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ニワトリ (Gallus gallus domesticus) における小型肝細胞の形態学的研究

深沢 英恵 北里大学

2021.07.20

概要

肝 臓 は 多 様 な 機 能 と 高 い 再 生 能 を 持 つ 器 官 で あ る 。 肝 疾 患 は 、 ヒト や 動 物 に お い て 重 要 で あ り 、 肝 再 生 に 関 す る 研 究 に は 様 々 な 実 験 モ デ ル 、 実 験 動 物 が 用 い ら れ て き た 。 実 験 的 肝 障 害 モ デ ル の 一 つ であ る 胆 管 結 紮 で は 、 閉 塞 性 胆 汁 鬱 滞 に よ る 線 維 化 や 胆 管 増 生 等 の リモ デ リ ン グ 、 肝 細 胞 の 増 殖 が 生 じ る 。 ま た 、 肝 再 生 の 研 究 に 用 い ら れ る 実 験 動 物 に は 、 マ ウ ス や ラ ッ ト 、 近 年 で は ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ が 挙 げ ら れ る 。 肝 再 生 機 構 に は 、 肝 細 胞 自 身 が 肥 大 増 殖 す る 場 合 と 、肝 細 胞 以 外 の 前 駆 細 胞 等 が 肝 細 胞 へ 変 化 す る 場 合 が あ り 、 後 者 の 前 駆 細 胞 の 一 種 に 小 型 肝 細 胞 が あ る 。 小 型 肝 細 胞 は 、 肝 細 胞 と 前 駆 細胞 の 性 質 を 持 ち 、肝 細 胞 増 殖 因 子 な ど の 添 加 に よ り 増 殖 す る こ と が 、ラ ッ ト を 用 い た in vitro の 実 験 で 報 告 さ れ て い る 。

鳥 類 の 中 で も ニ ワ ト リ ( Gallus gallu s domesticus ) は 、古 く か ら 研 究 に 用 い ら れ て い る 実 験 動 物 で あ る 。 近 年 で は ゲ ノ ム 解 析 が 完 了 し 、 脊 椎 動 物 間 で 遺 伝 子 の 三 分 の 一 が 共 通 す る こ と が 報 告 さ れ て いる 。 し か し 、 従 来 の 肝 再 生 の 研 究 に お い て 、 哺 乳 類 動 物 と 魚 類 の 中間 と い え る 鳥 類 で の 報 告 は 少 な い 。 し た が っ て 、 本 研 究 で は 組 織 学 的 解 析 を 中 心 に 、 胆 管 結 紮 を 行 っ た ニ ワ ト リ に 特 有 な 肝 再 生 機 構 につ い て 、 in vivo で 肝 臓 内 に 出 現 す る 細 胞 に 着 目 し 、 検 討 を 行 っ た 。

第 一 章 ニ ワ ト リ に お け る 小 型 肝 細 胞 の 組 織 学 的 特 徴
肝 臓 の 前 駆 細 胞 の 一 種 で あ る 小 型 肝 細 胞 は 、 高 い 増 殖 能 と 肝 細 胞の 性 状 を 持 つ 細 胞 で あ る 。 ま た 、 成 熟 肝 細 胞 と 異 な り 、 ヒ ア ル ロ ン 酸 受 容 体 で あ る C D 4 4 を 発 現 す る 。 第 一 章 で は 、 胆 管 結 紮 を 施 し たニ ワ ト リ の 肝 臓 内 で 認 め ら れ る 、 集 簇 を 形 成 す る 細 胞 の 同 定 を 試 みた 。 こ の 細 胞 は 、 肝 細 胞 よ り 小 さ く 、 ヘ テ ロ ク ロ マ チ ン に 富 む 核 を 持 ち 、 細 胞 集 簇 は 肝 細 胞 板 と 連 続 し て 存 在 し て い た 。 さ ら に 、 小 型 肝 細 胞 マ ー カ ー で も あ る C D 4 4 、 細 胞 増 殖 を 示 す P C N A お よ び 肝 細 胞 マ ー カ ー の Albumin に 対 し て 陽 性 を 示 し た 。 肝 細 胞 と 同 様 に 、 PA S 染 色 に よ り 赤 紫 色 に 染 ま る グ リ コ ー ゲ ン 顆 粒 を 持 つ 細 胞 も 認 め ら れ た 。 以 上 の 組 織 学 的 特 徴 よ り 、 胆 管 結 紮 を 行 っ た ニ ワ ト リ で 出 現 し た 細 胞 は 、哺 乳 類 動 物 の 小 型 肝 細 胞 と 同 質 で あ る と 推 察 さ れ た 。

第 二 章 ニ ワ ト リ 小 型 肝 細 胞 の 電 子 顕 微 鏡 学 的 研 究
哺 乳 類 動 物 の 小 型 肝 細 胞 は 、肝 細 胞 へ 分 化 す る と 考 え ら れ て い る 。胆 管 結 紮 を 行 っ た ニ ワ ト リ で 出 現 し た 細 胞 集 簇 の 中 に は 、 組 織 学 的 に 染 色 性 が 異 な る 小 型 肝 細 胞 が 認 め ら れ 、 分 化 の 程 度 の 違 い に よ る も の と 考 え ら れ た 。 そ こ で 、 ニ ワ ト リ に お け る 小 型 肝 細 胞 の 分 化 につ い て 、 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 、 グ リ コ ー ゲ ン 顆 粒 に 対 す る 電 顕 組 織 化 学 、C D 4 4 に 対 す る 免 疫 電 顕 ( Pre - embedding ) 法 を 用 い て 検 討 し た 。そ の 結 果 、 ニ ワ ト リ 小 型 肝 細 胞 は 未 分 化 な 細 胞 と 類 似 す る 超 微 細 構 造 的 特 徴 を 有 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 細 胞 が 幼 弱 な 形 態 の 特 徴 を 有 し て い る ほ ど C D 4 4 陽 性 を 示 す 細 胞 膜 の 範 囲 は 広 く 、肝 細 胞 と 類 似 す る 細 胞 で は C D 4 4 を 発 現 す る 範 囲 は 限 局 さ れ て い た 。以 上 よ り 、 C D 4 4 の 発 現 領 域 の 違 い が ニ ワ ト リ 小 型 肝 細 胞 の 様 々 な 分 化 過 程 を 示 し て い る と 考 え ら れ た 。

第 三 章 小 型 肝 細 胞 の 出 現 性 に 関 す る 組 織 学 的 特 徴
胆 管 結 紮 単 独 処 置 で 小 型 肝 細 胞 が 出 現 す る 報 告 は 無 い 。 そ こ で 、胆 管 結 紮 を 行 っ た ニ ワ ト リ の 肝 臓 の 特 徴 を 明 ら か に す る 為 、 ラ ッ ト と マ ウ ス に も 胆 管 結 紮 を 施 し 、 比 較 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 胆 管 結 紮 を 施 し た 3 つ の 動 物 種 に お い て 、 ニ ワ ト リ で 唯 一 、 小 型 肝 細 胞 の 出 現 が 認 め ら れ た 。 ま た 、 ニ ワ ト リ で は 胆 管 結 紮 の 有 無 に 関 わ らず 、 小 型 肝 細 胞 の 増 殖 因 子 の 一 つ と し て 知 ら れ る 肝 細 胞 増 殖 因 子 を発 現 す る 類 洞 周 囲 脂 質 細 胞 が 存 在 し た 。 一 方 で 、 3 つ の 動 物 種 間 で 共 通 的 に 、 炎 症 、 線 維 化 、 胆 管 増 生 が 認 め ら れ た が 、 い ず れ の 変 化 で も ニ ワ ト リ が 最 も 重 度 で あ っ た 。 以 上 よ り 、 ニ ワ ト リ は 哺 乳 類 動 物 と 異 な り 、 胆 管 結 紮 単 独 処 置 で 小 型 肝 細 胞 が 出 現 す る こ と が 明 ら か と な り 、 こ の こ と は 、 肝 細 胞 増 殖 因 子 を 発 現 す る 類 洞 周 囲 脂 質 細胞 が 胆 管 結 紮 に 関 わ ら ず 常 に 存 在 す る こ と や 、 胆 管 結 紮 に よ る 重 度 の 肝 障 害 な ど が 関 連 し て い る と 解 さ れ た 。

第 四 章 胆 管 結 紮 を 施 し た ニ ワ ト リ に 対 す る ヒ ア ル ロ ン 酸 の 影 響
小 型 肝 細 胞 の 選 択 培 養 に は ヒ ア ル ロ ン 酸 が 用 い ら れ る 。 ま た 、 ヒト の 肝 線 維 症 で は 血 中 ヒ ア ル ロ ン 酸 濃 度 が 上 昇 す る 。 し か し 、 in vivo で の 小 型 肝 細 胞 へ の ヒ ア ル ロ ン 酸 の 影 響 に つ い て の 報 告 は 無い 。 そ こ で 、 胆 管 結 紮 を 施 し た ニ ワ ト リ に 対 す る ヒ ア ル ロ ン 酸 投 与に よ る 影 響 を 検 討 し た 。 胆 管 結 紮 を 行 っ た ニ ワ ト リ へ の ヒ ア ル ロ ン 酸 の 投 与 は 、 小 型 肝 細 胞 の 出 現 を 含 め た 肝 臓 の 組 織 学 的 変 化 を 誘 起 し な か っ た 。 血 中 ヒ ア ル ロ ン 酸 濃 度 は 、 偽 手 術 群 と 比 較 し て 胆 管 結 紮 単 独 処 置 群 で 有 意 に 高 値 を 示 し た 。 し か し 、 胆 管 結 紮 に 加 え て ヒア ル ロ ン 酸 の 投 与 を 行 っ た 群 で は 、 胆 管 結 紮 単 独 処 置 群 よ り 血 中 ヒ ア ル ロ ン 酸 濃 度 は 低 値 を 示 す 傾 向 に あ っ た 。 ま た 、 ヒ ア ル ロ ン 酸 分解 酵 素 で あ る H y a l u r o n i d a s e 1 の 肝 臓 内 で の 遺 伝 子 発 現 量 は 、 胆 管
結 紮 に 加 え て ヒ ア ル ロ ン 酸 を 投 与 す る こ と で 増 加 す る 傾 向 を 示 し た 。ヒ ト の 肝 線 維 症 で は 、 ヒ ア ル ロ ン 酸 分 解 能 が 低 下 す る と い わ れ て い る 。 し か し 、 ニ ワ ト リ で は 、 胆 管 結 紮 に よ り 肝 線 維 化 が 生 じ て い る に も 関 わ ら ず 、 ヒ ア ル ロ ン 酸 の 投 与 で ヒ ア ル ロ ン 酸 分 解 酵 素 が 活 性化 し 、 そ の 結 果 と し て 肝 臓 の 組 織 学 的 変 化 が 生 じ な い こ と が 考 え ら れ た 。

本 研 究 で は 、 ニ ワ ト リ の 小 型 肝 細 胞 の 存 在 を 、 胆 管 結 紮 モ デ ル を用 い て 初 め て 報 告 し 、 そ の 組 織 学 的 特 徴 は 哺 乳 類 動 物 の 小 型 肝 細 胞 と 同 質 で あ り 、 肝 細 胞 に 分 化 す る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 胆 管 結 紮 単 独 処 置 に よ る 小 型 肝 細 胞 の 出 現 は 、 ラ ッ ト や マ ウ ス に は 認 め ら れ な い ニ ワ ト リ 特 有 の 現 象 で あ っ た 。 さ ら に 、 胆 管 結 紮 を 施 し たニ ワ ト リ は 、 ヒ ア ル ロ ン 酸 の 投 与 に よ り 、 肝 臓 内 の ヒ ア ル ロ ン 酸 分解 酵 素 が 活 性 化 し 、 小 型 肝 細 胞 を 含 め た 肝 臓 組 織 に 対 し て 影 響 を 示 さ な い こ と が 示 唆 さ れ た 。 小 型 肝 細 胞 は 、 肝 細 胞 の 機 能 と 高 い 増 殖 能 を 持 つ こ と か ら 、 自 己 の 細 胞 移 植 に よ る 肝 疾 患 の 治 療 へ の 貢 献 が 期 待 さ れ て い る 。 ニ ワ ト リ は 、 胆 管 結 紮 単 独 で 小 型 肝 細 胞 が 出 現 する 為 、簡 便 か つ 新 た な 実 験 的 肝 障 害 の モ デ ル 動 物 と し て 有 用 で あ り 、肝 再 生 機 構 や 肝 疾 患 の 解 析 へ の 貢 献 が 期 待 で き る と 考 え る 。

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