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Differential effects of sevoflurane on the growth and apoptosis of human cancer cell lines

平井, 昂宏 名古屋大学

2023.03.23

概要

主論文の要旨

Differential effects of sevoflurane on the growth and
apoptosis of human cancer cell lines
セボフルランがヒトがん細胞株に与える増殖/
アポトーシスへの効果の差異についての検討

名古屋大学大学院医学系研究科
生体管理医学講座

総合医学専攻

麻酔・蘇生医学分野

(指導:西脇 公俊
平井 昂宏

教授)

【緒言】
吸入麻酔薬であるセボフルランは、静脈麻酔薬に比べて迅速かつ予測可能な覚醒が
でき、担癌患者の外科治療などの手術麻酔によく使用されている。しかし、培養細胞
株による実験では、セボフルランががん細胞の増殖に関与している可能性を示唆する
研究結果が増えている。一方、他の研究ではセボフルランによる様々な増殖の低下な
ど抗腫瘍効果も示されている。このように、セボフルランはがん細胞の腫瘍形成能に
多様な影響を及ぼすことが示されており、そこには多くの分子生物学的プロセスが関
与していると報告されている。しかし、試験された細胞数や実験条件の違いから、セ
ボフルラン曝露後の細胞増殖に関連する因子については、まだ十分に解明されていな
い。本研究では、複数の臓器由来の 8 種類のヒトがん細胞株と非がん上皮細胞株を臨
床使用濃度のセボフルランに曝露させ、細胞増殖に及ぼす影響を解析した。さらにセ
ボフルランに曝露したがん細胞株について、マトリゲル浸潤能や早期アポトーシス、
細胞死を調べ、これらの生物学的プロセスとがん細胞株の増殖の関連について検討し
た。
【方法】
乳がん細胞株(MDA-MB-231、MCF-7)、肺がん細胞株(NCI-H1299、A549)、大腸癌
細胞株(HCT116、HT-29、RKO、DLD-1)、非がんヒト乳房上皮細胞株(MCF10A)の 9 種
類の細胞株を細胞培養器内で 37℃、5%の二酸化炭素濃度の環境で培養した。これらの
細胞を培養器内で気化したセボフルランに暴露した。庫内の麻酔濃度は麻酔ガスモニ
ターを用いて随時調整した。
増殖能の測定として、培養プレート内の細胞を 1~3%のセボフルランに 2~8 時間曝
露し、さらに 48 時間培養後に単細胞化した細胞をコールターカウンターで計測した。
マトリゲルへの細胞浸潤能はボイデンチャンバー法を用いて評価した。アポトーシス
と細胞死の評価は、蛍光色素フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗アネキ
シン V と、DNA 染色剤 7-アミノアクチノマイシン D(7-AAD)を用いて細胞免疫染色
法を行い、フローサイトメーターによって検出した。細胞死実行タンパク質カスパー
ゼの発現は、抗カスパーゼ-3 抗体を用いウェスタンブロット法を用いて評価した。
【結果】
セボフルラン暴露の増殖への影響を調べるため、由来臓器の異なるがん細胞株と非
がん細胞株に同一条件でセボフルランを暴露した。その結果、MCF-7、A549、MCF10A
では非暴露コントロールと比べ有意差をもって細胞数が減少し NCI-H1299、RKO、
MDA-MB-231、HCT116、HT29、DLD-1 は有意に細胞数が増加した(Fig. 1)。そこで同
じ由来臓器であるが増殖影響の異なる肺がん細胞株、及び乳がん細胞株に着目し以下
の実験を行った。セボフルラン暴露後の浸潤能への減少が報告されていることからマ
トリゲル浸潤能を試験した。その結果、増殖を低下した細胞株(MCF7、A549)は浸潤
能も有意に抑制した。しかし増殖能を高めた細胞株(NCI-H1299, MDA-MB-231)は浸潤

-1-

能を亢進したか、明らかな変化を生じなかった(Fig. 2)。次に、増殖能の減少とアポト
ーシスの関与を明らかにするため、細胞免疫染色法により検出した。その結果、MCF7 と A549 は早期アポトーシスを増加させたが、NCI-H1299 は減少させ、MDA-MB-231
では明らかな差は認められなかった(Fig. 3)。また、細胞死を実行するカスパーゼ-3 の
活性を調べたところ、MCF-7 と A549 では活性型カスパーゼ-3 の発現量が亢進したが、
NCI-H1299 と MDA-MB-231 細胞では発現量に変化は生じなかった(Fig. 4)。さらにセ
ボフルラン暴露による死細胞数を検出するため、7-AAD 核染色を行った。すると MCF7 と A549 では細胞死を増加し、NCI-H1299 および MDA-MB-231 では明らかな増加は
認められなかった(Fig. 5)。
以上の結果から、セボフルラン暴露後に増殖を抑えたがん細胞は、早期アポトーシ
スと細胞死を伴ったが、増殖の亢進した細胞ではそれが生じないことを明らかにした。
また高濃度(1.5~3%)のセボフルランによって与える影響を調べた結果、NCI-H1299
および MDA-MB-231 は高濃度でも増殖を高め、MCF-7 および A549 は増殖を減らした
(Fig. 6)。そして MCF-7 と A549 では早期アポトーシスと細胞死の増加を認めた(Fig.
7)。これらの結果からより高濃度のセボフルランは 1%セボフルランと同様に、細胞株
ごとに異なる早期アポトーシスや細胞死を導くことが明らかになった。
【考察】
本研究では同一条件下で 8 種のヒトがん細胞株に臨床使用濃度のセボフルランを暴
露しその増殖の変化を調べた。その結果、非がん細胞株と 2 種類のがん細胞株は増殖
を抑制し、一方で、6 種類のがん細胞株は増殖を促進したことを明らかにした。セボ
フルラン暴露後に増殖を抑制したがん細胞株は、マトリゲル浸潤能の減少、早期アポ
トーシスや細胞死の増加が認められた。
本研究は私たちの知る限りセボフルラン暴露後の増殖減少とアポトーシスの強い
関連を示した初めての論文である。本研究から推察されることは、細胞株によって異
なるアポトーシス誘導の違いが、細胞増殖の違いに現れていると考えられる。しかし
セボフルラン暴露後に増殖の亢進が起こった細胞株は、アポトーシスを回避するだけ
ではなく、増殖能などがん性能にも影響することが示唆された。
これまでに、セボフルランによるアポトーシス誘導の分子生物学的機構はほとんど
解明されていない。しかし、本研究の結果と既報の転写因子 C-Jun や Caveolin-1 など
介した増殖影響を報じた結果から、セボフルランは DNA 損傷や p53 遺伝子制御異常
による細胞死ではなく、アポトーシスの誘導によって細胞増殖を抑制していることが
示唆された。今後はさらに動物モデルや臨床検体を用いてセボフルランによるアポト
ーシスを評価することにより、実臨床におけるさらなる知見が得られると考えられる。
将来的には、このアポトーシスに関連する分子生物学的機序を解明し、腫瘍ごとに最
適な再発を抑える麻酔薬の選択に繋がる可能性があると考えられた。
【結語】

-2-

セボフルラン暴露は、一部のがん細胞株に対して増殖を抑制する効果を認めた。ま
た、セボフルランによる細胞増殖の抑制には、アポトーシス誘導の増強関連している
ことが確認された。

-3-

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