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大学・研究所にある論文を検索できる 「伸縮性シート電極を応用した新規筋電計による口腔周囲筋の筋活動評価の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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伸縮性シート電極を応用した新規筋電計による口腔周囲筋の筋活動評価の検討

總山, 彰雄 大阪大学

2022.03.24

概要

【緒言】
 栄養摂取は,健康の基本であり,咀嚼や嚥下を評価する多くの方法が試みられている.咀嚼,嚥下の評価には,咀嚼能率検査,下顎運動解析,内視鏡検査,造影検査,唾液や水の嚥下テストならびに筋電図検査といった様々な手法が用いられるが,筋電図検査は,咀嚼,嚥下時の筋活動を数値化して評価できることが利点として知られている.また,日常での食べ方を評価する機器への応用といった観点から,長時間の安定した計測が可能なウェアラブル筋電計が望まれている.しかしながら,従来装置は,電極の貼付による皮膚の可動制限や,電極の固定性が問題となり,現在のところ実現には至っていない.そこで本研究では,伸縮性シート電極を用いた新規筋電計(以下,新規筋電計)について,口腔周囲筋における測定の信頼性を検証することを目的とした.

【方法】
 研究対象者は,顎口腔系に異常を認めない健常成人とした.筋電計の表面電極は,咬筋ならびに舌骨上筋群に貼付した.使用した筋電計は,新規筋電計に加えて,比較対象として能動電極(Bagnoli, Delsys Japan社, 東京)を用いた筋電言十(以下,能動筋電計)ならびに受動電極(Duo-trode, Myotronics社, USA)を用いた筋電計(以下,受動筋電計)とした.筋電図の測定は,すべてサンプリング周波数1kHz,測定周波数帯5-450HZにて行った.測定した筋電波形は,20Hz高域通過フィルタと60Hzノッチフィルタによるデジタルフィルタ後に二乗平均平方根処理を行った.なお,本研究における統計解析の有意水準は5%とした.また本研究は,本学附属病院倫理審査委員会の承認(R2-E9)を得て行った.
 本研究では,新規筋電計の測定信頼性を検討する上で,以下の3つの段階で分析を行った.

実験1)新規筋電計を用いた筋電図計測の測定再現性の検討
 対象者は,健常成人15名(男性5名,女性10名,平均年齢27.9歳)とした.口腔周囲の中でも動きが少なく安定した筋電図測定が行える咬筋を標的筋とし,伸縮性シート電極を貼付し,3秒間の最大嚙みしめ時の筋活動電位を測定した.測定は,2名の歯科医師(臨床経験6年,1年未満)により,1日当たり1回行い,1週間を開けて2回実施した.解析方法は,両側咬筋の最大振幅の平均値を評価項目とし,検者内信頼性としてICC(1,1)を,検者間信頼性としてICC(2,1)を算出した.

実験2)新規筋電計と従来の筋電計との比較による測定信頼性の検討
 実験1と同様の対象者15名に対して,両側の咬筋部に,伸縮性シート電極ならびに能動電極を同時に貼付し,咀嚼能力測定用グミゼリー(UHA味覚糖社,大阪)の自由咀嚼の開始5咀嚼の筋活動電位を測定した.加えて,片側の舌骨上筋部に伸縮性シート電極を,反対側に受動電極を貼付し,3mlの水嚥下時の筋活動電位を測定した.なお,振幅,活動持続時間,積分値ならびに信号雑音比(SNR)を評価項目とし,装置間の比較をするために,振幅ならびに積分値を評価する際には,咬筋では最大嚙みしめを,舌骨上筋群では最大舌押し付けを基準とした正規化を行った.
 ICC(2,1)による装置間信頼性の検定(以下,装置間ICC(2,1))に加えて,Bland-Altman分析による装置間の固定誤差,比例誤差を検証した.Bland-Altman分析では,正規化した測定値における2装置間の差について,平均ならびに95%信頼区間を算出し,区間が0を含まない場合は,有意な固定誤差が存在する,すなわち,測定値の大小に関わらず装置間に生じる一定の誤差があると判断した.加えて,正規化した測定値における2装置間の差を目的変数,2装置の平均を説明変数とする線形回帰分析の結果,回帰式が有意と判断された場合,比例誤差が存在する,すなわち,装置間で測定値の大小に依存した誤差があると判断した.

実験3)新規筋電計および受動筋電計を用いた長時間貼付時の測定安定性の検討
 健常成人11名(男性6名,女性5名,平均年齢21.3歳)を対象に,両側舌骨上筋部に伸縮性シート電極ならびに受動電極を貼付し,貼付直後ならびに貼付6時間経過時に,最大舌押し付け時の舌骨上筋群の筋電位の計測し,SNRの評価を行った.分析は,Friedman’s Testを用い,経過時間により生じる測定差を検証した.また,10dBを基準にSNR良好群と非良好群に分類し,各時間における装置間での割合の検討をカイ二乗検定で行った.

【結果】
実験1) : ICC(1,1)は,0.92であった.またICC(2,1)は,0.88であった.すなわち,新規筋電計を用いた咬筋の筋活動評価における検者内・検者間信頼性は,ともに良好以上の値を示した.

実験2):咬筋部において,2つの装置(新規筋電計,能動筋電計)を用いて咀嚼運動の筋活動測定を行った際の装置間ICC(2,1)は,振幅で0.90,活動持続時間で0.99,積分値で0.90ならびにSNRで0.75であった.また,Bland-Altman分析の結果,装置間で有意な誤差は認められなかった.次に,舌骨上筋群において,2つの装置(新規筋電計,受動筋電計)を用いて水嚥下の筋活動測定を行った際の装置間ICC(2,1)は,振幅で0.73,活動持続時間で0.89,積分値で0.49ならびにSNRで0.22であった.なお,Bland-Altman分析の結果,SNRについては,有意な固定誤差を認めたが,振幅,活動持続時間,積分値では認めなかった.また比例誤差は,いずれの評価項目においても認められなかった.

実験3):舌骨上筋群での新規筋電計における貼付直後のSNRの中央値(四分位範囲)は,22.0(15.3-24.0)dBであり,貼付3時間後では,17.0(14.1-21.8)dB,貼付6時間後では,22.5(19.4-26.8)dBであった.また,受動筋電計における貼付直後のSNRの中央値(四分位範囲)は,13.6(10.1-15.7)dBであり,貼付3時間後では,11.9(10.0-16.0)dB,貼付6時間後では,12.7(4.0-18.1)dBであった.両筋電計ともに,貼付直後と6時間後のSNR値に統計学的に有意な差は認められなかった.一方で,10dB以上のSNR良好群非良好群の割合において,貼付直後では各装置間で有意な差はなかったが(p=0.24),貼付6時間後では,新規筋電計の方が有意にSNR良好群の割合が高かった(p=0.02).

【考察】
 実験1の結果より,新規筋電計は,測定回数ならびに測定者に関わらず高い測定再現性を有することが示された.また,実験2の結果より,新規筋電計は,従来の筋電計と比較して同等の評価を行えることが示された.なお,舌骨上筋群の筋電図測定におけるSNRは,新規筋電計で有意に高い値を示し,よりノイズが少ない計測が可能であることが示された.これは,電極が皮膚に密着し接触抵抗が低下したことが影響していると考えられる.実験3の結果より,新規筋電計は,長時間貼付において,ノイズの少ない状態の維持が可能であることが示された.これは,電極の皮膚の動きへの追従性が影響していると考えられる.以上のことより,新規筋電計は,高い信頼性かつ低ノイズで口腔周囲筋の筋活動の評価を長時間行えることが示された.

【結論】
 従来筋電計との比較ならびに長時間の計測での検証を行った結果,口腔周囲筋の筋活動評価において,新規筋電計の高い測定信頼性が示された.

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