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Early Glottic Cancer Treatment with Concurrent Chemoradiotherapy with once-daily orally administered S-1

髙瀬, 裕樹 名古屋大学

2021.05.26

概要

【緒言】
声門癌は嗄声を発症しやすいため、早期に発見されることが多い癌である。早期の声門癌に対して推奨される治療は放射線療法、レーザー治療、または喉頭部分切除術である。特に深部への浸潤を伴ったT2N0声門癌の患者には、シスプラチンを併用した化学放射線療法(CCRT)が推奨される。T1N0喉頭癌では、放射線治療単独での局所制御率は82%~93%と報告されている。しかしながら、T1BulkyN0声門癌やT2N0声門癌では、放射線治療のみでの局所制御率は65~80%と報告されており、改善の必要がある。

これまでT2N0声門癌の局所制御率を改善するために、様々な抗癌剤を用いたCCRTのレジメンが考案されてきたが、最適なものはまだ定まっていない。S-1は経口投与の抗悪性腫瘍剤であり、頭頸部癌を含む様々な固形癌に対する有効性が確認されている。また、抗腫瘍剤としてだけでなく、放射線増感剤としても作用することが報告されている。そこで我々はS-1を増感剤として1日に1回内服し放射線治療と併用する第I相試験を実施し推奨用量を、引き続き行われた第二相試験で有効性と有害事象を報告してきた。その後、我々は2016年まで深部浸潤のないT2N0声門癌とT1BulkyN0声門癌に対して、S-1を1日に1回内服し放射線治療と併用するレジメンを用いて治療を行ってきた。

本研究では、深部浸潤のないT2N0声門癌とT1BulkyN0声門癌の臨床成績を後方視的に検討し、S-1を1日に1回内服し放射線治療と併用するプロトコルの実現可能性、有効性、および潜在的な毒性を評価した。

【対象および方法】
1) 対象患者
2007年1月から2016年12月までの間に当院で根治的同時化学放射線治療を受けたすべての深部浸潤のないT2N0M0とT1BulkyN0M0の声門扁平上皮癌患者21名の臨床記録を後方視的に検討した。病期分類は2002年国際がん制御連合(Union for International Cancer Control)の病期分類システムで行った。20例(95%)は男性、1例(5%)は女性であった。患者の年齢中央値は66歳(58~75歳)、追跡調査期間中央値は4年(2.0~4.5年)であった。

2) 同時化学放射線治療プロトコル
放射線治療とS-1内服は同日に開始する。朝食後にS-155.3mg/m2を内服し、その3-6時間後に放射線治療を行う。放射線治療は平日に1日1回2Gyで行い、30回に達するまで行う。放射線治療を行わない日は、S-1の内服も行わない。放射線治療はCTをベースに、対向2門照射で計画する。

3) 評価項目
プロトコル完遂率、一次治療効果、局所制御率、無病生存率、有害事象を算出した。有害事象は、Common Terminology Criteria for Adverse Eventsversion 3.0に従って分類した。

【結果】
3例は有害事象でS-1の内服を中断し放射線治療のみ完遂していた。その他18例はプロトコルを完遂した。21例全てが、治療後1-2カ月で臨床的完全奏効と判断された。最終観察時点で全員が再発なく生存していた。照射野内のGrade3の皮膚炎を3例に認めた。いずれも数週のステロイド外用薬で治癒を得られていた。そのほかにはGrade3以上の有害事象を認めなかった。

【考察】
S-1は通常抗腫瘍薬として4週間1日2回投与され、その後2週の休薬期間を設ける。しかしながら、放射線治療と併用する場合の最適な投与量・投与スケジュールは定まっていない。我々はS-1に含まれる5-FUの放射線増感効果が血中濃度と正の相関があること、5-FUの血中濃度はS-1を1日1回投与の方が高くなることに注目して増感作用に期待をするプロトコルを考案し、プロトコルの安全性・有効性を検討し報告してきた。過去の報告に新たに治療された患者を加え、より長期の観察における有効性や安全性について本研究にて検討を行った。

1) 有効性
本研究では、初回奏効率は100%であり、4年生存率、4年全生存率、無病生存率も100%であった。早期声門癌に対するS-1併用CCRTの諸家の報告を表1に示す。この中で我々のレジメンは放射線治療の線量もS-1の総内服量も最小であったが、有効性は最近の研究と同等であり、これまで報告されている放射線治療単独の成績よりも優れていた。我々のプロトコルにS-1の休止期間がないことが高い有効性につながった可能性がある。しかしながら、本研究は症例数が少ないことと、諸家の研究には我々が治療対象として含めなかった深部浸潤を伴ったT2声門癌が含まれている可能性があることに留意が必要である。

2) 有害事象
有害事象については、本研究ではGrade3の皮膚炎が14%(3例/21例)に発生した。表中の諸家や古平らのJCOG0701での報告(66-70Gyの放射線治療単独でGrade3の皮膚炎が10.2%に発生した)と比較して、同程度と考える。粘膜炎については、表中の諸家がGrade3以上の粘膜炎を16.7~56.5%の症例で報告している一方で、本研究では1例も認めなかった。S-1の総投与量が他の試験に比べて少なかったためかもしれない。

3) 内服抗癌剤のアドヒアランス
Liuらは有効性が損なわれない限り患者は静脈内化学療法よりも経口化学療法を好むことを報告しており、経口抗癌剤であるS-1は患者QOLの観点からは潜在的な利益を有していると考えられる。一方でGreerらはレビューで、抗悪性腫瘍剤であっても内服のアドヒアランスが低下する可能性があることを示しており、S-1内服のアドヒアランスについても十分考慮されなければならない。本研究で検討を行ったプロトコルは、1日に1回のみの内服であるという点と治療期間中にS-1の内服を中断する期間がないという2点において、通常の投与方法(4週間1日2回内服、その後2週休薬)と比較して単純である。さらに放射線治療前に1日に1回のみの内服のため、医療従事者が放射線治療前に患者に尋ねたり空のカプセルを確認したりすることで、S-1を内服したかどうかを確認することが可能である。このような単純で監視可能なプロトコルは、患者が処方通りにS-1を服用するのに役立つ可能性がある。

【結語】
後方視的研究で症例数が少ないという制限はあるものの、早期声門癌に対する1日1回のS-1内服を併用する同時化学療法は、簡便で、安全かつ有効であった。

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