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大学・研究所にある論文を検索できる 「Endoscopic ultrasound elastography as a novel diagnostic method for the assessment of hardness and depth of invasion in colorectal neoplasms」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Endoscopic ultrasound elastography as a novel diagnostic method for the assessment of hardness and depth of invasion in colorectal neoplasms

江﨑, 正哉 名古屋大学

2021.07.14

概要

【緒言】
 内視鏡的粘膜切除(endoscopic mucosal resection: EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)などの内視鏡的切除(endoscopic resection: ER)は粘膜下層浅層までの浸潤と診断された大腸腫瘍に対して行われている。粘膜下層浸潤大腸癌(submucosal invasive colorectal carcinoma: SICC)には、リンパ節転移のリスクが 10〜15%あるとの報告があるが、SICC のリンパ節転移率は一定ではなく、粘膜下層浸潤距離やその他の要因に依存している。粘膜下層浸潤距離が 1000 ㎛未満、リンパ管または脈管侵襲がない、簇出 grade 1 の場合にリンパ節転移率は約 0%と報告されており、この場合に ER のよい適応となる。そのため、切除前の大腸腫瘍深達度診断が重要となる。
 大腸腫瘍深達度診断では、光学デジタル法や色素法を含む画像強調拡大内視鏡検査(magnifying chromoendoscopy: MCE)および超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography: EUS)により高い診断能が報告されている。しかし、隆起型病変などではしばしば深達度診断が困難とされている。このような場合、組織の硬さを評価することのできる超音波内視鏡下エラストグラフィ(endoscopic ultrasound elastography: EUS-EG)などの新たな診断法が必要となる可能性がある。エラストグラフィは、乳房、膵臓、前立腺、リンパ節などの腫瘍性病変を診断するために有用とされている。これまでに、体外式超音波でのエラストグラフィを使用して直腸腫瘍を評価した報告がいくつかあるが、大腸全体において EUS-EG を用いた報告はない。したがって、我々は、大腸腫瘍深達度診断における EUS-EG の有用性を MCE および EUS と比較することとした。

【対象および方法】
 本研究は名古屋大学医学部附属病院生命倫理審査委員会の承認を得て行われた(UMIN-CTR: UMIN000035902)。
 2018 年 3 月から 12 月(解析研究)と 2019 年 1 月から 2020 年 1 月(検証研究)において早期大腸癌が疑われた病変に対して MCE および EUS が行われた患者が含まれた。90 歳以上、病変長径 < 20 mm、瘢痕を伴う病変、炎症性腸疾患、妊婦を除外基準とした。全患者は EUS-EG 前に MCE 診断および EUS 診断が行われた。EUS-EG には全例で EG-580UR スコープ(supplementary table)および SU-1 プロセッサー(いずれも Fujifilm 社)を使用し、腫瘍表層から漿膜までを含むように region of interest (ROI)を設定した(Fig. 1)。EUS および EUS-EG 診断は、MCE 診断結果を知らない 2 人の経験豊富な超音波内視鏡医によって行われた。解析研究では、1 人の経験豊富な超音波内視鏡医が EUS-EG 画像を後から見直し elastic score of colorectal neoplasms (ES-CRN)分類を作成し診断した(Fig. 2)。その妥当性を評価するために解析研究で信頼性評価試験を expert と non-expert それぞれ 2 人ずつにより行い、EUS-EG 診断能および検者間/検者内一致率を算出した。検査信頼度は 90%以上の場合を high confidence(HC)とした。Expert は MCE 3000 件、EUS100 件以上の施行経験があり、EUS-EG 検査を見学したことのある内視鏡医、non-expert は MCE 経験 3000 件以上だが、大腸 EUS 経験がなく EUS-EG 検査を見たことのない内視鏡医とした。病理組織学的診断では、粘膜下層<1000 ㎛と≧1000 ㎛をそれぞれ粘膜下層浅層浸潤(sSM)と粘膜下層深部浸潤(dSM)として診断した。主要評価項目は dSM 以深浸潤に対する EUS-EG、MCE、EUS それぞれの診断能(感度、特異度、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、正診率)、副次評価項目として ES-CRN 分類の診断能および検者間/検者内一致率、超音波内視鏡による病変到達時間、偶発症を評価した。

【結果】
解析研究と検証研究
 解析研究と検証研究にそれぞれ 31 患者(33 病変)と 50 患者(55 病変)が登録された(Fig. 3; Table 1)。いずれの研究でも全例で病変への超音波内視鏡の到達は可能で、偶発症はみられなかった。全病変は内視鏡検査から 1 か月以内に内視鏡的または外科的治療が行われ、病理組織学的に最終診断を得た。Fig. 4 に MCE、EUS および EUS-EG による診断の一例を提示する。
 各診断法による dSM 以深診断に対する感度、特異度、PPV、NPV、正診率を Table 2 に示す。解析研究では EUS-EG が最も高い正診率を有し、検証研究では MCE が最も高い正診率を有したが、いずれの研究でも 3 つの診断法による診断能において有意差はみられなかった。EUS-EG 診断において、解析研究と検証研究それぞれで HC は 23/30例(76.7%)と 51/54 例(94.4%)で得られた。EUS-EG、MCE および EUS 診断と病理組織学的腫瘍深達度診断の内訳を Table 3 に示す。
 解析研究と検証研究において、それぞれ 33 病変と 55 病変のうち 21 病変と 30 病変が肉眼形態分類 Is または Ip を含む隆起型病変であった。これらの隆起型病変とそれ以外の病変での各診断法による dSM 以深診断能について Table 4 に示す。いずれの診断法および肉眼形態分類の間でも診断能に有意差はみられなかった。
 解析研究では MCE と EUS では全例で診断が可能であったが、EUS-EG では ROI を適切な位置に置くことができていないために 3 例で評価が困難であった。それらのうち 2 例は直腸、1 例は S 状結腸で、病変長径はそれぞれ 15mm、30mm、36mm、肉眼形態分類は Is、Ip、IIa+IIc であった。病理組織学的深達度は 2 例が sSM、1 例は dSM であった。検証研究ではいずれの診断法でも 1 例ずつ評価困難例がみられ、EUS と EUS-EG では病変が襞上に存在したために、MCE では粘液付着のために評価が困難であった。

信頼性評価試験(解析研究)
 信頼性評価試験では、検者間一致率は 2 人の expert では substantial から excellent(κ値: 1 回目 0.84 / 2 回目 0.78)、2 人の non-expert では moderate から substantial(κ値:1 回目 0.73 / 2 回目 0.49)であった。検者内一致率は 2 人の expert ではいずれも substantial(κ値: 0.78 / 0.79)、2 人の non-expert では moderate から substantial(κ値: 0.68 / 0.52)であった。それぞれの検者による EUS-EG の診断能について Table 5 に示す。

【考察】
 本研究は大腸腫瘍深達度診断における直視ラジアル型超音波内視鏡を用いた EUS- EG の診断能および臨床での有用性を評価した最初の研究である。
 MCE および EUS 診断の有用性は以前から報告されている。dSM 以深診断における pit pattern 分類を用いた MCE 診断のメタアナリシスでは、感度 81%、特異度 95%と報告されている。 EUS では、鮮明な画像が得られた場合に Tis 癌と T1a 癌の鑑別精度は高く、約 90%と報告されている。我々の研究では、EUS-EG は MCE と EUS と同等の診断能であった。隆起型病変においては、MCE では粘膜下層に深く浸潤していても腫瘍表層に浸潤所見が表出していない場合に、EUS では深部減衰の場合にしばしば深達度診断が困難となる。したがって、最終病理診断よりも MCE では浅く、EUS では深く診断されるリスクがある。そのため、隆起型病変である Is または Ip を含む病変における EUS-EG 診断能について検討した。本研究では、肉眼形態の違いによる診断能の低下は有意ではなかった。誤診例で検討すると、最終病理診断よりも MCE では 6例が浅く、EUS では 11 例、EUS-EG では 2 例で深く診断されていた。これらのうち、 MCE 誤診 5 例、EUS 誤診 6 例がそれぞれ EUS-EG によって正診された。したがって、 EUS-EG により MCE や EUS の誤診例を正診に導ける可能性があることが示唆された。
 画像強調観察を用いた診断では、JNET 分類を用いた経験豊富な 2 人の大腸内視鏡医による 199 病変に対する検者間一致率は moderate(κ値: 0.52)、検者内一致率は excellent(κ係数: 0.88)と報告されている。本研究では ES-CRN 分類において non- expert においても moderate から substantial の検者内および検者間一致率が得られた。これらの結果から、ES-CRN 分類は EUS-EG 初学者にとっても診断が容易で理解しやすい分類だと考えられた。しかしながら、本研究は単施設、少数例での検討であり、より大きな前向き研究が必要である。

【結語】
 ES-CRN 分類を用いた EUS-EG 診断は、大腸腫瘍深達度診断において有用な診断法の 1 つとなり得る。

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