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大学・研究所にある論文を検索できる 「中年期2型糖尿病者と非糖尿病者における認知機能と匂いの識別、バランス能力、および筋力との関係」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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中年期2型糖尿病者と非糖尿病者における認知機能と匂いの識別、バランス能力、および筋力との関係

緑川, 学 筑波大学

2022.11.24

概要

【目 的】
 糖尿病(diabetes mellitus:以下DM)は認知症の危険因子であり、その発症リスクは約2倍であると報告されている。
 近年、認知症や軽度認知障害者(mild cognitive impairment:以下MCI)の早期発見に嗅覚や身体機能が注目されている。匂いの識別低下が、高齢者やMCI、アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease:以下AD)で報告されている。また、身体機能では歩行速度やバランス能力の低下、下肢機能の低下が高齢者の認知機能低下やMCI者のAD発症と有意に関連している報告がある。高齢の2型糖尿病者(type 2 diabetes mellitus:以下T2D)においても、匂いの識別低下や身体機能低下が、認知機能低下と関連している報告がある。しかし、中年期T2D者の認知機能と嗅覚機能および身体機能との関係を同時に調査した研究は、我々が調査した限りは存在しない。また、DMのない中年者でもこのような関係は報告されていない。
 そこで本研究では認知機能低下を早期発見するためのバイオマーカーを明らかにするために、中年期のT2Dおよび非DM者の認知機能と嗅覚機能および身体機能との関係を調査することを目的とした。さらに、重心動揺計とトルクマシンを使用した正確なバランスと筋力の評価が、T2Dの有無にかかわらず中年の成人の認知機能障害を予測するのに役立つかどうかを調査した。

【対象と方法】
 対象は、臨床的に明らかな認知障害がない40歳以上65歳未満のT2D者70名(女性28名、平均年齢53±7歳)と非DM者81名(女性47名、平均年齢52±6歳)。認知機能は、Japanese version of Montreal Cognitive Assessment(以下MoCA)、Wisconsin Card Sorting Test(以下WCST)、Trail making test Part A/B(以下TMT-A/B)、簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology-Self-report:以下QIDS)、やる気スコア(The Japanese version of the Starkstein Apathy Scale:以下SAS)で評価した。嗅覚検査は、OpenEssence(以下OE)を用いた。筋力は、握力、膝伸展筋力、膝伸展筋持久力で、バランスは、片脚立位検査(one-leg standing time:以下OLST)、Timed Up and Go(以下TUG)、姿勢安定度評価指標(Index of Postural Stability:以下IPS)で評価した。
 T2D群と非DM群の群間比較は、対応のないt検定、Mann-Whitney U検定、Fisherの正確確率検定を用いた。全体群とT2D群、非DM群と関連因子の検討には、Spearmanの順位相関係数および重回帰分析を行った。

【結 果】
 T2D群は、非DM群と比較して、喫煙者、高血圧、脂質異常症の割合が有意に高く、女性、アポリポタンパクEε4保因者の割合が有意に低く、教育歴が有意に短かった。また、T2D群はBody Mass Index、体脂肪率、骨格筋指数が有意に高く、骨格筋率は有意に低かった。認知検査、握力を除く筋力、およびバランスは、T2D群が有意に低下していた。全対象者の重回帰分析結果は、OEはTMT-Aと有意に関連しており、IPSはQIDSとSASを除くすべての認知検査と有意に関連していた。また、膝伸展筋力は、TMT-B、SASと有意に関連していた。非DM群では、IPSはTMT-Aと有意に関連していた。T2D群では、OEはMoCAおよびTMT-Bと有意に関連しており、IPSはQIDSとSASを除くすべての認知検査と有意に関連していた。また、膝伸展筋力はSASと有意に関連していた。

【考 察】
 中年期T2Dでも記憶力、注意力、実行機能、情報処理能力が低下し、うつ病と無関心の有病率が高く、対照群に比べ嗅覚機能やバランス能力および下肢筋力が低下していることが報告されている。高齢者の開眼OLSTはMoCAの成績や記憶力、処理速度、および実行機能と有意に関連していることが報告されており、重心動揺計で測定したバランス能力は、高齢者の認知障害の重症度の増加やテント上脳脊髄液量、白質高信号量、および認知症評価尺度と有意に関連していることが報告されている。高齢者の膝伸展筋力は実行機能と有意に関連し、10年後の認知機能低下と有意に関連することが報告されている。さらに、嗅覚閾値、嗅覚識別、嗅覚記憶からなる嗅覚行動スコアが、T2D者のMoCA、単語の流暢性、実行機能と有意に相関していることも報告されている。脳萎縮は、T2Dの認知症のない中年成人にも存在することが報告されており、中年期T2D者は同年代の健常者に比較し、脳の微細構造の異常がみられることも報告されている。
 今回、我々の研究でみられた認知機能と匂いの識別、バランス能力、および筋力の関連から、脳機能の低下や関連の脳領域をつなぐ機能的結合の異常などが起きている可能性があると考えられた。

【結論】
 中年期T2D者は、非DM者と比較して、認知機能、嗅覚機能、バランス能力、および下肢筋力が低下していた。匂いの識別、重心動揺計で評価されたバランス能力、およびトルクマシンで測定した膝伸展筋力は、中年期T2D者の認知機能低下の独立した危険因子であった。特に、IPSは、幅広い認知機能と有意な関連が認められており、認知機能低下の早期発見に役立つ可能性があると考えられた。

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