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大学・研究所にある論文を検索できる 「The efficacy and toxicity of 4-day chemotherapy with methotrexate, etoposide and actinomycin D in patients with choriocarcinoma and high-risk gestational trophoblastic neoplasia」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The efficacy and toxicity of 4-day chemotherapy with methotrexate, etoposide and actinomycin D in patients with choriocarcinoma and high-risk gestational trophoblastic neoplasia

Sato, Shizuka 佐藤, 静香 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
絨毛癌および high-risk gestational trophoblastic neoplasia(GTN)に対する治療として、現在エトポシドを含むエトポシド、メトトレキサート、アクチノマイシン D、シクロフォスファミド、ビンクリスチン(EMA/CO)療法やメトトレキサート、エトポシド、アクチノマイシン D(MEA)療法が第一選択として広く普及している。MEA 療法は 1983年に松井らが考案した 5 日間の投与法である。当院では 1999 年より、重篤な副症状を回避するために 5-day MEA 療法を短縮した 4-day MEA 療法を行っている。本研究では絨毛癌および high-risk GTN に対する 4-day MEA 療法の効果と副症状について検討した。

【対象および方法】
1999 年 1 月より 2015 年 12 月の間に病理学的に絨毛癌と診断または臨床的に high- risk GTN と診断された患者 29 名を対象とした。4-day MEA 療法のレジメンを Table 1に示す。5-day MEA 療法のレジメンを基に、エトポシドとアクチノマイシン D を 1 日短縮し day1-4 で投与、周期は 14 日間に設定した。血清 human chorionic gonadotropin (hCG)値を治療前と週に 1-2 回測定し、血清 hCG 値が正常範囲(≦0.5IU/L)まで低下してから 4 コースの地固め療法を行い、その間 hCG 値が正常範囲内で推移したことを以て完全寛解と判断した。治療 2 コースに渡り hCG 値が不変または上昇した場合には治療抵抗性と判断した。副症状が強く day21 までに改善しない場合には次のコースをエトポシド、アクチノマイシン D(EA)療法に変更した。副症状は Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE) version 4.0 にて評価を行い、好中球数が 1,000/μl 未満もしくは day11-13 で 1,500/μl 未満の場合に granulocyte-colony stimulating factor(G- CSF)を投与した。2014 年以降は、前コースで 500/μl 未満の重篤な好中球減少や好中球減少性発熱を生じた場合にはペグフィルグラスチムを day6 で投与することとした。化学療法による卵巣機能不全から下垂体性 hCG 値の上昇や無月経を認める場合にはホルモン療法を行い、治療終了から 12 か月後までに hCG 値に異常がなければ妊娠を許可した。

【結果】
29 名の患者の臨床的背景を Table 2、治療結果を Table 3 に示した。23 名(79.3%)は完全寛解に至り、うち 3 名に再発がみられたが再度の 4-day MEA 療法や手術にて治癒した。4-day MEA 療法を第一選択として治療した 24 名のうち完全寛解となった割合は 21 名(87.5%)であった。6 名(20.7%)には薬剤抵抗性を認めたが、3 名は手術、放射線治療、5-FU、アクチノマイシン D(FA)療法にて完全寛解に至った。他の 3 名はレジメンを変更したが効果なく死亡した。副症状は 29 名に施行した 4-day MEA 療法 183コースについて検討した(Table 4)。頻度が高かったものは好中球減少(82.5%)と貧血 (77.6%)であった。好中球減少は Grade3-4 の割合が 49.2%でありG-CSF 投与を行った。貧血と血小板減少のほとんどは grade1-2 であった。肝機能障害、口内炎、嘔気も生じたがほとんどが grade1-2 にとどまっていた。29 名全員で 207 コースの MEA 療法および 77 サイクルの EA 療法が施行されたが、レジメンの変更理由は口内炎が 37.5%、肝機能障害が 31.3%、好中球減少が 25.0%、敗血症が 6.3%であった。23 名が外科的治療を行うことなく 4-day MEA 療法または EA 療法で寛解した。9 名は 4-day MEA 療法のみで治療を行えたが、14 名は平均 4.0 サイクルで EA 療法へ変更した。4-day MEA療法治療後の妊孕性についての結果を Table 5 に示した。完全寛解に至った 26 名のうち 25 名は下垂体性 hCG を抑制するために化学療法中にホルモン治療を要し、6-18 か月で 15 名は月経周期が回復したが 3 名は閉経状態と診断された。挙児希望のある 11 名のうち 5 名が合計 9 回の妊娠に至った。そのうち 7 例が出生し、早産や低出生体重、先天性異常は見られなかった。2 例は流産となった。

【考察】
4-day MEA 療法の完全寛解率は全体では 79.3%、第一選択として治療を受けた患者では 87.5%に至った。本研究の結果からは 4-day MEA 療法は 5-day MEA 療法よりエトポシドとアクチノマイシン D の量は 80%に減量されたにも関わらず同じ効果が得られ、さらに治療期間は 5-day MEA 療法より短縮することができた。副作用に関しては、grade3-4 の好中球減少が他のレジメンと比べ頻度がわずかに高くなったが、5-day MEA 療法では頻度は 43.6%であり大きな差はなかった。またこれが患者死亡の原因とはならなかった。重篤な好中球減少に対しては 2 つの対策が効果的であった。1 つは予防的に G-CSF を投与すること、もう 1 つはレジメンを EA 療法へ変更することであった。2005 年に予防的な G-CSF 投与を開始してからはレジメンを MEA 療法から EA 療法へ変更した患者の割合は 85.7%から 45.5%へ減少した。4-day MEA 療法後の妊孕性は良好であり、ほとんどの生殖年齢の患者はホルモン療法を行うことによって通常の生理周期が回復した。本研究では、挙児希望のある女性のうち 45.5%(5/11)が出産に至り、出生した 7 名の児は全員早産や低出生体重、先天性異常を認めなかった。後藤らの報告でも絨毛癌や high-risk GTN に対する多剤併用療法は児の奇形の発生率には関連しないとの結果であった。EMA/CO 療法は卵巣機能不全を生じるシクロフォスファミドが含まれるためMEA 療法治療後に比べ妊孕性が劣る可能性が考えられる。しかし、Rustin らの報告ではシクロフォスファミドを使用し化学療法を行った患者のうち挙児希望があり挙児に至った割合は 79%であり、メトトレキサート、アクチノマイシン D、ビンクリスチン、シクロフォスファミドで多剤併用療法を行った患者で、挙児に至った患者と至らなかった患者では平均投与量に明らかな差がなかった。また本研究では、挙児に至らなかった患者が治療を開始した平均年齢は 37.3 歳であり、挙児に至った患者の治療開始の平均年齢の 27.6 歳に比べ高い傾向がみられた。以上より、妊孕性に関してはレジメン内容より患者年齢の方が影響を与えうる可能性が示唆される。本研究には限界がある。第一に患者数が 29 名でありイギリスやアメリカで行われた EMA/CO 療法の検討での患者数に比べはるかに少ないことである。絨毛癌は非常にまれな疾患であり、日本では専門施設に患者を集約するようなシステムは存在しない。患者が希望すればほとんどの施設で化学療法が受けられるため、各施設の絨毛癌や high-risk GTN に対する治療評価の報告数が非常に少ない。今後は施設間で連携し、より多くの患者、より長いフォローアップの内容を含め評価することが必要と思われた。次に、4-day MEA 療法で MEA 療法から EA 療法へ変更する基準が明確でないことが挙げられる。本研究からは grade3-4 の口内炎や肝機能障害、そして grade4 の好中球減少が次のコースで EA 療法へ変更する基準となりうると考えられた。2005 年より行っている予防的 G-CSF 投与が効果的であったが、ペグフィルグラスチムを 4-day MEA 療法の day6 に投与することにより grade4 に至る好中球減少の割合が減少した。口内炎や肝機能障害はメトトレキサートによる副症状であり、対策として葉酸の増量が考えられるが、メトトレキサートの効果自体が減弱すると思われる。今後 EA 療法を絨毛癌や high-risk GTN に対し EA 療法を第一選択として使用する治験も検討する必要があるかも知れない。

【結論】
本研究では 4-day MEA 療法での完全寛解率は他の MEA 療法や EMA/CO 療法と同等の結果であったが、第一選択として 4-day MEA 療法を受けた患者ではわずかに良い結果であった。化学療法後の副症状については、G-CSF の予防投与や EA 療法への変更は必要であったが許容される範囲であった。本研究の結果より、4-day MEA 療法は絨毛癌や high-risk GTN に対する第一選択の一つとして推奨され得る。今後 4-day MEA療法から EA 療法への変更基準を明確にするために症例をさらに蓄積し副症状への対応を検討することが必要と考えられた。

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