リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「小型化・高電力密度化を実現する車載用電力変換器の制御系設計に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

小型化・高電力密度化を実現する車載用電力変換器の制御系設計に関する研究

川上 太知 大阪府立大学 DOI:info:doi/10.24729/00017764

2022.07.21

概要

近年,エネルギー資源の枯渇化や地球温暖化といった地球環境問題が大きく取り上げられ て い る 。 こ の よ う な 背 景 に よ り , 2015 年 に は 第 21 回 国 連 気 候 変 動 枠 組 条 約 締 約 国 会 議 (COP21)において,京都議定書に代わる2020年以降の温室効果ガス削減等のための新たな国 際枠組みとして,パリ協定が採択された(1)。また,同年の国連総会においても「持続可能な 開 発 の た め の 2030ア ジ ェ ン ダ 」 に 記 述 さ れ た 2030年 ま で の 17の 世 界 的 目 標 で あ る SDGs (Sustainable Development Goals) が採択された。そのうち,「7:すべての人々の,安価かつ 信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」及び「13:気候変動及び その影響を軽減するための緊急対策を講じる」が達成すべき目標として掲げられている。日 本においてもこれらの目標を達成すべく,様々な検討がされている(2)。

温暖化対策のための取り組みとして,2020 年 10 月 26 日に菅総理大臣は所信表明演説に おいて,2050 年までに温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルの実現を宣 言し,さらに 2021 年 4 月 22-23 日に開催された米国主催気候サミットにおいて,温室効果 ガスを 2013 年度比で 46%削減を目指すとともに,さらに 50%の高みに向けて挑戦を続けて いく決意を表明した。この目標値は他の主要排出国と比較しても高い目標値である(3)。

日本のCO2排出量を部門別で表したものを図1.1に示す(4)。2019年において,国内のCO2総 排出量の内,約2割を運輸部門が占めている。運輸部門には自動車,鉄道,航空機,船舶が 含まれるが,その大部分を自動車が占める。そのため,CO2排出量削減に向けて自動車の燃 費規制が厳しさを増しており,環境性能に優れたハイブリッドカーや電気自動車といった次 世代自動車へ多様なニーズが強くなってきている(5),(6)。

温室効果ガスの排出を抑制し持続可能な社会を形成する上で省エネ化の追求は様々な分 野において共通の認識となっており,その省エネ化を支えるコア技術となるのがパワーエレ クトロニクスである。パワーエレクトロニクスはパワー半導体を用いて電気を所望の状態に 効率的に変換するための電力工学,電気工学,制御工学の融合技術であり,その技術はパワ ー半導体デバイスの発展に伴い,身近な家電機器をはじめ,情報・通信機器,電気自動車や 新幹線といった輸送機器,さらには太陽光発電や風力発電といった新エネルギー発電機器ま で電気を取り扱う幅広い分野で応用されている(7)-(9)。パワーエレクトロニクス技術が用いられる電力変換器は大きく分けて,直流を交流に変換するDC-ACインバータ,直流を別の直流 に変換するDC-DCコンバータ,交流を直流に変換するAC-DCコンバータ,交流を別の交流に 変換するAC-ACコンバータがあり,用途に応じて必要とされる電圧や周波数に変換するた めに利用される。環境問題への本格的な対応が重視される社会情勢の中で,今後パワーエレ クトロニクス市場は着実に拡大していくことが予想される。そして同時にパワーエレクトロ ニクス技術を発展させ,電力変換器の一層の小型化,高効率化,高信頼性等,高度な技術要 求をクリアしていく必要がある。

その中で,国内自動車メーカーの最大手であるトヨタ自動車は各種エコカー開発に必要な 要素技術を含み,様々な燃料と組み合わせることができるハイブリッド技術を「21世紀の環 境コア技術」と位置付け,エコカーの更なるラインナップの拡充に努め,環境への貢献を進 めていくとしている(10)。HEVは電気モータと内燃機関の双方の長所を組み合わせたような 自動車である。しかし,HEVには内燃機関が搭載されているため,EVとは違い走行時のCO2 の発生を防ぐことは出来ない。そのため,CO2の排出量削減に対しては,燃費を向上させる ことで対応していくことになる。図1.2にHEVのパワートレインシステムを示す(11)-(13)。基本的にはメインのバッテリーからインバータを介して AC モータを駆動させる。一方 で,走行性能を上げるためのモータの高出力化の要望に対し,図 1.2 のようにインバータの 前段にバッテリー電圧を昇圧するためのコンバータ(昇圧型 DC-DC コンバータ)を用いて モータの印加電圧を高電圧化させたシステムの採用事例が増えきている。特に,新たに加え られた昇圧型 DC-DC コンバータは車内の居住スペースと燃費性能の観点から小型化,高効 率化,高電力密度化が強く求められる。

本要求に対して,車載用電力変換器は大電力駆動のため,マルチフェーズ方式が採用され ることが多い。この方式は単相 DC-DC コンバータを並列に多段接続し,スイッチングの位 相をシフトさせるインターリーブ動作を行っている(14)-(17)。これにより,スイッチング周波 数を上げること無くキャパシタの充放電に伴う電荷変動が低減できる。従って,静電容量の 低いキャパシタでの設計が可能となるため,回路の容積増加の主要因の一つであるキャパシ タの小型化が実現できる。さらに,インダクタ電流が各相に均等に分流するため,1 相あた りの導通損が低減できるだけでなく,パワー半導体デバイスに流れる電流も相数分低くなる。 そのため,従来よりも定格電流の低いパワー半導体デバイスを使うことが可能となる。さら に,電力を単相から各相に分割することもできるため,設計可能な電力レンジを単相時から 相数倍にすることも可能となる。

しかし,回路トポロジを改良することは電力変換器の小型化・高効率化・高電力密度化に ついて有効だが,電源の制御系において二つの問題点を有している。一つは制御系のモデリ ングが非常に複雑になってしまうことである。駆動相数の増加に伴い,制御モデルが複雑化してしまうため,電源の解析をするにあたって障壁となってしまう。もう一つは昇圧型 DC- DC コンバータ自身の制御系に不安定要素を含んでいるということである。この不安定要素 は重負荷であるほど不安定になるため,車載用電力変換器のような大電流アプリケーション においては非常に問題となる。

そこで,本論文では車載用電力変換器に用いられる昇圧型 DC-DC コンバータの小型化・ 高電力密度化を実現するための制御系を研究の対象とする。

この論文で使われている画像

参考文献

1章 緒論

(1) 外務省 ウェブページ「2020 年以降の枠組み:パリ協定」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html (2020)

(2) 環境省 ウェブページ「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ/SDGs」 https://www.env.go.jp/earth/sdgs/ (2020)

(3) 環境省,「日本の排出削減目標」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000121.html (2022 年 1 月 11 日)

(4) 国土交通省 ウェブページ,「運輸部門における二酸化炭素排出量」 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html (2021 年 4 月)

(5) 水谷良治,立花武,森本雅之,赤津観,星伸一:「自動車の低燃費化に貢献する電動 化技術」,電気学会部門誌 D, Vol. 135, No. 9, pp. 884-891 (2015)

(6) 森田賢治,桑田雅敏:「電動車両の開発動向」,JARI Research Journal JRJ20140903 (2014)

(7) 財団法人エネルギー総合工学研究所,「新エネルギーの展望 パワーエレクトロニク ス」(2008 年 3 月)

(8) 河村篤男:「現代パワーエレクトロニクス」,数理工学社 (2005)

(9) 伊東淳一 , 伊東洋一:「パワーエレクトロニクス技術教科書」,トランジスタ技術 SPECIAL, CQ 出版社 , No. 12 (2014)

(10) トヨタ自動車ホームページ,20th PRIUS,「受け継がれるハイブリッド技術」 https://newsroom.toyota.co.jp/jp/prius20th/innovation/tech/(2017 年 8 月 4 日)

(11) 小林徹也:「デンソーにおける HV/EV 向け製品開発」,デンソーテクニカル レビュー,Vol. 16, pp. 16-22 (2007)

(12) 中島優,菊池隆二,北澤成,富田芳樹,小杉肇,金子高久:「小型車用パワーコント ロールユニットの開発」,自動車技術会 2016 年春季大会学術講演会講演予稿集, 20165433,pp.2320-2325 (2016)

(13) 山本真義:「4 代目プリウスの PCU 分解から紐解く車載パワーデバイスの技術動向 予測」,車載テクノロジー(4 月号),技術情報協会,pp.125-131 (2017)

(14) 中納啓介,石倉啓太:「DC/DC コンバータのマルチフェーズ化による小型・高効率 化の検討」,信学技報, Vol. 116,No. 133,pp. 1-6 (2016)

(15) 北村達也・山田正樹・原田茂樹・小山正人:「SiC を用いた高パワー密度を用いた高 パワー密度インターリーブ DC/DC コンバータの開発」,電気学会部門誌 D,Vol. 134, No. 11,pp. 956-961 (2014)

(16) M. T. Zhang, M. M. Jovanovic, and F. C. Lee, “Analysis and evaluation of interleaving technique in forward converters,” IEEE Trans. on Power Electronics, Vol. 13, No. 4, pp. 690– 698 (1998).

(17) 望月賢人,冨永麗司,湊純司,中井久史:「小型高出力車載充電器の開発」,パナソ ニック技報,Vol. 61,No. 1,pp.47-51 (2015)

第2章 DC-DC コンバータの制御系

(1) R. D. Middlebrook , S. Cuk, "A general unified approach to modelling switching converter power stages", IEEE Power Electronics Specialists Conference (PESC), pp. 18-34 (1976)

(2) T. Ninomiya, M. Nakahara, T. Higashi and K. Harada, "A unified analysis of resonant converters," in IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 6, No. 2, pp. 260-270 (1991)

(3) A.F. Witulski; R.W. Erickson : “Extension of state-space averaging to resonant switches and beyond”, IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 5, No. 1, pp. 98-109 (1990)

(4) 川上 太知,山本 真義:「マルチフェーズ方式 DC-DC コンバータの数学的モデリン グにおける低次元化手法の提案」,電気学会部門誌 D,Vol. 137,No. 3, pp. 207-212(2017)

(5) M. Truntič and M. Milanovič, "Voltage and Current-Mode Control for a Buck-Converter based on Measured Integral Values of Voltage and Current Implemented in FPGA," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 29, No. 12, pp. 6686-6699 (2014)

(6) B. Bryant and M. K. Kazimierczuk, "Voltage loop of boost PWM DC-DC converters with peak current-mode control," in IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers, vol. 53, no. 1, pp. 99-105 (2006)

(7) S. Saggini, D. Trevisan, P. Mattavelli and M. Ghioni, "Synchronous–Asynchronous Digital Voltage-Mode Control for DC–DC Converters," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 22, No. 4, pp. 1261-1268 (2007)

(8) G. Garcera, E. Figueres and A. Mocholi, "Novel three-controller average current mode control of DC-DC PWM converters with improved robustness and dynamic response," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 15, No. 3, pp. 516-528, (2000)

(9) K. I. Hwu, W. Jiang and J. Shieh, "Analysis and design of type 3 compensator for the boost converter based on PSIM," 2018 13th IEEE Conference on Industrial Electronics and Applications (ICIEA), pp. 1437-1442 (2018)

(10) K. I. Hwu, J. Shieh and W. Jiang, "Analysis and design of type 3 compensator for the buck converter based on PSIM," 2018 13th IEEE Conference on Industrial Electronics and Applications (ICIEA), pp. 1010-1015 (2018)

第3章 低次元化モデリング手法

(1) A. Villarruel-Parra and A. J. Forsyth, "Enhanced Average-Value Modeling of Interleaved DC– DC Converters Using Sampler Decomposition," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 32, No. 3, pp. 2290-2299 (2017)

(2) O. F. Ruiz and I. Cervantes, "Averaged modeling of transformer-coupled interleaved boost converters," IECON 2012 - 38th Annual Conference on IEEE Industrial Electronics Society, pp. 256-261 (2012)

(3) P. Azer and A. Emadi, "Generalized State Space Average Model for Multi-Phase Interleaved Buck, Boost and Buck-Boost DC-DC Converters: Transient, Steady-State and Switching Dynamics," IEEE Access, Vol. 8, pp. 77735-77745 (2020)

(4) F. H. Dupont, C. Rech, R. Gules and J. R. Pinheiro, "Reduced-Order Model and Control Approach for the Boost Converter With a Voltage Multiplier Cell," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 28, No. 7, pp. 3395-3404 (2013)

(5) H. Mao, L. Yao, C. Wang and I. Batarseh, "Analysis of Inductor Current Sharing in Nonisolated and Isolated Multiphase dc–dc Converters," IEEE Transactions on Industrial Electronics, Vol. 54, No. 6, pp. 3379-3388 (2007)

(6) J. A. Morales-Saldana, J. Leyva-Ramos, E. E. Carbajal-Gutierrez and M. G. Ortiz-Lopez, "Average Current-Mode Control Scheme for a Quadratic Buck Converter With a Single Switch," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 23, No. 1, pp. 485-490 (2008)

(7) N. Jantharamin, L. Zhang: “Analysis of multiphase interleaved converter by using state-space averaging technique”, Electrical Engineering/Electronics, Computer, Telecommunications and Information Technology(ECTI-CON), pp.288-291 (2009)

(8) 川上 太知,山本 真義:「マルチフェーズ方式 DC-DC コンバータの数学的モデリン グにおける低次元化手法の提案」,電気学会部門誌 D,Vol. 137,No. 3, pp. 207-212(2017)

第4章 電力平衡モード制御

(1) 川上 太知,山本 真義:「マルチフェーズ方式 DC-DC コンバータの数学的モデリン グにおける低次元化手法の提案」,電気学会部門誌 D,Vol. 137,No. 3, pp. 207-212(2017)

(2) T. Kawakami, K. Yamada, K. Umetani, S. Morimoto, “Design and Analysis of Power Balance Mode Control using Digital Control for Boost-type DC-DC Converter,” IEEJ Transactions on Electrical Engineering (TEEE), Vol. 17, No. 5, accepted for publication

(3) S. -C. Tan, Y. M. Lai and C. K. Tse, "General Design Issues of Sliding-Mode Controllers in DC–DC Converters," IEEE Transactions on Industrial Electronics, Vol. 55, No. 3, pp. 1160- 1174 (2008)

(4) Siew-Chong Tan, Y. M. Lai, C. K. Tse and M. K. H. Cheung, "Adaptive feedforward and feedback control schemes for sliding mode controlled power converters," IEEE Transactions on Power Electronics, Vol. 21, No. 1, pp. 182-192, (2006)

(5) S. K. Kollimalla, M. K. Mishra and Lakshmi Narasamma N, "Analysis and control of DC- DC converters using average power balance control (APBC) in solar power applications," 2014 IEEE Students' Conference on Electrical, Electronics and Computer Science, pp. 1-6(2014)

(6) S. K. Kollimalla and M. K. Mishra, "Analysis and control of DC-DC boost converter using average power balance control (APBC)," 2012 4th International Conference on Intelligent and Advanced Systems (ICIAS2012), pp. 513-518 (2012)

(7) Arnab, G., Subrata, B., Mrinal, K-S., Priyanka, D. : “Design and implementation of type-II and type-III controller for DC-DC switched-mode boost converter by using K-factor approach and optimization techniques”, IET Trans. Power Electron, Vol.9, No.5, pp.938-950 (2016)

(8) N.D, Muhamad., M.R, Sahid., N.N, Idris., M.S, Ayob. : “Design of Power Stage and Controller for DC-DC Converter Systems Using PSPICE”, International Conference on Power Electronics and Drive Systems (PEDS2005), pp.904-908 (2005)

参考文献をもっと見る

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る