リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「3軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを組み合わせた新規咳嗽モニターの開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

3軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを組み合わせた新規咳嗽モニターの開発

大歳, 丈博 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

A novel automatic cough frequency monitoring
system combining a triaxial accelerometer and a
stretchable strain sensor

大歳, 丈博
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8725号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485909
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

A novel automatic cough frequency monitoring system combining
a triaxial accelerometer and a stretchable strain sensor

3 軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを組み合わせた新規咳嗽モニターの開発

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
呼吸器内科学
(指導教員:平田
大歳

健一教授)

丈博

背景
咳嗽は受診理由として最も頻度の高い症状である。特に慢性咳嗽を呈する患者では、頻回
受診にも関わらず確定診断がつかないことが多く、患者の状態をより正確に把握するため
には咳嗽頻度の客観的な評価が重要である。これまでの臨床研究では録音機を用いた咳嗽
モニターが使用されているが、実際の臨床現場でこのモニターが使用されることはほとん
どない。録音機を用いた咳嗽モニターの欠点として、周囲の音が混入する雑音の問題や、被
験者の会話が録音されることによるプライバシーの問題があり、既存のモニターが普及し
にくい原因と考えられる。この問題を解決するため、3 軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを
組み合わせ、録音機を用いない新規咳嗽モニターの開発を試みた。

方法
2019 年から 2020 年にかけて、咳嗽症状のない 11 名の健常成人と、咳嗽症状を有する 10
名の成人患者を被験者とし、神戸大学医学部附属病院において本研究を実施した。
3 軸加速度計(WHS-3 SENSOR; ユニオンツール)を心窩部に、伸縮性ひずみセンサ(CSTRETCH; バンドー化学株式会社)を頸部に装着し、30 分間座位で実験を行った。それぞれ
のデータは無線でデジタルデバイスに送信され、心窩部と頸部の動きが波形として記録さ
れた。実験中、被験者には会話、および上半身を自由に動かすことを許可し、健常被験者に
は自発的に咳をするよう指示した。同室の観察者が被験者の咳嗽のタイミングを記録した。

咳嗽時、いずれの機器も特徴的な波形を示し、会話、笑い声、上半身の動作による波形と視
覚的に判別可能であった。また、咳嗽強度は波形振幅の大きさと相関を認めた。
咳嗽を自動判定するアルゴリズム開発のため、被験者の波形データを連続する 5 秒ずつ
の単位(ユニット)に分割した。観察者の記録に基づき、5 秒間に咳嗽が認められた場合に
咳嗽ユニット、咳嗽を認めない場合に非咳嗽ユニットと定義した。波形の特徴の抽出には機
械学習アルゴリズムである変分オートエンコーダを用いた。
全ての被験者の波形データから咳嗽ユニットに該当する可能性のある波形振幅の閾値を
設定し、その閾値を超えるユニット数の 60%を用いて機械学習を行い(訓練データ)
、残り
40%をテストデータとした。テストデータのそれぞれのユニットが咳嗽ユニットに該当する
か否かの判定には k-means クラスタリング法を用いた。正確に判定された咳嗽ユニットの
割合を感度、非咳嗽ユニットの割合を特異度として、今回の咳嗽モニターの精度を検証した。

結果
11 名の健常被験者に喫煙歴はなかった。10 名の患者被験者のうち 8 名に喫煙歴を認め、
6 名は慢性閉塞性肺疾患の既往があった。健常群を対象とした咳嗽モニターの感度、特異度
はそれぞれ 94%、95%であり、患者群では 91%、97%であった。全被験者を対象とした感度、
特異度は 92%、96%であった。一方、全被験者対象に 3 軸加速度計のみを使用した場合の感
度、特異度は 91%、95%であり、加速度計に伸縮性ひずみセンサを組み合わせることで咳嗽

の判定精度が向上することが示唆された。
運動時の体動が咳嗽判定に与える影響についても探索的に検討した。咳嗽モニター装着
下に歩行運動 1 分、および起立・座位の繰り返し運動 1 分のあわせて 2 分間の体動データ
を健常者 1 名から取得し、これをテストデータとして上述のアルゴリズムで自動判定した
ところ 13%が咳嗽ユニットと誤判定された。一方、既存の訓練データに体動データの半分
を追加したところ、残り半分の体動データはすべて非咳嗽ユニットと正しく判定された。
最後に、今回のアルゴリズムによる訓練データが、新規被験者の咳嗽判定に有用かどうか
検討を行った。まず、全被験者 21 名から 1 名を除く 20 名の全てのユニットを抽出し、上述
同様、波形振幅の閾値を超えるユニット数の 60%を用いて訓練データを作成した。次に、除
かれた 1 名から波形振幅の閾値を超える全てのユニットを抽出し、これをテストデータと
した。これを 21 回繰り返し、新規被験者の咳嗽判定における感度、特異度を求めるとそれ
ぞれ 85%、93%であった。

考察
3 軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを組み合わせることで新規の咳嗽モニターとしての
有用性を検討したところ、咳嗽検出の感度・特異度は 92%、96%と良好な結果であった。ま
た 2 つの機器とも軽量・小型で持ち運び可能であり、利便性に優れていた。
本研究で作成したのは伸縮性ひずみセンサを活用した初めての咳嗽モニターであるが、3

軸加速度計のみを使用した場合に比べ、伸縮性ひずみセンサを組み合わせることで咳嗽の
判定精度の向上が認められた。近年、伸縮性ひずみセンサは生体の動きをモニターする上で
利便性の高い手段として認識されている。また、技術の向上により他にも様々な種類の小型
生体センサが今後登場すると予想される。我々は 2 つの箇所(心窩部と頸部)の動きをモニ
ターすることで咳嗽の検出を試みたが、生体センサの装着部位やセンサの組み合わせを工
夫することで、さらに精度の高い咳嗽モニターを開発できる可能性がある。
今回は座位での測定が主であったため、運動を含めた条件下で機器の精度に関する検証
をさらに行う必要があるが、探索的な実験結果からは体動が咳嗽判定に与える影響は小さ
いと考えられた。また新規被験者の咳嗽判定においては、全被験者を対象とした場合に比べ
て感度、特異度ともやや低下した。しかし、喘息や間質性肺炎など様々な疾患患者を対象に
被験者数を増やすことで、機械学習を用いたアルゴリズムで咳嗽判別の精度を向上させる
ことが可能であると考える。
課題として、本アルゴリズムが実際の咳嗽の数を過小評価する可能性とその影響につい
て検証する必要がある。被験者の波形データを 5 秒ずつのユニットに分割したため、仮に
10 秒間に 10 回の咳嗽があった場合も、2 つのみの咳嗽ユニットと判定される。我々の咳嗽
モニターで評価した咳嗽頻度が、研究目的での咳嗽評価として推奨されている咳特異的 QOL
質問票等の主観的評価法と有意な相関を認めるのか検討を進める必要がある。
また、本実験では咳嗽強度が波形振幅の大きさと相関を認めたため、咳嗽頻度のみでなく

咳嗽強度の評価にも我々の咳嗽モニターを使用できる可能性がある。咳嗽頻度と同様、咳嗽
強度も患者の QOL に大きな影響を与えることが知られている一方、現時点で咳嗽強度を測
定できるモニターが存在しないため、今回のモニター開発の有用性は高いと思われる。

結論
軽量で持ち運びが容易な 3 軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを組み合わせ、感度・特異度
ともに高い新規咳嗽モニターが開発できる可能性が示された。このモニターを用いること
で、録音機を用いた咳嗽モニター特有の雑音の混入やプライバシーの問題も解決できる。さ
らなる検証を重ねた上、日常診療での幅広い活用が期待される。

神戸大学大学院医学研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

甲 第 3314号

氏 名

I
大歳丈博

An
o
v
e
lau
t
omat
i
cc
o
ug
hf
r
e
q
uenc
ymon
i
t
o
r
i
ngs
ys
t
emcombi
ni
ng
at
r
i
ax
i
a
la
c
c
e
l
e
r
o
m
et
e
randas
t
r
e
t
c
h
a
b
l
es
t
r
a
i
ns
e
n
s
o
r
論文題目

3軸 加 速 度 計 と 伸 縮 性 ひ ず み セ ン サ を 組 み 合 わ せ た 新 規 咳 嗽 モ ニ タ

Ti
t
l
eo
f
Di
s
s
e
r
t
at
i
on

ーの開発

主 査

Ch
i
e
fExami
ner
審査委員

Exam
i
ne
r

副 査

Vi
ce-exam
i
ner
副 査

Vi
ce-exam
i
ner

坂ロー克
犀こ— 壽已

ふ}叶コ少

(要旨は 1
, 000字∼ 2,000字程度)

背景 】
】 録音機を用いた咳嗽モニターは存在したが、実際の臨床現場でこのモニターが使用さ
れることはほとんどなく、新しいモニターの開発が望まれていた。 3軸加速度計と伸縮性ひずみ
センサを組み合わせ、録音機を用いない新規咳嗽モニターの開発を試みた。

01
9年から 2
0
2
0年にかけて、咳嗽症状のない 1
1 名の健常成人と、咳嗽症状を有する 1
0

方法 】2
の成人患者を被験者とし 、本研 究 を実施した。 3軸加速度計 (
W
HS
3S
E
N
S
O
R
; ユニオンツール)を心
裔部に、伸縮性ひずみセンサ (
C
-S
T
R
ET
C
H;バンドー化学株式会社)を頸部に装着し、 3
0分間座位
で実験を行った。 同室の観察者が被験者の咳嗽のタ イ ミングを記録した。被験者の波形データを
連続する 5秒ずつの単位(ユニッ ト
) に分割し 、咳嗽 を自動判定するアルゴリズム開発した。観察
者の記録に基づき、 5秒間に咳嗽が認められた場合に咳嗽ユニット、咳嗽 を認めない場合に非咳
嗽ユニ ットと定義した。波形の特徴の抽出には機械学習アルゴリズムである変分オー トエンコ ーダ
を用 いた。全ての被験者の波形データから咳嗽ユニッ トに該 当する可能性のある波形振幅の閾値を
設定し 、その閾値を超え るユニッ ト数の 6
0%を用いて機械学習を行い(訓練データ)、残り 4
0
%をテ

ストデータとした。テストデータのそれぞれのユニットが咳嗽ユニットに該当するか否かの判定
には k
m
e
a
n
s クラスタリング法を用いた。正確に判定された咳嗽ユニットの割合を感度、非咳嗽
ユニットの割合を特異度 として、今回の咳嗽モニターの精度を検証した。

4%
、9
5%であり、患者群で

結果】健常群を対象とした咳嗽モニターの感度、特異 度 は そ れ ぞ れ 9
は 9
1
%、9
7%であ った。全被験者を対象とした感度、

特異度は 9
2
%、9
6%であった。 一方、全被験

者対象に 3軸加速度計のみを使用した場合の感度、特異度は 9
1
%、9
5%であり、加速度計に伸縮
性ひずみセンサを組み合わせることで咳嗽の判定精度が向上することが示唆された。

考察】3軸加速度計と伸縮性ひずみセンサを組み合わせることで新規の咳嗽モニターとしての
有用性を検討したところ、咳嗽検出の感度•特異度は 92% 、 96 %と良好な結果であった。また 2 つ

の機器とも軽量 ・小型で持ち運び可能であり、利便性に優れていた。本研究で作成したのは伸縮性
ひずみセンサを活用した初めて の咳嗽モニタ ーであるが、3軸加速度計のみを使用した場合に 比べ、
伸縮性ひずみセンサを組み合わせることで咳嗽の 判定精度の向上が認めら れた。近年、伸縮性ひ
ずみセンサは生体の動きをモニターする上で利便性の高い手段として認識されている。また、技
術の向上により他にも様々な種類の小型生体センサが今後登場すると予想される。我々は 2つの
箇所(心窓部と頸部) の動きをモニターすること で咳嗽の検出を試みたが、生体センサの装着部位
やセンサの組み合わせを工夫することで、 さらに精度の高い 咳嗽モニターを開発できる可能性が
ある。今回は座位での測定が主であったため、運動を含めた条件下で機器の精度に関する検証を
さらに行う必要があるが、探索的な実験結果からは体動が咳嗽判定に与える影響は小さいと考え
られた。また新規被験者の咳嗽判定においては、全被験者を 対象とした場合に比べて感度 、特異
度ともやや低下した。しかし 、喘息や間質性肺炎など様々な疾患患者を対象に被験者数を増やす
ことで、機械学習を用いたアルゴリズムで咳嗽判別の精度を向上させることが可能であると考え
る。課題として、本アルゴリズムが実際の咳嗽の数を過小評価する可能性とその影孵について検
証する 必要がある。被験者の波形データを

5秒ずつのユニッ トに分割したため、仮に 1
0秒間 に

1
0回の咳嗽があった場合も、 2つのみの咳嗽ユニッ トと判定される 。我々の咳嗽モニターで評価
した咳嗽頻度が、研究目的での咳嗽評価として推奨されている咳特異的Q
O
L質問票等の主観的評
価法と 有意な相関を認めるのか検討を進める必要がある。また、本実験では咳嗽強度が波形振幅の
大きさと相関を認めたため、咳嗽頻度のみでなく咳嗽強度の評価にも我々の咳嗽モニターを使用で
きる可能性がある。咳嗽頻度と同様、咳嗽強度も患者の QO
L に大きな影響を与えることが知 られ
ている 一方、現時点で咳嗽強度を測 定できるモニターが存在しないため 、今回のモニター開発の
有用性は高いと思われる。
本研究は全 く新しい方法で、咳嗽モニタリング装置を開発したもので、従来ほとんど行われていなか っ

4時間にわたる咳嗽モニタ ーにつながりうる 重要な知見を得たものとして価値ある集栢と認める 。
た 2
よって、本研究者は、博士 (
医学)の学位を得る資格があると認める 。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る