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大学・研究所にある論文を検索できる 「A Study on Integrated Thermal Control to Improve Intellectual Work Performance」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A Study on Integrated Thermal Control to Improve Intellectual Work Performance

Ueda, Kimi 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23289

2021.03.23

概要

情報化社会の発展に伴い、我々人間が担う作業においてオフィスワーク等の知的作業の重要性が高まっている。従来から一般的なオフィスでの勤務のみならず、働き方の多様化や感染症対策のために近年日本でも普及した在宅勤務も視野に入れた知的作業パフォーマンスの向上は、労働衛生の向上や勤務時間の短縮、省エネルギーに寄与し得る。本論文は、知的作業パフォーマンス向上を狙った執務環境制御手法である「統合温熱制御」を提案し評価した結果をまとめたものであり、5章からなっている。

第1章は序論で、知的作業パフォーマンスの向上を目指すにあたって、我が国の現状を踏まえつつ、従来から広く行われてきたオフィスでの勤務だけでなく、在宅勤務も視野に入れることの必要性について、省エネルギーや感染症対策の観点から述べている。知的作業パフォーマンス向上策として、オフィス勤務と在宅勤務のいずれにも導入が可能である方法である環境制御に着目することを述べており、執務時の環境と知的作業パフォーマンスの関係について既往研究に基づいて言及している。これらを踏まえ、作業中と休憩中の両方を温熱制御対象とし、一日を通して効率的な知的作業パフォーマンスの向上を狙った「統合温熱制御(以下、ITC:
Integrated Thermal Control)」を提案し、本論文の研究目的が ITC の評価であることを示している。ITC の評価に際して、本論文で検討する体感温度変化のための温熱要因として温度と気流を選定したこと、および本論文を通して知的作業パフォーマンスを集中時間比率(以下、CTR: Concentration Time Ratio)を指標として評価することについて触れた後、本論文の構成について概説している。

第2章では、ITC を室温制御により実施した ITC-T (Temperature-based ITC) を実験により評価した内容について述べている。広く普及した温熱制御機器で制御可能であり、実際の執務環境への導入が容易であることから、体感温度を変化させるための温熱要因としてまず室温に着目している。さらに、特に日本では夏季日中の電力需要がひっ迫することから、夏季における温熱制御機器の利用法を検討する重要性を踏まえ、実験評価を夏に実施したことを述べている。ITC-T 導入時の環境と一般的なオフィスを模した標準的な温熱制御環境の二つの実験条件下で被験者実験を実施し、22 名の実験データを分析した結果から、ITC-T 条件下では、CTR が 3.2%ポイント高く、有意な差が認められたことから、知的作業パフォーマンスへ好影響があったと考えられると述べている。一方、その他の主観評価項目の結果は、ITC-Tが疲労等に対して悪影響を及ぼした可能性を示しており、ITC-T の改善策についても検討している。

第3章では、ITC-T により CTR が受ける影響のメカニズム分析を実施した内容について述べている。この分析はメカニズムを明らかにすることに加えて、第2章で見られたような ITC-T による悪影響への対策等に対する考察の充実も図ることを目的としている。第2章で得られた夏季の ITC-T 評価実験のデータに加えて、冬季に行われた ITC-T 評価実験のデータも用いて分析しており、メカニズム分析に利用する計 46 名の実験データについてまず説明した上で、共分散構造分析を利用した作業パフォーマンス変化メカニズムの分析手法について述べている。分析の結果から、ITC-T には季節に関わらず類似のパフォーマンス変化メカニズムがある可能性や、メカニズムに関わる主観的疲労に季節差があった点についての考察を示している。

第4章では、ITC を気流制御により実施した ITC-A (Airflow-based ITC) を実験により評価した内容について述べている。気流制御はエアコンの送風機能や扇風機等により実現可能であり、温度制御よりも省エネルギーが期待できるため、気流を第二の温熱制御方法として検討したと説明している。38 名が参加する被験者実験の結果、ITC-A 条件下では、一般的なオフィスを模した気流を提示しない標準制御条件下に比べて CTR が 2.8%ポイント高く、有意な差が認められたことから、知的作業パフォーマンスへ好影響があったと考えられると述べ、作業環境の印象等の主観評価項目においても好影響が見られたと示している。さらに、ITC-T と ITC-A を実施する際の電力消費を試算した結果から、ITC-A が ITC-T の 20%程度の消費エネルギーで知的作業パフォーマンスを向上できる可能性について述べている。

第5章は結論で、第2章から第4章で述べた内容をまとめ、それに基づいて本論文で提案した ITC が知的作業パフォーマンスの向上に寄与し得ると述べている。加えて、疲労や気分等への悪影響の防止には、体感温度や好みの個人差等を考慮して ITC を実施するための温熱制御要因の選択が必要であることや、温熱制御要因の選択により省エネルギーと知的作業パフォーマンスの向上を両立できる可能性についても述べている。また、今後の研究の展望として、情報技術のさらなる発展により知的作業の中で創造性の重要度が高まりつつあることや、再生可能エネルギーの利用促進等のエネルギー情勢の変化をうけ、 ITC が創造性に与える影響について検討する必要性や、環境配慮行動等の行動変容のために活用できる可能性について述べている。

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