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大学・研究所にある論文を検索できる 「Mitochondrial pyruvate carrier 1 expression controls cancer epithelial-mesenchymal transition and radioresistance」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Mitochondrial pyruvate carrier 1 expression controls cancer epithelial-mesenchymal transition and radioresistance

高岡, 祐史 大阪大学

2021.02.28

概要

〔目的(Purpose)〕
癌細胞は通常、解糖系による嫌気的ATP産生がTCA回路および電子伝達系を介した好気的ATP産生より優位であるとされている。これはワールブルグ効果として知られている。MPC(Mitochondrial pyruvate carrier)はミトコンドリア内膜に存在するピルビン酸のミトコンドリアへの取り込みを行うタンパク質であり、MPC1.2および3のサブタイプの存在が知られている。近年の研究では癌細胞においてMPC1は正常細胞と比較して低発現であり、一方でMPC2は高発現であることが報告された。このサブタイプごとの発現ミスマッチの理由に言及した報告はないが、我々の先行研究でMPC1の発現を抑制した肝内胆管癌細胞において上皮間葉転換(EMT)が認められた。今回我々はMPCの発現抑制を用いてEMTのメカニズムの解明と治療抵抗性への影響を検討した。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
我々はTCGAデータベースとreal-time PCRを用いて、膵臓癌細胞株と結腸直腸癌細胞株のMPC1.2の発現を比較し、発現抑制に適した細胞株としてHT29、CaR1とMIAPaCa-2を選択した。まずsiRNAを用いてMPC1.2発現を抑制した株を作成したところ、MPC1抑制株で紡錘形への細胞形態変化が認められた。PCRを用いた検討ではCDH-1の発現低下とFN1の発現亢進を示した。間葉系細胞の特徴を示し、wound healing assayでもMPC1抑制株で遊走能の有意な亢進が認められた。次にMPC1抑制が引き起こすEMTの原因としてグルタミン代謝系に着目した。Glutaminase(GLS)はグルタミンをミトコンドリアに取り込む上で関与する酵素であり、GLS抑制細胞株のEMTマーカーをreal-time PCRとWestern blotで調べたところCDH1マーカー亢進が認められた。次にMPC1抑制株をグルタミンfreeの培地で培養したところE-cadherin発現が野生株と同程度まで改善し、グルタミン代謝物であるグルタミン酸を添加したところその変化はグルタミン含有培地と同程度まで低下した。さらにMPC抑制がGLSの発現亢進を引き起こすことをWestern blotで確認した。加えてMPC1の発現抑制細胞株をグルタミンfreeの培地で確認したところCDH1の発現がコントロール株と同程度まで改善することも確認された。

次にcolony formation assayを用いてMPC抑制が放射線治療の抵抗性に与える影響を検討したところ、MPC1抑制株は野生株に比して放射線照射後のコロニー生存率についても有意な亢進を認めた。解糖系に付随するペントースリン酸経路は主要なラジカルスカベンジャーであるGSHの産生経路として知られており、MPC抑制による解糖系の亢進が考えられた。

〔総括(Conclusion)〕
MPC1の発現低下によりグルタミンのミトコンドリア中への取り込み・代謝が亢進しEMTが促進され、さらには放射線感受性の低下も誘導することが確認された。本研究は、MPCによる癌のEMTメカニズムと放射線治療抵抗性獲得機構の一旦を初めて示した研究である。