介している場合が多いが、この通説に対する疑義が本論文の出発点になっている。実際、DSTがほぼ空間的に一様な定常過程で生じ、接線応力と法線応力が同時に不連続的に大きくなるに対して、衝撃に伴う懸濁液の固化は、空間的に不均一でかつ時間依存の現象であると同時に、衝撃に伴って法線応力のみが増加する点が大きく異なる。これらの差異は専門家でも共通認識となっていないのが現状である。そのためか、DSTに関する研究論文の爆発的増加に比べると、非専門家の潜在的な興味にも拘わらず、衝撃に伴う懸濁液の固化に関する先行研究はそれほど多くなく、その現象が生じさせる物理的機構もこれまでは殆ど明らかになっていなかった。

その背景を踏まえて、本論文では格子ボルツマン法(LBM)と粒子の離散要素法(DEM)と呼ばれる接触力学モデルを組み合わせ、更に液体の自由表面を質量追跡アルゴリズムで捕捉して、非ブラウン系懸濁液における衝撃に伴う固化の数値シミュレーションに世界で初めて取り組んだ。更に本論文では、シミュレーションの主要結果を簡単な現象論的モデルによって再現しており、著者は現象の背景にある物理的機構を明らかにしようとしている。

本論文は6つの章と5つの付録から成る。第1章では非ブラウン系懸濁液の先行研究のレビューを行い、DSTと衝撃に伴う固化現象の違いを簡潔に説明した後に論文の狙いを説明している。第2章では本論文で共通して用いられるLBM,DEM及びに粒子表面での潤滑補正と質量追跡アルゴリズムについての簡潔な説明となっている。第3章から第5章はそれぞれ申請者の公表論文に対応しており、第6章でまとめと今後の展望を述べている。5つの付録も概ね公表論文の付録に対応し、本文で述べられなかったテクニカルな詳細を記述している。

本論文の中心である3-5章について詳述する。3章では懸濁液への落下球のシミュレーションの実装と、その結果として反跳が得られる条件を懸濁液密度と衝突速度、或いは密度と粒子間摩擦係数を制御した際の相図として明らかにした。また結果が系のサイズにどう依存するかを、有限サイズスケーリングを用いて明らかにした。またシミュレーションの結果、顕著な法線応力の増大が観測された一方で、接線応力の増大は見られず、衝撃に伴う懸濁液の固化はDSTと異なる点を明らかにした。更に衝突後の懸濁液中に現れる応力鎖のネットワークをパーシステントホモロジーによって抽出し、落下球に働く力の時間発展を再現する事に成功した。

4章では落下球に働く力の最大値及びその時間と衝突速度の関係を解析し、従来知られていた高速衝突領域の冪則のみならず、低速衝突領域の衝突速度にほぼ依存しない領域からのクロスオーバーの存在を見出し、比較的簡単な理論からこのクロスオーバーと冪則の指数を決める事に成功した事を報告している。また殆どの場合に落下球が反跳するためには応力鎖が落下球と容器底との間にパーコレートする事が重要である点を明らかにし、その応力鎖を抽出して落下球に働く力を計算すると落下球の運動をかなり正確に再現できることを示した。

5章では疎視化した密度、運動量、ストレスを導入して局所的な剛性率や粘性率を計算することに成功した点を報告している。その手法を使うと落下球の運動を4章の手法より簡単に再現できるだけでなく、衝突した物体下には弾性率が有限になる動的ジャム領域があることを明らかにし、その結果(弱い)反跳には応力鎖のパーコレーションが必ずしも必要ではない事を明らかにした。また液体の上を走るメカニズムの第一歩として落下物の内部を2つのパートに分割し、その間をバネで結ぶモデルの落下解析を行い、バネ定数が有限であれば、より懸濁液の上に滞在できる時間が長くなることを示した。

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