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大学・研究所にある論文を検索できる 「Observational Study of Effects by Spiral Structures on the Star Formation Activity in Nearby Spiral Galaxies」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Observational Study of Effects by Spiral Structures on the Star Formation Activity in Nearby Spiral Galaxies

保田, 敦司 筑波大学

2022.11.17

概要

本論⽂では、観測による近傍渦巻銀河の星形成活動に渦状構造が与える影響についての研究成果を報告する。渦巻銀河で⾒られる渦巻腕が渦巻銀河内の星形成にどのような影響を与えるのかということが⻑年議論されている。この問いに答えるため本論⽂では、銀河構造が空間分解可能なsub-kpc‒kpcスケールにおいて、渦巻腕の重⼒ポテンシャルの指標であるArm Strengthと渦巻銀河の星形成活動との関連性を調べた。近傍銀河の⼀酸化炭素分⼦12CO(J=1-0)輝線サーベイプロジェクトであるCOMING(Sorai et al. 2019)、CO Atlas(Kuno et al. 2007)、PAWS(Schinnerer et al. 2013)によって、sub-kpc‒kpcスケールの空間分解能で観測された11個の近傍渦巻銀河を対象に、銀河円盤部における渦巻腕領域(arm)と渦巻腕間領域(interarm)の同定、及びArm Strengthと星形成に関わる物理量のarm/interarm⽐の動径分布の⽐較を⾏った。その結果、sub-kpc‒kpcスケールでは、Arm Strengthは分⼦ガス質量⾯密度Σmol、原⼦ガス質量⾯密度Σatom、全ガス質量⾯密度Σtot(=Σmol+Σatom)、全ガスに対する分⼦ガスの割合𝑓mol(=Σmol/Σtot)、星形成率⾯密度ΣSFR、原⼦ガスに関する星形成効率SFE(atom)(=ΣSFR/Σatom)のarm/interarm⽐を増加させ、分⼦ガスに関する星形成効率SFE(mol)(=ΣSFR/Σmol)と全ガスに関する星形成効率SFE(tot)(=ΣSFR/Σtot)のarm/interarm⽐への影響は⼩さいことを明らかにした。

 本論⽂は6つの章で構成されている。第1章では、渦巻腕が渦巻銀河内の星形成を誘発・促進する機構と考えられている背景、これまでの観測で明らかになっているArm Strengthと渦巻銀河の星形成との関係、COMING、CO Atlas、PAWSプロジェクトの概要、及び本研究の⽬的を述べる。

 第2章では、本論⽂で扱う銀河の諸元、及び観測データから得られる諸物理量の測定⽅法を述べる。

 第3章では、Arm Strengthと星形成に関わる物理量の⽐較⽅法について述べる。本論⽂で扱う銀河の銀河円盤部におけるarmとinterarmの同定⽅法、Arm Strengthの動径分布の測定⽅法、Arm Strengthの動径分布と⽐較を⾏う星形成に関わる物理量のarm/interarm⽐の動径分布の測定⽅法、及びArm Strengthとの⽐較⽅法について述べる。

 第4章では、Arm Strengthと星形成に関わる物理量のarm/interarm⽐との⽐較に関する結果を述べる。Arm StrengthとΣmol、Σatom、𝑓mol、ΣSFR、SFE(atom)それぞれのarm/interarm⽐との間には正の相関が⾒られた⼀⽅、SFE(mol)とSFE(tot)のarm/interarm⽐とArm Strengthとの間に相関が⾒られず、またSFE(mol)とSFE(tot)のarm/interarm⽐は0.5‒2の範囲内で変化していることを明らかにした。この時、Σmolの測定に使⽤されるCO積分強度から分⼦ガス質量への変換係数𝛼COは、領域に関わらず太陽系近傍の典型値を⽤いている。

 第5章では、Arm Strengthと星形成に関わる物理量のarm/interarm⽐との間に⾒られた相関の要因について議論している。ガス質量⾯密度のarm/interarm⽐の議論では、Kuno & Nakai(1997)で提案された銀河円盤上のガス速度ベクトル測定⼿法(KN method)を⽤いて、4つのグランドデザイン銀河(NGC 628、NGC 3031、NGC 3184、NGC 5194)を対象に渦巻腕に対して垂直⽅向のガス速度成分𝑉⊥の測定を⾏い、Arm Strengthの増加に伴い、𝑉⊥のarm/interarm⽐が減少傾向であることを明らかにした。この結果は、Arm Strengthが強い渦巻腕にガスが流⼊すると渦巻腕領域にガスがより⻑く滞留して集積されることを⽰唆しており、これがArm Strengthとガス質量⾯密度のarm/interarm⽐に相関が⾒えた要因と考える。さらに、Pettitt et al. (2020)のガス粒⼦のシミュレーションデータを⽤いて、異なる空間分解能でのKN methodで測定されたガス速度ベクトルとガス雲の典型的なガス速度ベクトルの差を調べた。空間分解能が⾼くなるほど、KN methodで測定されたガス速度ベクトルとガス雲の典型的なガス速度ベクトルの差は⼩さくなる⼀⽅、空間分解能が低くなるほど、KN methodで測定されたガス速度ベクトルのarm‒interarm間の変化は⼩さくなり、ガス雲の典型的なガス速度ベクトルの差は⼤きくなることを明らかにした。ガス速度ベクトルの測定を⾏った4銀河の観測データの空間分解能は異なっているため、Pettitt et al. (2020)のシミュレーションデータを⽤いて空間分解能の違いが𝑉⊥のarm/interarm⽐の⼤⼩に与える影響を調べた。空間分解能の値が近い(=221‒408 pc)3銀河(NGC 3031、NGC 3184、NGC 5194)では、空間分解能の違いはArm Strengthと𝑉⊥のarm/interarm⽐の相関に⼤きな影響を与えないが、NGC628は3銀河に⽐べて低い空間分解能(=743 pc)を持つため、その影響でNGC 628の𝑉⊥arm/interarm⽐は過⼤評価されている可能性がある。𝑓molのarm/interarm⽐の議論では、𝑓molの増加要因である圧⼒のarm/interarm⽐とArm Strengthに正の相関が⾒えたこと、本論⽂で扱ったサンプルの銀河円盤部ではUV輻射場による𝑓molの減少効果よりも圧⼒による𝑓molの増加効果の影響が⼤きいことを明らかにした。従って、Arm Strengthと𝑓molのarm/interarm⽐の間に正の強い相関が⾒えたのは圧⼒が影響していると推測している。これまで得られたΣmol及びSFE(mol)のarm/interarm⽐とArm Strengthとの相関関係は、𝛼COについて領域に関わらず⼀定の値を⽤いた結果であり、実際はarmとinterarmそれぞれで𝛼COは異なることが考えられる。そこで、𝛼COのarm/interarm⽐の変化が、Σmol及びSFE(mol)のarm/interarm⽐とArm Strengthとの相関関係に与える影響について議論した。星間ダスト質量⾯密度と星間ガス質量⾯密度の⽐であるダスト-ガス⽐と𝛼COの関係を⽤いてarmとinterarmそれぞれの𝛼CO測定を⾏い、7銀河において𝛼COのarm/interarm⽐の範囲が0.8‒1.7となることを明らかにした。これは、ガス密度・温度の理論計算から⾒積もられる𝛼COのarm/interarm⽐の範囲(=1/3‒5)と⽭盾しない結果である。また、得られた𝛼COのarm/interarm⽐の範囲内(=0.8‒1.7)では、Σmol及びSFE(mol)のarm/interarm⽐とArm Strengthとの相関関係の傾向に⼤きく影響しないことを明らかにした。

 第6章では本論⽂の結論を述べる。

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