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大学・研究所にある論文を検索できる 「Systematic Study of Escape Processes of Cosmic Rays from Supernova Remnants based on Gamma-ray and Thermal X-ray Properties」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Systematic Study of Escape Processes of Cosmic Rays from Supernova Remnants based on Gamma-ray and Thermal X-ray Properties

鈴木, 寛大 東京大学 DOI:10.15083/0002006655

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名









本論文は 9 章からなる。第 1 章は序論であり、本論文の動機と構成を示している。第
2 章では本論文の背景である銀河系内宇宙線とその有力な加速源候補である超新星残骸
について、観測的・理論的知見と関連する物理過程を概説している。第 3 章では、本論文
で使用したデータを取得した X 線およびガンマ線観測装置について概略を述べている。
第 4 章では、超新星残骸の年齢推定において重要な役割を果たす熱的プラズマの X 線観
測について、論文提出者が着目した 2 つの超新星残骸を例に取り、データ解析の詳細と
結果を示している。第 5 章では、超新星残骸に閉じ込められた加速粒子の情報を得るた
めに行った、超新星残骸 38 天体のガンマ線データ解析について述べている。第 6 章では、
超新星残骸の様々な年齢推定法を比較し、推定値の信頼度を導いている。第 7 章では、
前章までで得た 38 超新星残骸の加速粒子情報の時間発展を系統的に分析してその結果を
示し、第 8 章ではそれらについて考察している。最後に第 9 章では結論を述べている。
また付録 A では、第 6 章で用いたパルサーによる年齢推定法に関連した詳細を補足して
いる。
超新星残骸は、銀河系内宇宙線の起源として長年有望視されてきた天体である。近年、
Fermi 衛星に搭載された LAT 検出器によるガンマ線観測において幾つかの超新星残骸か
らパイオンバンプの兆候が発見され、超新星残骸が確かに宇宙線の主成分である陽子の
加速源であることが示される等の進展があり、上記仮説は補強されつつある。しかしなが
ら、我々が観測する宇宙線は加速源から逃亡する必要があり、その過程は未だ明らかにな
っていない。本論文は、近年ガンマ線帯域で検出数が増えてきた超新星残骸の系統的デー
タ解析から、宇宙線の逃亡過程を理解しようと試みたものである。
論文提出者はまず、2 つの超新星残骸 HB 21 と G359.1-0.5 について、
「すざく」衛星
および Chandra 衛星で観測した X 線データを解析し、熱的プラズマの状態を明らかにす
ることで、それぞれの年齢と周辺密度を新たに推定した。これらの結果は、超新星残骸の
系統的研究に加えられ、標本数の増加に寄与している。また論文提出者は、Fermi LAT
の最新のガンマ線観測データを解析し、超新星残骸 15 天体についてこれまでで最も良い
統計精度のスペクトルを抽出した。これらに文献で示されている超新星残骸 23 天体のス
ペクトルを合わせ、計 38 天体のスペクトルの系統的なモデル化から、カットオフエネル
ギー等の加速粒子パラメータを測定した。これらの時間発展を調べるには超新星残骸の
正確な年齢推定が不可欠であるが、推定方法は複数存在し、それらの精度や適用範囲も
様々である。論文提出者は上記の超新星残骸標本について複数の方法で推定した年齢を
注意深く比較し、熱的プラズマの X 線解析による推定値の系統誤差が高々4 倍という狭
い範囲内に抑えられていることを導いた。この結果は、本論文の系統的解析結果に信頼性
1

を与えるもので、高く評価できる。
様々な年齢の超新星残骸について、ガンマ線スペクトルから得た加速粒子パラメータ
を年齢の関数として表すことにより、粒子加速および粒子逃亡の時間発展を見ることが
できる。このような単純な仮説のもと、論文提出者は 38 超新星残骸について各種加速粒
子パラメータと年齢との相関を調べた。その結果、カットオフエネルギー、ブレークエネ
ルギー等が年齢とともに減少する傾向を統計的に有意に検出し、超新星残骸で粒子逃亡
が進行していることを初めて見出した。また、これらの結果から、平均的な粒子逃亡の時
間スケールを 1 万年から 10 万年であると見積もることに成功した。他方、超新星残骸が
生涯に加速する最高エネルギーは単純かつ統一的な描像では説明できず、超新星残骸の
環境あるいは個性に依存して 3 桁程度のばらつきがあることを示した。最高エネルギー
が理論的に粒子加速効率、超新星爆発エネルギー、周辺密度および背景磁場に依存するこ
とを鑑みると、このばらつきの大きさは説明可能である。
以上本論文は、超新星残骸からの宇宙線逃亡に関し、信頼できる年齢推定と丁寧な系統
的解析から多くの知見を与えるものであり、高エネルギー天体物理学において重要な貢
献をもたらしている。
なお、本論文第 4 章の HB 21 に関する部分は馬場彩・中澤知洋・古田禄大・澤田真理・
山崎了・小山勝二との共同研究、第 4 章の G359.1-0.5 に関する部分は馬場彩・榎谷玲
依・山口弘悦・Paul P. Plucinsky・小高裕和との共同研究、第 5 章と第 7 章の一部は馬
場彩・山崎了・大平豊との共同研究、第 6 章は馬場彩・柴田晋平との共同研究であるが、
いずれも論文提出者が主体となって分析及び検証を行ったもので、論文提出者の寄与が
十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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