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大学・研究所にある論文を検索できる 「PDGFRα knockout mice promote tumor growth and metastasis via vascular hypoplasia and PDGF-stimulated EGFR activation in LLC (Lewis Lung Carcinoma) subcutaneous transplantation model」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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PDGFRα knockout mice promote tumor growth and metastasis via vascular hypoplasia and PDGF-stimulated EGFR activation in LLC (Lewis Lung Carcinoma) subcutaneous transplantation model

林 政雄 富山大学

2021.09.28

概要

〔目的〕
Platelet-derived growth factor receptor (PDGFR)-α と PDGFRβ は、間葉系細胞の主要な増殖因子とされる PDGF リガンドの受容体であり、がんの発生やがん微小環境の形成への関与が疑われている。本研究では、Pdgfra 遺伝子のノックアウトマウスの皮下にマウス由来の肺癌細胞である Lewis Lung Carcinoma( LLC) 細胞を移植し、腫瘍の発育動態に宿主の PDGFRα がどのように関与しているかを検討した。

〔方法並びに成績〕
8-10 週齢でタモキシフェンを 5 日間経口投与し、Pdgfra 遺伝子のノックアウトを誘導したマウス( α-KO) と control の Flox マウスに対し、右側腹部に 1.0×105 個の LLC- EGFP 細胞を皮下注射し定着させ、エンドポイントと定めた 21 日後に安楽死させた。得られた原発巣について、H&E 染色と各種免疫染色の画像解析( Flox 6 匹、α-KO 7匹)、RT-PCR による mRNA 発現解析( Flox 4 匹、α-KO 5 匹) を実施した。移植 21 日後の右側腹部原発巣は α-KO で有意に増大した( Flox 499.42mm3、α-KO 860.15mm3)。 α-KO では壊死部の面積の比率が有意に高く、RT-PCR では Hif1a mRNA の発現も有意に高かった。血管新生因子についても Vegfa、Vegfc mRNA の発現が α-KO で有意に高 く、免疫染色の画像解析でも同様の傾向があった。一方で、血管新生抑制因子の Vash1 mRNA の発現が α-KO で有意に高かった。画像解析では CD31 陽性の腫瘍血管は両遺伝子型で差がなかったのに対し、血管基底膜の Collagen type Ⅳは α-KO で有意に高く、内皮細胞は脱落し基底膜成分のみが残存した Empty sleeve が α-KO で多くみられた。これらのことから、血管のリモデリング( 新生と退縮) が α-KO で亢進していることが示唆された。また、day14 の免疫染色では、α-KO において腫瘍血管の減少傾向があり、腫瘍周囲の間質の PDGFRα と PDGFRβ の発現が低下していた。

原発巣では、Pdgfb、Pdgfc、Pdgfra、Pdgfrb mRNA 発現は Flox に比して α-KO で増加傾向があり、免疫染色では両遺伝子型とも同様に PDGFRα が腫瘍細胞に陽性、PDGFR βは血管周囲の周皮細胞に陽性、PDGF-BB が辺縁の腫瘍細胞により強く発現し、 PDGF-CC は腫瘍全体に薄くびまん性に弱陽性であった。このような観察結果から、腫瘍の増殖に PDGF-BB, -CC による PDGFRα を介した細胞シグナルが関与すると考えられた。ヒト肺癌の増殖因子として知られる EGF family リガンドは Btc、Hbegf、Tgfa mRNA の発現が α-KO で有意に増加していた。PDGF シグナルと EGF シグナルの関連性を明らかにするため、培養した LLC-EGFP 細胞を PDGF-BB、-CC で刺激する実験を行い、24 時間後に Tgfa mRNA 発現が刺激群で有意に増加することを見出した。さらに、 PDGF-BB 24 時間刺激の LLC-EGFP 細胞の Western blot を行ったところ、刺激群で EGFR, phospho-EGFR の発現が増加していることを確認した。これらの解析結果から、 LLC-EGFP 細胞は PDGF-PDGFRα シグナルが TGF-α 産生を増強し、EGFR のリン酸化を誘導し、LLC-EGFP 細胞自身の増殖を促したと考えられた。

肺転移に関しては、転移体積( Flox 0.89mm3、α-KO 8.21mm3)、転移数( Flox 1.17 個、α-KO 4.86 個) とも有意に α-KO で多かった。転移の原因として、α-KO の原発巣の血管のリモデリングの亢進により透過性の高い腫瘍血管が生じていることが挙げられ る。さらに、α-KO の原発巣では EMT( Epithelial-Mesenchymal transition) を誘導するとされる Tgfb mRNA が有意に増加し、EMT 因子の Snai1、Zeb2 mRNA 発現も有意に増加した。これらの結果から、α-KO マウスの原発巣微小環境において、低酸素が HIF-1α
の活性化を誘導し、TGF-β の発現を介して Snail、ZEB2 の発現を増加させることにより EMT を促進し、その結果肺転移を促進したと推定した。また、TGF-β は T 細胞の動員を抑制しているという報告があり、腫瘍内の CD3、CD8 陽性細胞数が α-KO で有意に 低下していることから、TGF-β の発現増加による腫瘍免疫の低下によって、腫瘍の増大や転移に影響した可能性が示唆された。

〔考察〕
本研究では腫瘍に由来する PDGF の paracrine シグナルが非腫瘍性の間葉系細胞に及ぼす影響を検討した。α-KO マウスへの PDGF-BB を過剰発現する LLC の移植は、高度の壊死性変化を伴った腫瘍の増大と転移の増加をもたらした。これらには HIF-1α の高発現をともなう低酸素環境が見られ、①VEGF と Vash1 が関与する血管の不安定性②過剰な PDGF-BB による腫瘍細胞の TGF-αの産生と autocrine による EGFR の活性化、それに伴う腫瘍の増殖③低酸素による腫瘍細胞の TGF-βの産生増加④TGF-βを介した EMT の促進⑤血管の不安定性や TGF-β の増加に伴う腫瘍免疫の低下の関与が示唆された。これらの背景には、α-KO マウスの結合組織における既報の血管形成能の低下と、結合組織での PDGFR 減少によって過剰となった LLC 由来の PDGF が LLC の増殖を誘導したことが相まって、移植後の早期より低酸素環境が誘導され易かったことが関与したと推定された。原発巣の増大以上に大きな差があった肺転移には肺組織の PDGFRα発現抑制がもたらす転移前 niche への影響の関連が想定され、今後の検討課題である。

〔総括〕
宿主の PDGFRα シグナルの抑制が、がん微小環境の低酸素状態をもたらすことにより腫瘍の病態を増悪させる機序を明らかにした。間質細胞に発現している PDGFRαは、原発巣の増大に関与する EGF や VEGF のシグナルの調節や腫瘍免疫そして遠隔転移において、宿主に対して保護的な役割を果たしていることが立証された。

本研究の臨床的意義については、微小環境を形成している非腫瘍細胞成分ではな く、腫瘍細胞選択的に PDGFRα シグナルを阻害することが、がん患者治療の上で考慮される必要があることを示唆している。このことは、抗がん剤として期待されるチロシンキナーゼ阻害薬を用いたヒトの治療方策に重要な示唆を与えるものである。

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