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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on the reaction mechanism of ubiquinone in respiratory complex I」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on the reaction mechanism of ubiquinone in respiratory complex I

Uno, Shinpei 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23955

2022.03.23

概要

NADH-ユビキノン(UQ)酸化還元酵素(呼吸鎖複合体-I)はミトコンドリア呼吸鎖電子伝達系の初発酵素であり、基質の酸化還元と共役してプロトンを輸送する酸化的リン酸化(ATP合成)にとっての基幹酵素である。医農薬の分野では、抗寄生虫薬や殺虫・殺ダニ剤の有望な創薬標的として注目されており、本酵素の基礎研究の進展が期待されている。しかし、複合体-Iは非常に複雑な膜タンパク質複合体であるため、呼吸鎖酵素の中で最も研究の進展が遅れている。複合体-Iの単粒子cryo-EM構造に基づき、UQが侵入し還元されるUQ反応ポケットは、入口内径が約5Å、奥行きが約30Åの細長い“洞窟様”の構造をとることが2016年に報告された。これにより、UQは小さな入口から侵入して最深部に到達した後に、Fe-SクラスターN2から電子を受け取り、後退りして洞窟から出ていくという反応モデル(洞窟モデル)が提唱された。しかし、この反応モデルは実証されたわけではない。本研究では、独自にデザイン合成したUQ類を駆使することで、複合体-IにおけるUQの反応機構の解明を目指した。

第1章では洞窟モデルの真偽を検証すべく、UQの側鎖末端に洞窟の内径よりも著しく嵩高い“ブロック”を導入したUQ類(SF-UQ類)を合成した。洞窟モデルを前提とした場合、SF-UQ類は立体障害によってポケットの最深部に到達できず反応し得ないと予想される。しかし、ウシ心筋submitochondrial particles(SMPs)に埋め込まれたnative複合体-Iを用いて電子伝達活性を評価したところ、SF-UQ類は電子受容体になり得ることがわかった。この結果から、UQ反応ポケットはダイナミックに構造変化し、嵩高いUQ類を収容できることが強く示唆された。

合成したSF-UQ類は天然UQのアナログであるUQ2と比較すると、その電子受容活性はかなり低かった。そこで第2章では、高い電子受容活性を有する新たな嵩高いUQ類の獲得を目指して構造展開を行った。最大幅が約13Åのブロックを持ち、キノン環とブロックの間のスペーサー長を変化させたoversized UQ類(OS-UQ1~OS-UQ5)を合成し、native複合体-Iでアッセイした結果、UQ2と同程度の電子受容活性を有するものがあった。興味深いことに、最もスペーサー長の短いOS-UQ1は還元されるにも関わらず、プロトン輸送を誘導しないことがわかった。これらの結果は、UQ反応ポケットは多様なUQ類を収容できるという第1章の結果を支持すると同時に、スペーサーが短い場合にはブロックによる立体障害によって、プロトン輸送の引き金として要求されるUQ反応ポケットの構造変化を誘導できないことが示唆された。

OS-UQ類はスペーサーが長くなるにつれて疎水性が上昇し水溶解性が低下する。そのため、SMPsを用いた実験系ではより長いスペーサーを持つOS-UQ類の電子伝達活性を測定することができない。そこで、リン脂質とOS-UQ類から調製したOS-UQ含有リポソームに対して単離複合体-Iを再構成し、疎水性の高いOS-UQ類の活性測定を可能にするプロテオリポソーム実験系を構築した。これを用いてアッセイした結果、SMPsでの結果とは対照的に、OS-UQ類は電子受容活性を示さなかった。この事実は、native複合体-Iと単離複合体-Iでは、UQ類の反応性が大きく異なっていることを意味する。この原因として、界面活性剤を用いて複合体-Iを単離精製する過程で、UQ反応ポケットの構造が変化した可能性が考えられた。

そこで第3章では、native複合体-Iと単離複合体-Iの間のOS-UQ類の反応性の違いが、他のUQ類でも普遍的に認められるかどうかを検証することとした。そのために、わずかに側鎖の嵩高さが異なるUQ類の組み合わせを創製する必要があった。この目的のために、光反応性基であるジアジリンとヨウ素をメタあるいはパラ置換した光反応性UQ類(pUQ類)を合成した。ここで、パラ体はメタ体に比べて約1Åだけ幅広い。pUQ類の電子伝達活性を評価したところ、native複合体-Iではメタ体とパラ体は同様の電子伝達活性を示したが、単離複合体-Iではより嵩高いパラ体の還元速度が顕著に低下した。この結果は、単離複合体-Iの方がより立体障害を受けやすいことを示しており、UQ反応ポケットの構造が変化したとする上記の推論を支持する。

続いて、pUQ類のヨウ素を放射性同位元素125Iに置換して光親和性標識実験を行ったところ、native複合体-I、単離複合体-IともにUQ反応ポケットを構成するND1サブユニットが標識された。しかし、ND1内における標識部位を同定したところ、標識部位はUQ反応ポケット内部ではなく、[125I]pUQ類の側鎖構造によって異なっていた。さらに、複数の複合体-I阻害剤と[125I]pUQ類の拮抗試験を行ったところ、側鎖構造を反映して異なる拮抗パターンを示すことがわかった。これらの光親和性標識の結果は、cryo-EM構造に基づいて提唱された洞窟モデルを支持せず、pUQ類は側鎖構造に依存して異なる侵入経路を経てクラスターN2に接近することが強く示唆された。

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