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大学・研究所にある論文を検索できる 「Susceptibility of pancreatic cancer stem cells to reprogramming」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Susceptibility of pancreatic cancer stem cells to reprogramming

野口, 幸藏 大阪大学

2021.01.31

概要

〔目的(Purpose)〕
膵癌の5年生存率は全体でわずか9%と予後不良である.その理由として化学療法を中心とした集学的治療に対する高い治療抵抗性が挙げられる.癌組織は不均一な細胞集団であり,特に癌幹細胞と呼ばれる造腫瘍能と抗癌剤耐性を有する細胞分画が治療抵抗性に関与することが知られているが,癌幹細胞を標的とした治療戦略は確立していない.これまでの研究では大腸癌細胞株に対してOCT3/4,SOX2,KLF4,cMYCの4転写因子を導入(以下,リプログラミング)することで,癌細胞が胚性幹細胞(ES細胞)に類似した表現型に変化し,抗癌剤感受性が逆に増強することが示された.しかし,治療標的として重要な癌幹細胞がリプログラミングに対して感受性を有するかは明らかではない.本研究では,膵癌における癌幹細胞分画と非癌幹細胞分画それぞれのリプログラミング効率を評価することを目的とした.

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
膵癌細胞株PANC-1に対し,センダイウイルスをベクターとして,先の4転写因子を導入しリプログラミングを行った.リプログラミング効率の評価は,ALP活性の評価およびOct3/4,Sox2,Nanog,Tra-1-60のタンパク発現を蛍光免疫染色法での観察により評価した.多能性の評価は,リプログラミング後にランダム分化誘導を行い,3胚葉分化マーカーの発現をqRT-PCR法にて測定した.また膵癌の癌幹細胞マーカーとして既に報告されているc-Metを用いて,FACSにより高発現群,低発現群に分離し,それぞれのリプログラミング効率について評価した.さらに特異的c-Met阻害剤であるSU11274曝露下でのリプログラミング効率の評価も行った.

PANC-1に4転写因子を導入し,ES培地にて3週間培養した後に形成されたコロニーのうち2.2%がALP染色に強染であった.蛍光免疫染色法では,これらのコロニーはOct3/4,Sox2,Nanog,Tra-1-60が陽性であった.さらに分化誘導開始1週間後に行った3胚葉マーカーのqRT-PCRは,コントロールに比してTUBB3,PPARγ,HNF4Aが有意に高値であり,リプログラミングによってES細胞様の表現型を呈することが示された.またリプログラミングされたPANC-1では,親株に比してgemcitabineに対する感受性の上昇を認めた.次に,PANC-1のc-Met発現をFACSにて測定した結果,1.2%がc-Met高発現群であった.c-Met高発現群と低発現群の2群間においてsphere formation assayでは,c-Met高発現群はprimary sphereが2.1倍,secondary sphereが2.9倍多く形成され(p<0.01),NOD/SCIDマウスへの皮下移植実験では,c-Met高発現群の腫瘍形成能は2.4倍高かった(p<0.01).またMTTアッセイではgemcitabineに対して有意に高い薬剤耐性を示した(p<0.01).次に,c-Met高発現群と低発現群それぞれのリプログラミング効率をALP染色にて評価した.c-Met低発現群のリプログラミング効率は3.2%であったのに対し,c-Met高発現群は9.3%であり,c-Met高発現群は2.9倍のリプログラミング効率を示した(p<0.01).そこで両群間のリプログラミング効率差を検証するために,mRNAアレイ解析のGSEAを行ったところ,c-Met高発現群は低発現群に比してES細胞分化早期段階のmRNA発現パターンにより近い表現型であることが示された.最後にSU11274(500nM)曝露下での4転写因子の導入によるリプログラミングでは,c-Met高発現群,低発現群ともにALP染色陽性コロニーは確認されなかった.これよりリプログラミングされる細胞群は,c-Met陽性の癌幹細胞群である可能性が示唆された.

〔総括(Conclusion)〕
これまでに我々は消化器癌に対するリプログラミングは癌の悪性度が減弱することを示してきたが,本研究では,膵癌において癌幹細胞性の高いc-Met高発現群がより高いリプログラミング効率を有することを示した.さらにc-Met高発現群はES細胞に近いmRNA発現パターンであり,c-Metシグナル阻害下ではALP染色陽性細胞が出現しないことから,膵癌ではc-Metシグナルがリプログラミングに対して重要である可能性が示唆された.癌幹細胞は従来治療抵抗性であるが,一方でリプログラミングのようなepigeneticな変化を生じやすく,その結果治療抵抗性を減弱できる可能性があり,epigeneticな操作を従来の癌治療と併用することで,癌幹細胞を標的とした治療戦略が構築できる可能性が示唆された.

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