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大学・研究所にある論文を検索できる 「The transformation of environmentality and subjectivity towards a reflexive headwater governance: Case of Taipei metropolis, Taiwan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The transformation of environmentality and subjectivity towards a reflexive headwater governance: Case of Taipei metropolis, Taiwan

Chiang, Hsin-Hua 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23962

2022.03.23

概要

水資源ガバナンスは,資源分配,環境保全,社会資本およびそれらの持続性と深く絡み合っている。流域管理に関わる多くの複雑で不確実な課題を解決するために,これまで様々な論理的枠組みや方策が提案されてきた。本論文では,水源地のガバナンスを対象に,そこで複雑に絡み合う課題の実態を理解するためにソフトシステム方法論を導入するとともに,M. フーコーとP. ブルデューによる理論的な枠組みを援用して知識と実践の間にみられたギャップが再帰的に修正されていくことを明らかにする。さらにシナリオとアクションプランの評価を踏まえて,改善策について提言する。研究対象地域は,台北都市圏(台湾)の水源地である。本論文は以下の9章から構成されている。

第1章では,背景,研究目的,研究課題について述べている。この章では,水資源ガバナンスに関する今日的課題を,水資源の分配問題,水質管理問題,そしてセクター間のパートナーシップの3つの次元に分けて整序している。

第2章では,水源地のガバナンスに関する先行研究をレビューしている。水源地ガバナンスに関わる3つのパラダイム(制度的,技術的ならびに協調的),水源地のガバナンスをめぐる権力闘争,本論文で用いられる諸概念などを整序している。

第3章では,本論文で用いたデータと方法論を紹介している。様々なスケールの地域単位から長期にわたる新聞記事や会議の議事録などの2次データと様々なセクターの利害主体に対する半構造化されたインタビュー及びアンケート調査を用いている。また,方法論としては,水源地のガバナンスに従事するセクター間の複雑な相互作用を明らかにするため,本論文の全体の構成に対してソフトシステム方法論(SSM)を修正して援用している。

第4章では,大量の文書データの内容をコンテンツ分析と談話分析により整理し,第2章の3つのパラダイム(制度的,技術的,協調的)のそれぞれについて,過去40年にわたる変容の概観と取り上げられた主要な話題を整序している。制度的側面ではダム建設と台北水源保護地区の指定,都市計画と土地利用規制,水資源配分のルール化とネットワークの拡大などの話題が,技術的側面では水質の非点源汚染リスク,汚染防止のための技術的対応,水源地の森林再生などの話題が,そして協調的側面では関係自治体間のパートナーシップの形成,包括的な水源地ガバナンスの創出,草の根からのイニシアティブなどの話題が取り上げられてきた点を明らかにした。

第5章では,談話分析を適用して,水源地のガバナンスの形成と遂行がもたらした社会的インパクト及び構造的問題を明らかにしている。社会的なインパクトについては,個人レベルとコミュニティレベルに分けて検討しているが,前者では,水源地の住民に「被害者意識」,水質リスクや政策に対する態度のばらつきなどをもたらし,後者では,共同利益に対する見方の相違や現状に関する複雑な感情,ボトムアップからの活動の停滞などをもたらしたことを明らかにしている。さらに構造的問題として,エビデンスに基づく意思決定のあいまいさ, 関係主導による実施に伴うアンビバレンス(相反する感情の併存),構造変化を推進する際の障壁などを指摘している。第6章では,前章までの分析結果に基づいて,水源地のガバナンスと水源地の社会との相互規定的関係を概念化し,3つのパラダイムのそれぞれにおける,環境の捉え方とアクターの主体性との結合関係を同定している。

第7章では,土地利用規制の程度と権力の集中化の2軸上に展開される4つのシナリオを設定し,各シナリオから派生する複数のアクションプランを用意する。そして5つの利害主体グループ(立法者,技術官僚,地方行政,水源地住民,外部者)へのアンケート調査によって,アクションプランの優先順位を評価している。シナリオの優先順位は利害主体間で大きく異なっており,全てに優越するシナリオは存在しないことを明らかにしている。そこで,シナリオの代わりに,有効なアクションプランを組み合わせて改善の代替案を構成することを提案している。

第8章では,これまで得られた知見と理論的な洞察の一般化を試みている。水源地ガバナンスと水源地の社会とが相互規定的に形成され変容してきた点を踏まえ,環境と主体が相互に規定し合う再帰的な水源地ガバナンスというアイデアを提案している。また,本論文は,トップダウンによる水源地ガバナンスが環境目的によって正当化されてきた点を明らかにしたが,実際には領域と利害主体の利益追求に起因する対立がその中に隠れていること,さらに,ガバナンスの合理性が形成される過程で知識と権力関係の間に相互作用があることも明らかにしている。

第9章は,主要な研究結果と政策への提言をまとめた結論である。

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